大分県は11月25日、18日に大分市佐賀関で発生した大規模火災について、被災者生活再建支援法の対象となる自然災害と認定されたことを公表しました。
火災は、発生から1週間が経つ25日現在も依然として鎮火には至っておらず、消火活動が続いています。報道によると、この火災ではこれまでに住宅など170棟以上が焼け、1人が死亡しています。
この他、大分市に対しては、既に災害救助法の適用が決定されています。これらの法律が適用されると、具体的にどのような支援を受けられるのでしょうか。法律による支援制度を紹介します。
●1)住まい、食料の確保など生活に必要な支援
避難所の設置のほか、被災者は、仮設住宅の供与、炊き出しなどによる食品や飲料水の提供、被服や寝具などの支給や貸与、医療サポートや救出などといった様々な支援が受けられる可能性があります。
大分市は、相談内容に応じた被災者の生活に関するサポートの窓口を開いています。 (※支援の窓口一覧は記事の終わりに掲載してあります)
「佐賀関大規模火災 まとめページ」.
(https://www.city.oita.oita.jp/o029/saganosekifire/matome.html)
●2)住宅再建のための支援金の支給
次に、被災者生活再建支援法が適用されることが決まったため、住宅に著しい被害を受けた世帯が、生活再建のための支援金を受けられるようになる可能性があります。
被災者生活再建支援法による支援金は、住宅の被害程度に応じて支給される基礎支援金と、住宅の再建方法に応じて支給される加算支援金の2段階から構成されます。
基礎支援金は、全壊などの場合100万円、大規模半壊の場合50万円が支給されます。
加算支援金は、住宅を建設・購入する場合200万円、補修の場合100万円、賃貸(公営住宅を除く)の場合50万円が支給されます。
つまり、全壊世帯が住宅を建設・購入する場合、基礎支援金と加算支援金を合わせて最大300万円が支給されることになります。
(問い合わせ先:お住まいの市町村役場)
●3)中小企業・小規模事業者への支援
中小企業や小規模事業者に対しても、すでに大分市に災害救助法が適用されたことを踏まえ、11月20日に経済産業省が特別な支援措置を実施することを発表しています。
支援措置の内容は、特別相談窓口の設置、災害復旧貸し付け等の実施、セーフティネット保証4号の適用、既往債務の返済条件緩和等の対応、小規模企業共済災害時貸し付けの適用となっています。
事業再建に向けた支援制度の利用を検討される場合は、これらの支援措置の具体的な内容について、大分県や大分市に設置された特別相談窓口などに問い合わせてみてください。
(問い合わせ先:https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251120005/20251120005-1.pdf)
●4)個人の借金の救済措置
災害救助法の適用がされたことで、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(以下、「自然災害ガイドライン」といいます)に沿った救済措置がとられる可能性があります。
借金が返せなくて困っている場合、弁護士などに「債務整理」を依頼することがありますが、「自然災害ガイドライン」による債務整理は、被災者救済の観点から、通常の債務整理と比べて、以下のような様々なメリットがあります。
・破産手続を避けられる ・弁護士などの登録支援専門家による手続支援を無料で受けられる ・債務整理をしても個人信用情報(いわゆる「ブラックリスト」)に載らない ・保証人がいる場合でも基本的に保証債務の履行を求められないため、保証人に迷惑をかけるといった心配が原則としてない
●5)県税の減免など
このほかにも、大分県の公式ホームページでは県税の減免や、農林水産事業者や中小企業向けの金融相談窓口の設置などのお知らせが出ています。
(https://www.pref.oita.jp/soshiki/10400/saganosekikasaishien.html)
また、大分県や大分市が制度として用意していないような問題についても、法テラスの民事法律扶助制度などを利用した、災害の状況に応じた様々な支援制度の利用も考えられます。
ひとつの記事でこれらの制度を網羅的に書ききれるものではありませんが、先にあげたものだけでなく、大分県や大分市のホームページにも情報が多数掲載されているため、チェックしていただければと思います。
また、今のところ情報ははっきりしませんが、災害の際には、こういった手続きをサポートするために、弁護士会などが無料法律相談を実施することもよくあります。今後の動きに注意し、支援漏れのないようにしていきたいものです。
●支援を受ける際に必要な書類、手続きは?
被害について補償を受ける際、多くの場合には罹災証明書や被災証明書が必要となります。
罹災証明書とは、地震や台風などの自然災害により住家に被害が発生した場合に、被災者からの申請に基づいて、市が住家の被害の程度(全壊、半壊等)を証明するものです。
申請は市町村の役場で行うのが通常です。大分市の場合、防災危機管理課もしくは最寄りの支所(地域担当班)の窓口にて申請してください。(例:佐賀関支所の地域担当班の電話番号は097-575-1111)
住家以外の被害の証明には、被災証明書を利用します。大分市の場合、申請方法や窓口は罹災証明書と同じとのことです。
いずれも大分市のホームページに書式も含めた情報が掲載されています。
●大分市の支援窓口一覧
大分市の「佐賀関大規模火災 まとめページ」内の問い合わせ窓口.
(https://www.city.oita.oita.jp/o029/saganosekifire/matome.html)
■ 各部統括、情報の広報に関すること 担当部名: 総合統括部 電話番号: 097-537-5664
■ 避難所・福祉施設、被災外国人への情報提供に関すること 担当部名: 被災者救援部 電話番号: 097-537-5623
■ ごみ処理および集積、防疫対策に関すること 担当部名: 災害廃棄物対策部 電話番号: 097-537-5624
■ 食料・飲料水・生活用品等の輸送、支援物資・義援物資などの受け入れおよび配送に関すること 担当部名: 物資支援部 電話番号: 097-537-5625
■ 医療体制の整備、動物愛護対策に関すること 担当部名: 保健医療部 電話番号: 097-536-2222
■ 避難所との連絡調整、罹災証明書の交付に関すること 担当部名: 地域対策部 電話番号: 097-537-5612
■ 学校職員、児童・生徒等の被災状況の避難および把握に関すること 担当部名: 児童・生徒対策部 電話番号: 097-537-5671
■ 建築物の被害調査、被災住宅の応急修理に関すること 担当部名: 住宅対策部 電話番号: 097-537-5636
■ 二次被害の防止活動に関すること 担当部名: 社会基盤対策部 電話番号: 097-537-5630
■ 飲料水の供給、上下水道施設の応急復旧に関すること 担当部名: 上下水道対策部 電話番号: 097-538-2403
■ 災害に対する警戒および防御、人命救助、救急活動に関すること 担当部名: 消防対策部 電話番号: 097-532-2199
(参考資料).
「災害法律相談Q&A」(2023年、勁草書房/第一東京弁護士会災害対策委員会).
「災害復興法学Ⅱ」(2018年、慶應義塾大学出版会/岡本正).
「災害復興法学Ⅲ」(2023年、慶應義塾大学出版会/岡本正).
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)