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「ひげ理由に低い評価」は違法…原告代理人が語る「生やす自由と制約」
2019年01月23日 09時57分

ひげを剃ることを拒んだため不当に低い人事評価を受けたとして、大阪市営地下鉄(現・大阪メトロ)の運転士2人が、市に慰謝料など計約450万円を求めた訴訟の判決が1月16日にあった。大阪地裁は「ひげを理由に評価を減点したのは裁量権の逸脱で違法」とし、計44万円の支払いを命じた。

内藤裕之裁判長は、「整えたひげも不可」とした内規(2012年制定)は「任意に協力を求めるもので、一定の合理性がある」とする一方、ひげは個人的自由に属して着脱不能で、服務規律で制限すると私生活に影響が出ると指摘。「ひげの一律禁止や人事評価の理由とすることは、規律の限度を超える」と判示した。

原告の2人は、20年以上前から鼻の下やあごに、ひげを生やしている。毎日新聞によると、判決後の会見で、「ひげは個性の表現で、剃ると自分ではなくなる。伸ばす自由が認められてうれしい」と話したという。

一方の大阪市は、吉村洋文市長が1月17日、「なんだこの判決。控訴する」とTwitterに投稿。判決を不服として控訴する方針を示した。

ひげを生やす自由とその制約、今後の控訴審での見通しなどについて、原告側の代理人を務めた谷真介弁護士に聞いた。

ひげを剃ることを拒んだため不当に低い人事評価を受けたとして、大阪市営地下鉄(現・大阪メトロ)の運転士2人が、市に慰謝料など計約450万円を求めた訴訟の判決が1月16日にあった。大阪地裁は「ひげを理由に評価を減点したのは裁量権の逸脱で違法」とし、計44万円の支払いを命じた。

内藤裕之裁判長は、「整えたひげも不可」とした内規(2012年制定)は「任意に協力を求めるもので、一定の合理性がある」とする一方、ひげは個人的自由に属して着脱不能で、服務規律で制限すると私生活に影響が出ると指摘。「ひげの一律禁止や人事評価の理由とすることは、規律の限度を超える」と判示した。

原告の2人は、20年以上前から鼻の下やあごに、ひげを生やしている。毎日新聞によると、判決後の会見で、「ひげは個性の表現で、剃ると自分ではなくなる。伸ばす自由が認められてうれしい」と話したという。

一方の大阪市は、吉村洋文市長が1月17日、「なんだこの判決。控訴する」とTwitterに投稿。判決を不服として控訴する方針を示した。

ひげを生やす自由とその制約、今後の控訴審での見通しなどについて、原告側の代理人を務めた谷真介弁護士に聞いた。

●ひげ、業務時間だけ剃れない

ーーひげを生やす自由とその制約について考えを教えてください

「ひげを生やすことは、個人の自由であるのが原則です。労働者は使用者に対して労務を提供して、その代わりに賃金を得るわけですが、奴隷ではありませんので、その人格まで差し出す義務はありません。

一方、仕事の内容によっては、一定の身だしなみが労務提供の中身になるとして、ひげについて制約を受けることはあり得ます。

しかし、地下鉄の運転士の本来的業務は安全・確実に地下鉄を運転することにあり、乗客が運転士の顔を目にすることはほとんどありませんし、また乗客はひげの有無について通常関心もないでしょう。

ちなみに、私も大阪の地下鉄に毎日乗りますが、運転士の顔を見たことは一度もありません」

ーー判決では、ひげは「着脱不能」であることも指摘されました

「はい、ひげは服装等と違い、業務時間だけひげを剃るということはできず、剃ることを求める規制は私生活にも及びます。そのため衛生上の問題がない仕事については、奇抜なひげ等でなければ制約はできないと考えられています。

過去、ハイヤーの運転手や、郵便局の職員などでも同様の裁判が起こされていますが、いずれも上記のように判断されて労働者側が勝訴しています」

ーー被告である大阪市側の主張はどうだったのでしょうか

「大阪市側は過去の事例を知っていたからだと思いますが、裁判では、『ひげでマイナス評価して何が悪い』とは主張せず、『ひげを剃る内規は強制ではなく任意のお願いにすぎない』とか『ひげだけを理由に低い評価にしたわけではない』、『ひげも無精ひげだったために低評価とした』などと弁解していました。

証人尋問でも、上司は『ひげを理由に低評価をすると人権上、問題となる』と証言までしていました」

●「ひげをマイナス評価の主要な要素とした」と認定

ーー裁判で認定のハードルが高いと感じていた点を教えてください

「通常、査定は使用者に裁量があり、資料もすべて使用者の手元にありますので、労働者が査定の誤りを証明するのはハードルが高いのが現実です。本件でいえば、ひげを理由にマイナス評価をしたことが認定されるかどうかは、ハードルが高かったです。

しかし、上司との面談の録音記録等による立証が裁判官に評価され、このハードルを越えることができ、判決で「ひげをマイナス評価の主要な要素としたこと(=違法)」が認められました」

ーー控訴審へと移った場合、どのような点が注目されますか

「大阪市が吉村市長の言葉どおり本当に控訴するかはわかりませんが、控訴審では、大阪市側は『ひげ禁止は任意のお願い』、『ひげだけを理由に低評価したわけではない』という地裁での主張を維持するのかどうかです。

あるいは、吉村市長がいうような『ひげ禁止は守るべきルール(=強制)』、『ルールを守らない職員の評価を下げても違法ではない』旨の主張に方針転換されるのか、注目されます」

ーー今回の裁判でどのような反響があったと感じていますか

「本件の判決について、ネットでは『使用者が定めたルールを労働者が守らないなんて評価が下がって当たり前だ』という意見が見受けられることが残念です。

本件の原告の運転士たちは、上司から仕事ぶりを評価されており、仕事に誇りをもたれています。きっちりと仕事をし、私生活も充実させるという労働者が評価される世の中になって欲しいと私は思います」

(弁護士ドットコムニュース)

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