1212.jpg
全財産を「浪費家の娘」ではなく「しっかり者の孫」に残します…そんな相続できる?
2020年12月05日 08時32分

「浪費家の娘ではなく、しっかり者の孫に全財産を残すことはできますか」。70代の女性から弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられています。

相談者には離婚した独身の娘(40代)と孫娘がいます。娘は金遣いが荒く、持っているお金は全て使い果たしてしまう浪費家。一方で、そんな母親を反面教師としてくれたのか、孫娘はまだ若いのに非常にしっかり者です。

そのため、相談者は全財産を娘ではなく、孫娘に残したいと考えています。遺言を作成すれば、このようなことは可能なのでしょうか。平野由梨弁護士の解説をお届けします。

「浪費家の娘ではなく、しっかり者の孫に全財産を残すことはできますか」。70代の女性から弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられています。

相談者には離婚した独身の娘(40代)と孫娘がいます。娘は金遣いが荒く、持っているお金は全て使い果たしてしまう浪費家。一方で、そんな母親を反面教師としてくれたのか、孫娘はまだ若いのに非常にしっかり者です。

そのため、相談者は全財産を娘ではなく、孫娘に残したいと考えています。遺言を作成すれば、このようなことは可能なのでしょうか。平野由梨弁護士の解説をお届けします。

●遺言で定めても、遺留分を主張される可能性がある

ーー遺言を作成すれば、全財産を娘ではなく、孫娘に残すことは可能なのでしょうか。

民法で定められた相続のルールからすると、娘さんが唯一の法定相続人として、相談者の全財産を相続することになります。ただし、「全財産を孫娘に相続させる」という内容の遺言を作成すれば、娘に相続させず、孫娘にだけ財産を相続させることが可能です。

ただ、注意すべきなのは、この場合、娘からは遺留分を主張される可能性があるということです。遺留分は、遺言によっても奪えない権利で、娘はその権利を主張すれば、全遺産の半額を請求することが可能です。

娘に遺留分がある場合、相続の開始、すなわち、被相続人が亡くなった事実を知り、さらに、自分の遺留分が侵害されていることを知った時から1年間の間、遺留分を請求することができます。

●娘の浪費が心配ならば「信託制度」を利用するという手も

ーー相談者は娘の浪費を心配しています。相続をめぐるトラブルが起きないようにするために、できることはありますでしょうか。

遺言書の内容を工夫することが有効です。なぜ孫娘に相続させるのかを遺言書に書いたうえで、娘にもある程度の納得を得られるように財産を一部、相続させることで、紛争を避けることができる場合もあると思います。

なお、娘が一度に遺産を受け取ることで、財産を浪費してしまうことを心配されるのであれば、遺産を一度に受け取るのではなく、月々一定額を給付する「信託制度」を利用することもできます。

「信託制度」というのは、簡単にいえば、財産を信頼できる第三者に預けて、管理してもらう制度です。委託者、受託者、受益者という3者が登場します。

今回のケースでいえば、相談者(委託者)が、信託業務を行う信託銀行(受託者)にお願いして、死後、月々一定額を娘(受益者)の口座に振り込むように遺言で残しておくといったことが考えられるでしょう。

こうした制度を利用することも検討してみてはどうでしょうか。

(弁護士ドットコムライフ)

無料で弁護士に相談する

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る