夏の全国高校野球が8月5日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。49の代表校が全国の頂点を目指して熱戦を繰り広げる一方で、選手や観客の健康をどう守るかが、大きな課題となっている。
甲子園のある兵庫県では、7月30日に丹波市で国内観測史上最高となる41.2℃を記録。大会は例年どおり、真昼間の時間帯を含む日程で進行しており、SNSでは選手の健闘を称える声と並んで、「日陰もない」「死者が出るまでやめないのか」など、過酷な環境への懸念も少なくない。
日本高野連は弁護士ドットコムニュースの取材に対して「選手や観客らが重大な健康被害を受けないよう、熱中症対策に万全を期して取り組んでまいります」とコメントした。(弁護士ドットコムニュース・玉村勇樹)
●暑さピークを避ける「二部制」を拡大、中盤以降は真昼間の試合も
夏の甲子園では、大会6日目(8月10日)までは試合を2部制とし、最も暑い時間帯の実施を避ける対応が取られている。第1部は午前8時と午前10時30分からの2試合、第2部は午後4時15分と午後6時45分からの2試合が予定されている。
前回大会では、この2部制を1〜3日目の3日間に限って導入していたが、今回は6日間に拡大された。高野連によると、前回大会で熱中症が疑われた選手の7割以上が初戦で発症しており、大会序盤の負担軽減を図ったかたちだ。
一方で、大会7日目(8月11日)から準々決勝がおこなわれる13日目(8月18日)までは、午後1時からの第3試合が予定されており、最も暑い時間帯での試合実施となる見通しだ。
このほか、試合の途中でも必要に応じて給水タイムを設けるほか、「熱中症特別警戒アラート」が発表された場合には、ただちに対策本部を開いて対応を決定するとしている。
●5回終了時には「クーリングタイム」
試合前のノックは選択制とし、時間も従来の7分から5分に短縮。また、前々回大会から導入された「クーリングタイム」も継続される。
5回終了後、選手はベンチ裏の冷房完備スペースに移動し、理学療法士の指導のもと体温測定や冷却、アイススラリーや経口補水液の摂取などをおこなう。
ただし、今大会から、クーリングタイムの時間が10分から8分へと短縮された。高野連はホームページ上で「短縮しても効果が見込めるため」と理由を説明している。
●対策の本気度が問われる「夏」
高野連はさまざまな熱中症対策を掲げているが、それでも「酷暑」の現実を前に、抜本的な見直しを求める声は根強い。とくに午後の試合や、日陰のないスタンドでの観戦など、懸念は多岐にわたる。
過酷な環境下で、選手や関係者が安心して試合に臨めるようにするには、ルールや運営の工夫に加え、現場での柔軟かつ迅速な対応が欠かせない。
記録的猛暑の中で迎えた今大会において求められているのは、掲げた「万全の対策」が、実効性を持って機能するかどうか──その「本気度」と言えるだろう。