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競売後に車庫から「遺体発見」 落札者は文句を言えないのか
2013年05月02日 14時30分

俗に「事故物件」とか「ワケあり物件」とか呼ばれる賃貸住宅がある。もとの居住者が、自殺や殺人などによって亡くなった、いわゆる「なんか出そうな」いわくつきの物件である。霊など信じていない人であっても、その部屋で過去に自殺や殺人があったと聞けば、心地よく住めるものではないだろう。ましてや、やっと手に入れたマイホームの車庫から、謎の遺体が発見されたとしたら……。

ヒッチコックか、スティーブン・キングか。まるで推理小説のような事件が、日本国内で起きていた。しかもこの事件では、「遺体があると知っていれば、もっと安い値で(競売で)落札できたはず!」と、都内の不動産会社が、国に損害賠償を求める裁判を起こしていた。

朝日新聞によると、この不動産会社は昨年1月、東京地裁の競売で、練馬区内の土地・建物を約1470万円で落札した。ところが取得直後の3月、同社の従業員が現地を訪れて、車庫にあった車の後部座席で、男性の遺体と対面することになったという。

損害賠償請求事件については4月24日、東京地裁が不動産会社からの請求を退ける判決を下した。判決は「競売の対象物件ではない車の中まで確認する義務はなく、執行官に落ち度はない」と判断したようだが・・・。

市場取引では「ワケあり物件」が安くなるのは当然だし、売り主に告知義務もあると聞く。今回裁判所がこういう判断を下したのは、競売物件だったことが原因なのだろうか。不動産関連の訴訟に詳しい池田伸之弁護士に聞いた。

●「キズモノ物件」を売ると、責任を問われることがある

「不動産の取引では、犯罪・自殺・不審死等の事件が起きた物件について、そのような事情を知らなかった買主が、契約解除や代金減額を求める裁判を起こすことがあります」

このように池田弁護士は、不動産取引をめぐるトラブルの実情を話す。そういう訴えは認められるのだろうか?

「このような物件の不具合は、心理的な『瑕疵(かし)』があったとして、売主に瑕疵担保責任が認められることがあります。瑕疵とは、キズのことです。つまり、『瑕疵担保責任』というのは、キズモノ物件を売った責任があるという話ですね」

●今回の裁判で、落札者の請求が認められなかったワケ

では、なぜ、今回の車庫から遺体が発見されたケースではダメだったのだろう?

「これが民間の売買であれば、一定範囲の代金減額は認められたと思います。ところが、『競売物件』については、この瑕疵担保責任が法律上認められていないのです」

裁判所が物件を競売にかけるとき、何らかの調査をするのでは?

「競売の執行官が、不動産の現況について調査をします。その調査結果は現況調査報告書という書面となり、入札希望者等に開示されます」

今回のような遺体の件は、その書類には記入されない?

「ただ、その現況調査報告書の記載の中心は、『誰が不動産を占有しているか』がポイントで、物件の瑕疵にかかわる事項については、瑕疵担保責任がないこともあって、調査対象となっていません。

ましてや、競売の対象となっていない車の状態についてまでの調査義務はなく、遺体の存在という心理的な瑕疵を発見できなくても、責任はないと裁判所は判断したものと思われます」

確かに車は競売の対象ではないが、ざっと一通り見て回るだけでもわかったのではないか、という気がしないでもない。

池田弁護士も「遺体は、調査対象の一部である車庫内の自動車の中にあったということですので、気がついても良さそうなものですね」と首をかしげつつ、「いずれにしても、競売で物件を買うときは、一定の覚悟が必要です」と注意を促していた。

(弁護士ドットコムニュース)

俗に「事故物件」とか「ワケあり物件」とか呼ばれる賃貸住宅がある。もとの居住者が、自殺や殺人などによって亡くなった、いわゆる「なんか出そうな」いわくつきの物件である。霊など信じていない人であっても、その部屋で過去に自殺や殺人があったと聞けば、心地よく住めるものではないだろう。ましてや、やっと手に入れたマイホームの車庫から、謎の遺体が発見されたとしたら……。

ヒッチコックか、スティーブン・キングか。まるで推理小説のような事件が、日本国内で起きていた。しかもこの事件では、「遺体があると知っていれば、もっと安い値で(競売で)落札できたはず!」と、都内の不動産会社が、国に損害賠償を求める裁判を起こしていた。

朝日新聞によると、この不動産会社は昨年1月、東京地裁の競売で、練馬区内の土地・建物を約1470万円で落札した。ところが取得直後の3月、同社の従業員が現地を訪れて、車庫にあった車の後部座席で、男性の遺体と対面することになったという。

損害賠償請求事件については4月24日、東京地裁が不動産会社からの請求を退ける判決を下した。判決は「競売の対象物件ではない車の中まで確認する義務はなく、執行官に落ち度はない」と判断したようだが・・・。

市場取引では「ワケあり物件」が安くなるのは当然だし、売り主に告知義務もあると聞く。今回裁判所がこういう判断を下したのは、競売物件だったことが原因なのだろうか。不動産関連の訴訟に詳しい池田伸之弁護士に聞いた。

●「キズモノ物件」を売ると、責任を問われることがある

「不動産の取引では、犯罪・自殺・不審死等の事件が起きた物件について、そのような事情を知らなかった買主が、契約解除や代金減額を求める裁判を起こすことがあります」

このように池田弁護士は、不動産取引をめぐるトラブルの実情を話す。そういう訴えは認められるのだろうか?

「このような物件の不具合は、心理的な『瑕疵(かし)』があったとして、売主に瑕疵担保責任が認められることがあります。瑕疵とは、キズのことです。つまり、『瑕疵担保責任』というのは、キズモノ物件を売った責任があるという話ですね」

●今回の裁判で、落札者の請求が認められなかったワケ

では、なぜ、今回の車庫から遺体が発見されたケースではダメだったのだろう?

「これが民間の売買であれば、一定範囲の代金減額は認められたと思います。ところが、『競売物件』については、この瑕疵担保責任が法律上認められていないのです」

裁判所が物件を競売にかけるとき、何らかの調査をするのでは?

「競売の執行官が、不動産の現況について調査をします。その調査結果は現況調査報告書という書面となり、入札希望者等に開示されます」

今回のような遺体の件は、その書類には記入されない?

「ただ、その現況調査報告書の記載の中心は、『誰が不動産を占有しているか』がポイントで、物件の瑕疵にかかわる事項については、瑕疵担保責任がないこともあって、調査対象となっていません。

ましてや、競売の対象となっていない車の状態についてまでの調査義務はなく、遺体の存在という心理的な瑕疵を発見できなくても、責任はないと裁判所は判断したものと思われます」

確かに車は競売の対象ではないが、ざっと一通り見て回るだけでもわかったのではないか、という気がしないでもない。

池田弁護士も「遺体は、調査対象の一部である車庫内の自動車の中にあったということですので、気がついても良さそうなものですね」と首をかしげつつ、「いずれにしても、競売で物件を買うときは、一定の覚悟が必要です」と注意を促していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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