日本学術会議をめぐる改正法案について、全国9つの弁護士会が5月中旬から下旬にかけて相次いで反対声明を発表した。各会とも現行制度からの「独立性・自律性の後退」や「学問の自由への脅威」を共通して指摘している。
政府は3月7日、現在の「国の特別の機関」である日本学術会議を廃止し、特殊法人「日本学術会議」を新設する法案を閣議決定。5月13日に衆議院で可決され、現在参議院で審議中となっている。
●「外部介入を許与する仕組みを幾重にも盛り込んでいる」と批判
声明を発表したのは岐阜県(5月15日)、山梨県(5月16日)、長崎県(5月19日)、沖縄(5月20日)、岡山(5月21日)、仙台、鳥取県、兵庫県(いずれも5月22日)、熊本県(5月23日)の各弁護士会。
9つの弁護士会は共通して、現行法で学術会議が職務を「独立して」行うと定めた3条の文言が法案で削除されている点を最大の問題として指摘。法案では、選定助言委員会、運営助言委員会、日本学術会議評価委員会、監事という4つの外部機関が新設され、政府を含む外部からの介入を可能にする仕組みが盛り込まれていると批判した。
また、諸外国で標準的な会員選考方式「コ・オプテーション」(現会員による候補者推薦)が多様な関係者からの推薦義務化により損なわれる点や、国庫負担から補助金制度への変更で財政基盤が不安定化する懸念も全会が共通して表明している。
兵庫県弁護士会は「廃案」を明確に要求し、沖縄弁護士会は戦前の学問弾圧(滝川事件、天皇機関説事件)への言及とともに「極めて重大な問題」と指摘。仙台弁護士会は「戦後80年を迎えるときに廃止されることに強い危惧」を表明した。
2020年10月の学術会議会員候補者6名の任命拒否問題についても、全ての弁護士会が、問題を放置したまま法人化を進めることは看過できないとして、まず任命拒否の是正を求めている。