パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。
相談者の女性は「SM系の嗜好」を持つ夫との関係に長年苦しんできました。
結婚前は、屈辱的な行為であっても応じたこともあったといいます。しかし、「本当に嫌だ」と泣いて伝えたところ、夫は「もうしない」と約束。その言葉を信じて結婚しました。
ところが、結婚後に再び無理やり求められるようになり、次第に「触れられることすら無理」になったといいます。女性は「離婚したい」と考えています。
「性の不一致」は、法的に離婚の理由として認められるのでしょうか。夫婦問題にくわしい鈴木淳也弁護士に聞きました。
●夫婦間でも望まぬ「SM」は犯罪になり得る
──夫婦間でも、望まぬ性行為は性暴力にあたりますか。
はい。夫婦間であっても、相手の意思に反して、わいせつ行為や性行為をすれば、不同意わいせつ罪(刑法176条)や不同意性交等罪(刑法177条)が成立する可能性があります。
これらの罪は「婚姻関係の有無にかかわらず」適用されるため、夫婦間でも犯罪となり得ます。
また、「SM」と称して暴力をふるえば暴行罪(刑法208条)、ケガをさせた場合は傷害罪(刑法204条)に問われることもあります。
●「性的嗜好の不一致」でも離婚が認められる
──夫婦間の「性的嗜好の不一致」は、法的に離婚理由となりますか。
夫婦の性生活は婚姻生活の根幹と考えられており、正当な理由もなく性交渉を拒み続けた場合、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するとされています。
今回のように、妻が望まない形での性行為を夫が強いている場合には、性交渉を拒む正当な理由があるといえます。
また、望まぬ性的行為を日常的に強いられているのであれば、婚姻関係の継続が困難な状況と判断される可能性が高いでしょう。
期間や頻度など、具体的な事情にもよりますが、妻から離婚を求めた場合、法的に認められる可能性があります。
実際に離婚を見据えるなら、一定期間の別居をおこなうことで、裁判上も「婚姻関係の破綻」が認められやすくなるので、まずは別居を検討するのがいいでしょう。