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違法残業で「JCB」「ドンキ」に罰金、嶋崎弁護士「企業名公表を制度化すべき」
2016年11月19日 09時33分

従業員に違法な残業をさせたとして、クレジットカード大手「JCB」とディスカウント大手「ドン・キホーテ」が、東京簡裁からそれぞれ罰金50万円の略式命令を受けていたことが、11月に入って報じられた。JCBは今年4月に納付済み、ドン・キホーテも11月9日に納付した。

報道によると、2社とも「労働基準法違反」と判断された。従業員数名に対し、労使協定(36協定)で決められた上限を超えて時間外労働させていたという。JCBでは月80時間までのところ、最長で月147時間、ドン・キホーテでは3カ月で計120時間以内と決めていたにも関わらず、最長計415時間の時間外労働があった。

有名企業にとって罰金「50万円」は大金と言えなさそうだが、今回の処分は企業にとってどのような意味があるのだろうか。嶋崎量弁護士に聞いた。

従業員に違法な残業をさせたとして、クレジットカード大手「JCB」とディスカウント大手「ドン・キホーテ」が、東京簡裁からそれぞれ罰金50万円の略式命令を受けていたことが、11月に入って報じられた。JCBは今年4月に納付済み、ドン・キホーテも11月9日に納付した。

報道によると、2社とも「労働基準法違反」と判断された。従業員数名に対し、労使協定(36協定)で決められた上限を超えて時間外労働させていたという。JCBでは月80時間までのところ、最長で月147時間、ドン・キホーテでは3カ月で計120時間以内と決めていたにも関わらず、最長計415時間の時間外労働があった。

有名企業にとって罰金「50万円」は大金と言えなさそうだが、今回の処分は企業にとってどのような意味があるのだろうか。嶋崎量弁護士に聞いた。

●罰金刑にまでなるのは「珍しいケース」

ーー労働基準法違反で企業に罰金が課されるのは珍しい?

両社の罰金50万円に対する評価としては、比較的珍しいケースと言って良いでしょう。

具体的な統計に当たってみましょう。平成26年労働基準監督年報によれば、1年間の送検数のうち、懲役2件、罰金(正式起訴)が10件、罰金(略式手続)が395件ですから、概ね年間400件程度が罰金で処罰されていることになります(なお、正式起訴か略式手続きかは、被疑者の同意の有無も影響するため、必ずしも処罰の重さには直結しません)。

労働基準監督署の調査(監督)が年間16万超あることを考えると、両社のケースは統計上も、それなりに珍しいケースといえ、悪質性が高いと判断されたとみられます。

ーー「50万円」という金額は軽いのでは?

法文上、罰金だけでなく懲役刑も予定されてはいます。ただし、労働基準法違反で代表者らに懲役刑などが科されるケースは、皆無ではないものの、ほとんどありません。

現実的には、ほぼ罰金刑になりますが、JCBやドン・キホーテのような大企業にとって、罰金50万円は微々たる負担であることは明らかです。この程度の支払額なら、経済的な負担はほとんど感じないでしょう。

ーーでは、今回の処分にはどんな意味がある?

近時、労働基準法違反により刑事罰が科されるとか、刑事罰を念頭に置いた捜査(たとえば、電通のケース)などが、大きく報道されるようになりました。

JCBやドン・キホーテにとって意味があるのは、刑事罰が科された事実が、メディアで公表されることでしょう。労働基準法違反での報道は、「企業イメージの悪化」につながります。「営業活動」や「採用活動」に対する悪影響の方が、罰金よりもはるかに負担になるでしょう。

●「企業名、もっと公表すべき」

ーー企業名の公表にはどんな意義が?

企業名の公表について、企業側からは不公平感などもあるようですが、現在の日本社会では、違法な長時間労働など、労働基準法違反があらゆる職場に蔓延しており、労働基準監督署の取締ではまったく是正が追いついていないのも事実です。

報道を見た他の企業が、自らの襟を正す機会にもなるので、企業名公表は、社会的にも大きな価値のあるものと言えるでしょう。現在、長時間労働是正に向けての取り組みが大きく取り上げられていますが、違法行為をした企業名の公表は、実効性がある手段です。

ーー企業名の公表を今後どう考えるべきか?

現状、企業名が公表されるのは、書類送検になったときか、大企業が一定の条件下で是正勧告を受けたときに限られています。

「労働時間の上限規制」や「勤務間インターバル規制」、「サービス残業の撲滅(厳格な労働時間記録義務の制度導入)」などとあわせて、違法行為を行った企業の企業名を公表する制度を、明確に法律上定めるべきでしょう。現状では、公表されるか否かの基準も曖昧ですし、公表により違法行為を防止する威嚇力も十分発揮できていません。不公平感も生まれます。

企業名公表は、現状の脆弱な取締体制(労働基準監督官が少ない)の中で、多額の予算を使わず実効性ある対策がとれるという意味でも、現実的な手段でもあるのです。

(弁護士ドットコムニュース)

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