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「再婚禁止で困っていればいつでも手伝います」違憲判決の作花知志弁護士インタビュー
2015年12月30日 08時57分

2015年を締めくくる司法のビッグニュースといえば、12月16日に最高裁大法廷が示した「女性は離婚後6カ月間は再婚禁止」とする民法の規定をめぐる訴訟の違憲判決だろう。戦後10例目となる違憲判決を得たこの訴訟を一人で担当したのが、岡山弁護士会所属の作花知志(さっか・ともし)弁護士だ。実は、10年近い司法浪人生活を送った苦労人でもある。違憲判決後の反響や浪人時代の苦悩、同業者や依頼者も驚く過密スケジュールでありながらやりたいことも諦めない現在の弁護士生活について、岡山の事務所で語ってもらった。(秋山千佳)

2015年を締めくくる司法のビッグニュースといえば、12月16日に最高裁大法廷が示した「女性は離婚後6カ月間は再婚禁止」とする民法の規定をめぐる訴訟の違憲判決だろう。戦後10例目となる違憲判決を得たこの訴訟を一人で担当したのが、岡山弁護士会所属の作花知志(さっか・ともし)弁護士だ。実は、10年近い司法浪人生活を送った苦労人でもある。違憲判決後の反響や浪人時代の苦悩、同業者や依頼者も驚く過密スケジュールでありながらやりたいことも諦めない現在の弁護士生活について、岡山の事務所で語ってもらった。(秋山千佳)

●「離婚後100日以内でも婚姻届を出す女性が出てくる」

ーー違憲判決おめでとうございます。反響はいかがですか。

岡山で会う人がみな、お祝いの言葉を伝えてくれるのがありがたいですね。事務所と同じフロアに入っている会社の男性の方からは「一緒に写真を撮ってください」と言われて、ピースをして写りました(笑)

判決は、現在6カ月とされている女性の再婚禁止期間のうち、離婚後100日を超えた部分については過剰な制約を課したものであると判断したものでした。あとは離婚後100日以内の問題が残るのですが、15人の裁判官のうち、これも憲法違反であるとした人が2人と、妊娠していないことが科学的に明らかな場合は再婚可能という運用ができるはずだとする共同補足意見をつけた人が6人います。そのような運用とする通達を法務省が出すよう、裁判所は期待していると思います。

今後、「妊娠していない」という医師の診断書を添えて離婚後100日以内に婚姻届を提出する女性は出てくるでしょうし、それが理由もなく拒否されて訴訟になれば、国はなかなか反論が厳しいですよ。困っている当事者の方がいれば、うちの事務所に来ていただければ、いつでもお手伝いします。

ーーそれは心強いですね。ところで、話はさかのぼりますが、なぜ弁護士になろうと思ったんですか。

高校3年生のときにたまたま、阿川尚之さんの「アメリカン・ロイヤーの誕生」というアメリカのロースクールの本を読んで興味を持ったのをきっかけに、大学、大学院と国際法を勉強するなかで「少数派の側に立って代弁する役割を担いたい」と考えたからです。

でも、司法試験はすんなりいかなくて、合格には9年かかりました。受かったのは8回目の受験で、34歳のときです。受験回数制限のある今なら、受からないで終わったかもしれないですね。基本的に要領がよくないので。

今でこそ笑い話なんですけど、最初の3年間は、試験当日以外は自宅から一歩も外出しないでひたすら勉強していました。私は一度も予備校に行ったことがなく、模擬試験も受けたことがないんです。教科書と過去問のみを徹底してやりました。だからいまでも、当時の教科書を頭の中でめくることができます。

だけど3年経ったところで、ある日突然ベッドから起き上がれなくなったんです。半年くらい一切勉強もできなくて。医者からは「運動不足だ」と言われました。

で、1年抜けて5年目からは毎日、犬の散歩をするようになりました。実はそのころ、「やっぱり小学校の先生になりたいかも」という思いもあって悶々としていたんです。大学に進むとき、法学部に行くか教育学部に行くかで悩んだので。でもある日、散歩の途中に夕日を眺めながら「少数派から見た社会のあるべき姿を導く存在が弁護士なんだ」と悟ったのを今でも覚えています。

最終的に弁護士に心を決めたのは、教師だった両親への反発心もあったかもしれません。受験回数制限のこともそうですし、何かがちょっと違えば、今回の違憲判決は生まれていなかったかもしれないなとは思います。

●「通信教育で中学高校の教員免許を取ろうとしている」

ーー実際に弁護士になり、ご自分の事務所を持ってからはどうですか。

ありとあらゆるご相談に応じています。他の弁護士さんに聞くと、相談から受任となるのは2件に1件くらいのようですが、うちは基本的に断らないので9割以上になるんです。例外は、どう考えても勝てない場合に「弁護士に頼むのは無駄なので止めたほうがいいですよ」と助言するときや、方針そのものが合わない人の場合に別の弁護士を紹介するときくらいですね。

依頼者の損になることはしたくないし、法律家として正義と思うものをご提案したいというのは常にあります。報酬はあまり考えないですね。まず依頼者のご予算を必ず聞きます。それができるのも、ご依頼件数が多いからです。

毎日午前9時から午後9時まで相談と法廷で埋まっていて、最近では昼休みもないので、コンビニでパンを買って歩きながら食べています(笑)。この経営難の時代にありがたいことですね。外国人の方の裁判もたくさんやっていますよ。通訳なしで接見できる弁護士がいるということで、彼らの集まる酒場で口コミが広まったらしいんです。

弁護士というのは、困っている人を助けることが自分の評価となる。良い仕事に就くことができたなとつくづく感じます。願わくば、この経験をどこかで伝えられたらいいと思いますね。

ーー伝えるというと、ご自身のブログ(「弁護士作花知志のブログ」http://ameblo.jp/spacelaw/)もお忙しい中で頻繁に更新されています。

法律を身近に感じられるような、自分がおもしろいと思うことを書くようにしています。

私も昔は、法律というと学校の校則のようなおもしろくないイメージがあって、法学部に入ったときには「しまった」とも思いましたが、学ぶうちに、人は完全な存在じゃないので常に争いが起きるけれど、もっと社会を良くしたいという願いを託しているのが法律なんだと気づきました。そんな法の理念を伝えたいなと思って、裁判員裁判の始まった翌年の2010年から始めたんです。いま、書籍化の話が進んでいます。

弁護士になって10年が経ち、法律家としては夢がかなっている状況なので、法律家を志す若い人に大学で「憲法訴訟論」や「国際人権法」を教えたいという思いもあります。やっぱり教えるのが好きなんでしょうね。私自身も勉強になりますし。実はいま、通信教育で中学高校の社会科の教員免許を取ろうとしているところです。昔からのもう一つの夢でもあり、法律家としていつかどこかで役に立つかなと思っています。

(弁護士ドットコムニュース)

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