裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。
参加したのは、沖縄に事務所を構える弁護士で、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「ウェブで参加することで不利益にならないように運用してもらえたら」と話した。
●ウェブ弁論を提案「二つ返事で了承」
当事者をインターネットでつなぎ、それぞれが主張・反論を述べる「ウェブ弁論」は、地方裁判所や高等裁判所ではすでに実施例がある。
そうした中、最高裁判所第1小法廷(岡正晶裁判長)で11月10日、史上初めてウェブ弁論が開かれた。オンラインで出席したのは、沖縄県那覇市に拠点を置く弁護士法人琉球スフィア「スフィア法律事務所」代表の久保以明(もちあき)弁護士。
久保弁護士は当日、沖縄県内で別の依頼者の株主総会に出席する予定と重なったため、事前協議でウェブ弁論の実施可否を最高裁に尋ねた。すると、最高裁は「二つ返事」で了承したという。
対象となったのは、親族間の相続に関する訴訟。久保弁護士は被告側の代理人として参加し、原告側も沖縄県在住の人だったという。
●裁判官の姿もくっきり表示
久保弁護士によると、最高裁からは事前に「当日の使用場所」「通信環境」「通信トラブル時の連絡方法」などの確認があったという。
久保弁護士は自身の法律事務所の会議室からパソコンを通じて参加。画面には三つのウィンドウが表示され、5人の裁判官や原告側の代理人の姿が正面から映し出された。
音声も明瞭で、ウェブ弁論は10分ほどで終了した。
久保弁護士はこれまで別の事件で最高裁に出向いた経験はあるものの、今回は依頼者に東京・沖縄間の交通費を負担させてまで往復する必要性はないと判断したことも、ウェブ弁論を提案した理由の一つだという。
●「ウェブ参加が不利にならない運用を」
ただ、一般的には、最高裁の法廷に立ったことがない弁護士も少なくない。
そのため「最高裁で弁論が開かれるとなれば、多くの弁護士は実際に最高裁まで足を運ぶと思う」とも語る。そのうえで、久保弁護士は次のように述べた。
「今回が、最高裁での初めてのウェブ弁論だったとは知らなかったが、最高裁のIT化が遅れているというわけではなく、単に最高裁がウェブ弁論を開く機会がなかっただけではないか。ウェブで口頭弁論に参加したことで不利益が生じるような運用にならないことを望みたい」