10097.jpg
タクシー代払えない泥酔客、運転手から「5時間分の時給を追加で払え」と請求され苦悩
2024年01月02日 08時38分

酔っ払ってタクシーに乗ったところ、大きなトラブルに巻き込まれたという人からの相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者は、酔い潰れてタクシーに乗車。タクシーの運賃を払うことができず、警察に保護されることになりました。すると、後日、タクシー運転手から、請求書が届き、未納の乗車料金に加えて、当日のトラブル対応にかかった5時間分の時給まで請求されたのです。

相談者は、この5時間分の追加料金に納得がいかないようですが、払わないといけないのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。

酔っ払ってタクシーに乗ったところ、大きなトラブルに巻き込まれたという人からの相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者は、酔い潰れてタクシーに乗車。タクシーの運賃を払うことができず、警察に保護されることになりました。すると、後日、タクシー運転手から、請求書が届き、未納の乗車料金に加えて、当日のトラブル対応にかかった5時間分の時給まで請求されたのです。

相談者は、この5時間分の追加料金に納得がいかないようですが、払わないといけないのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。

●タクシー運転手側が立証できるかどうか

結論から言うと「5時間分の時給が今回の件の損害である」ということをタクシー運転手が立証できた場合には、相談者は支払いをしなければなりませんが、そうでない場合には、支払いを拒絶することができます。

相談者には、タクシー料金を払わなかったことについて、少なくとも過失があるので、タクシーの乗車契約上の債務不履行が成立し、タクシー運転手に生じた損害を賠償する責任が生じます(民法415条1項本文)。

そして、賠償すべき損害の範囲は、債務不履行によって「通常生ずべき損害」及び「生じることが予見可能な特別の損害」と規定されており(民法416条)、実務上、債務不履行と「相当の因果関係がある損害」が賠償範囲に含まれると理解されています。

タクシーの乗車料金が「相当の因果関係がある損害」に含まれるのは明らかです。

しかし、「5時間分の時給」が債務不履行と相当の因果関係があるかどうかは、証拠によって明らかにされなければなりません。

そして、証拠によってこれを立証しなければならないのは、請求をするタクシー運転手です。

タクシー運転手が、自身の時給や、5時間本件の対応に追われたこと、そのために5時間分の時給を得られなかったこと等を、契約書や日報等々で立証することができたなら、相談者は賠償に応じなければなりません。

ですが、逆に言えば、タクシー運転手が証拠を示さずに支払いを要求してきた場合には、因果関係不明を理由に拒絶することができます。

本件については、相談者に非があることは間違いありませんが、根拠を示さない請求には応じられないと毅然と拒絶することも大切です。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る