12384.jpg
巨人、坂本勇人選手が「約2億4000万円」申告漏れ報道 自主トレや料亭の飲食代が「必要経費」と認められなかったワケ
2025年04月06日 08時07分
#坂本勇人 #必要経費 #申告漏れ

プロ野球、巨人の坂本勇人選手が東京国税局の税務調査を受け、2022年までの3年間で約2億4000万円の申告漏れを指摘されたとして、大きな話題になっている。

テレビ朝日によると、坂本選手は、自主トレの費用や友人らとの飲食費などを業務上の必要経費として申告していたという。

過少申告加算税を含む追徴税額は約1億円で、すでに修正申告したとされる。同僚との飲食費だったという報道もある(産経新聞)。

また、朝日新聞によると、料亭やクラブでの食事代もあったという。坂本選手の推定年棒は約5億円とされ、料亭などで食事する機会があっても不思議ではなさそうだ。

友人や同僚との食事代などは必要経費として申告できないのだろうか。税実務にくわしい高橋康夫弁護士は、過去には「クラブの飲食費」をめぐって重加算税が課されたケースもあると警鐘を鳴らす。

プロ野球、巨人の坂本勇人選手が東京国税局の税務調査を受け、2022年までの3年間で約2億4000万円の申告漏れを指摘されたとして、大きな話題になっている。

テレビ朝日によると、坂本選手は、自主トレの費用や友人らとの飲食費などを業務上の必要経費として申告していたという。

過少申告加算税を含む追徴税額は約1億円で、すでに修正申告したとされる。同僚との飲食費だったという報道もある(産経新聞)。

また、朝日新聞によると、料亭やクラブでの食事代もあったという。坂本選手の推定年棒は約5億円とされ、料亭などで食事する機会があっても不思議ではなさそうだ。

友人や同僚との食事代などは必要経費として申告できないのだろうか。税実務にくわしい高橋康夫弁護士は、過去には「クラブの飲食費」をめぐって重加算税が課されたケースもあると警鐘を鳴らす。

●飲食や自主トレ…「必要経費」として認めてもらう要件

——飲食費や自主トレの費用などが「必要経費」として認められるかどうかは、どのように判断されますか。

ある支出が必要経費として認められるためには、2つの要件を満たす必要があると理解されています。

(1)事業活動と直接の関連性を有し、事業の遂行上必要な費用でなければならない

(2)必要性の認定は関係者の主観的判断を基準としてではなく、客観的基準に即してなされなければならない

必要経費として認められるかどうかについては、提出された資料などをもとに判断して、支出が必要経費に算入できないことが事実上推認できる場合には、必要経費であるという立証責任を納税者が負うとされています。

●仕事の付き合い飲食は「情報収集」につながるけれど・・・

——友人との飲食費は必要経費として認められにくいのでしょうか。

飲食費については、仮に飲食をすることで仕事に必要な情報収集できる側面があるとしても、そのような情報は「飲食をしなければ収集できないものではない」として、必要性と関連性を否定される可能性があります。

友人や同僚との飲食費は、取引先との飲食費と比較すると、業務との関連性が低いと言わざるを得ませんし、特に、飲食費が高額であることは、必要性と関連性を否定する方向へ働く事情の一つとなります。単なる家事費(消費生活上の費用)と考えられてしまうということです。

一つの支出が家事上と業務上の両方に関わりがある費用、いわゆる「家事関連費」は、業務遂行上、直接必要だった部分を明らかに区分できる場合には、その区分できる金額を経費とできます。

しかし、仮に、友人や同僚との飲食費が「家事関連費」にあたるとしても、仕事に必要な会話をしている部分と、私的な会話を行っている時間などの家事費の部分とを明確に区別することは極めて困難です。結局、飲食費の一部を経費とすることも難しいということになります。

●自主トレは「仕事」と「プライベート」に分けにくい

——報道によると、自主トレは、野球選手の業務に関連しないと判断されたようです。巨人側はメディアの取材に「従来認められていた自主トレなどの費用も含め否認されました」と答えています。どのような判断がされたと考えられるでしょうか。

記事からは詳細は不明ですが、おそらく税務署は従来、坂本選手が申告した経費のうち、自主トレの費用の部分が経費に該当するか否かについて、厳密な検討をしていなかったのではないでしょうか。

自主トレの費用は、家事費の性質を持っていることは否定できません。国税不服審判所の裁決も、プロスポーツ選手の健康管理費を家事費としての性質を有していると判断しています。

仮に、自主トレの費用が家事関連費であるとしても、仕事に必要な部分とプライベートな消費の部分とを明確に区分することは困難で、結局、自主トレの費用の一部を経費とすることも容易ではないということになります。

自主トレの費用の金額は不明ですが、金額が高額であれば、それもマイナスに働いた可能性があります。

●課税要件事実を隠ぺい→重加算税が課せられる

——報道によると、坂本選手は重加算税までは課されることはなかったようですが、飲食費が経費として認められないばかりか、重加算税を課されてしまうこともあるのでしょうか。

重加算税制度は、課税要件事実を隠ぺいし、または仮装するという不正な手段を用いた場合に、過少申告加算税(確定申告で所得や税額を過少に申告した場合に課される税金)などよりも重い制裁を課するという制度です。

申告書の提出そのものとは別個の何らかの「隠ぺい、仮装」行為があり、申告書の提出がこれに「基づく」ものであることが必要と解されています。

ただし、裁判所は、証拠書類の破棄や、架空契約書の作成といった類いの積極的な行為がなくても、「納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合」には、重加算税を課すことができると考えており、具体的にどのような場合であるかは、事案ごとに諸般の事情を総合考慮して判断しています。

——実際に飲食費をめぐって重加算税が課された事例は過去にありましたか。

近時、社長が、ひいきにしていたホステスのいるクラブで1人で飲んで、店の利用代金を会社の交際費として申告したというケースについて、この経費は「個人的な飲食費」であるとして、会社の経費として認めないだけでなく、重加算税を課した税務署の処分を認容した裁判例があります。

この裁判例は、(社長個人ではなく)会社を名宛人とする領収書に基づいて、クラブの利用代金を交際費に計上した総勘定元帳を作成することにより、交際費と仮装して、法人税の確定申告書を提出したとして、重加算税の成立を認めています。

このような考え方によると、社長が1人で飲んで代金を会社の交際費として申告した場合だけでなく、個人事業主が、業務と関連のない飲食費を経費として申告した場合など、多くのケースで、重加算税を課すことが認められてしまうのではないか、という疑問があります。

しかし、重加算税を課されてしまうと、過少申告の場合、増差税額(本来納めるべきであった税金-当初に申告した税金)の35%を支払わなければなりません。多額の飲食費を経費として計上している人は、このような裁判例(隠ぺい仮装の範囲を拡大し、重加算税の成立を積極的に認める裁判例)もあることに留意したほうがよいと思います。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る