さまざまな商品がお得に購入できるとして人気のセール「Amazonブラックフライデー」が12月1日まで開催されています。
一方で、ネット上では、一部の商品について「事前に価格をつり上げ、セール期間中に値下げをしてお得に見せかけているのではないか」といった声も上がっています。
Xの投稿などによると、一部の商品では、セール開始前に価格を引き上げ、セール開始と同時に元の価格に戻したり、値下げ幅を小さくしたりすることで「◯◯%OFF」と大きな割引率を演出しているケースがあるといいます。
Amazonに出品している一部業者がセールに便乗して、こうした悪質な行為をやっているのだと思われますが、こうした値引きに引っかからないように価格変動を追うアプリで調べている消費者もいるようです。
はたして、こうした"見せかけの値引き"は法的に問題ないのでしょうか。冨本和男弁護士に聞きました。
●詐欺罪や景品表示法違反に該当するおそれ
──事前に値上げし、セール開始後に値下げして割引き率を大きく見せる行為は、法的にどんな問題がありますか。
あまりにも過大な値下げを装えば、消費者に財産的損害を与えたとして、詐欺罪に問われる可能性があります。
詐欺罪では「財産的損害」の発生が必要ですが、実際には相当価格の販売であって、値引き・割引きがなかっただけということであれば、財産的損害は生じていないようにも考えられます。
しかし、判例・通説は「本当のこと(ここでは値引き・割引きでないこと)」を知っていれば、購入しなかったといえるときには、その支払い行為そのものが財産的損害にあたるとしています。
判例でも、市販され誰でも容易に入手可能な普通の電気あんま器を、入手困難な特殊な治療器であるかのように装って相当価格で提供した事案で詐欺罪が成立するとされました(最決定・昭和34年9月28日)。
また、取引条件について、実際よりも有利であると偽って宣伝しているとして、景品表示法違反(有利誤認表示の禁止)として取締りの対象になる可能性もあります。
●トラブルに遭ったときは返品を検討
──このようなトラブルに巻き込まれたら、どうすればよいですか。
まずは購入先の返品ポリシー(返品可能な期間、返品できる条件、返送料の負担、返品手続きなど)を確認し、返品できる場合はそれを試みましょう。
高額商品であれば、購入時の画面ややり取りをスクリーンショットで保存し、消費生活センターや弁護士に相談してみましょう。
●他サイトの値段を調べることが有効
──こうしたトラブルを避けるにはどうすればよいでしょうか。
すぐに購入を決めず、同じ商品や類似品が他サイトでいくらで販売されているかを確認し、普段の相場感をつかむことが大事です。