12884.jpg
「愛犬を安楽死させて一緒に埋葬して」アラン・ドロンの遺言に批判殺到 飼い主の死後、ペットはどうなる?
2024年08月27日 09時57分
#ペット #遺言 #アラン・ドロン #飼い主の死後

最近、88歳で死去したフランスの俳優、アラン・ドロンさんに批判が殺到しました。原因は、生前、「自分が亡くなったら、愛犬を安楽死させて一緒に埋葬してほしい」と遺言していたからです。

この遺言をめぐり、フランス国内では批判が巻き起こったと報道されています。ドロンさんの遺族はその後、遺言は執行せずに、愛犬の安楽死はしないと表明したそうです。愛犬は、ドロンさんの遺族が飼い続けると報じられています。

誰かが亡くなった場合、親族などに遺産が相続されますが、日本ではペットはどのように扱われるのでしょうか。大野貴央弁護士に聞きました。

最近、88歳で死去したフランスの俳優、アラン・ドロンさんに批判が殺到しました。原因は、生前、「自分が亡くなったら、愛犬を安楽死させて一緒に埋葬してほしい」と遺言していたからです。

この遺言をめぐり、フランス国内では批判が巻き起こったと報道されています。ドロンさんの遺族はその後、遺言は執行せずに、愛犬の安楽死はしないと表明したそうです。愛犬は、ドロンさんの遺族が飼い続けると報じられています。

誰かが亡くなった場合、親族などに遺産が相続されますが、日本ではペットはどのように扱われるのでしょうか。大野貴央弁護士に聞きました。

●ペットは法的には「相続対象」

——そもそもペットは、法的にどのように解釈されているのでしょうか。

ペットは生き物ですが、民法上は、家具や車などと同じように「物」と扱われます(民法85条)。

したがって、飼い主が亡くなった場合は、遺産として相続の対象になることが原則です。

遺言書に、ペットの次の飼い主(取得者)が指定されていれば、原則としてその人が新たな飼い主になります。(※遺言書による取得者の指定は、相続人以外の第三者にすることもできます。これを「遺贈」と言います)

遺言書がなければ、いったん相続人全員がペットの所有権を共有する形になるため、相続人全員で「遺産分割協議」を行い、新たな飼い主(取得者)を決める必要があります。

●「愛犬を殉葬」の遺言、法律上無効に

—— もしも亡くなった飼い主がアラン・ドロンさんのように「愛犬を殉葬してほしい」と遺言していた場合、遺族はそれを執行する義務はあるのでしょうか。

結論から言えば「愛犬を殉葬してほしい」という内容の遺言があったとしても、その部分は法律上無効になり、遺言どおりに執行する義務はないと考えられます。

ペットは民法上「物」にすぎないのですが、「動物の愛護及び管理に関する法律」という特別法によって保護の対象になっています。

同法44条では、一定の動物を、みだりに殺し、傷つけ、虐待や遺棄(逃がしたり捨ててしまうこと)を禁止しており、これに違反すると、懲役や罰金の刑罰を受ける可能性があります。

つまり、飼い主が亡くなったからと言って、ペットも巻き添えにして殺してしまう「殉葬」は、動物愛護管理法が刑罰をもって禁止する犯罪行為に該当するおそれがあります。犯罪行為を指示する内容の遺言は、少なくともその部分は公序良俗に反するといえますので、法律上無効とされる可能性が高いでしょう(民法90条)。

なおペットが病気や寿命で長く生きることが難しい場合、「安楽死」が許されることもあるようですが、合法といえるかどうか、明確な基準はありません。

そのような事情があれば、本当に安楽死させることがやむを得ない状況なのか、獣医師などの専門家に相談された方が良いと思います。

●遺族がペットの面倒をみることが難しい場合はどうなる?

——もしも遺族がペットの面倒を見ることが困難な場合、ペットはどうなるのでしょうか。

亡くなった飼い主の相続人が、誰もペットの面倒をみることが出来ない場合は、専門業者に引き取ってもらう等して、処分せざるを得ないでしょう。

先ほど紹介したように、ペットが飼えないからと言って外へ逃がしたり、殺してしまうことは、動物愛護管理法で固く禁止されている犯罪行為ですから、絶対にやめましょう。

なお他の遺産も一切いらないという場合、相続放棄も選択肢になりますが、相続放棄をしたとしても、他の相続人等に引き渡すまでの間は、「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」遺産を保存する義務があります(民法940条)。

少なくとも次の引き取り手に委ねるまでの間は、ペットをきちんと世話してあげる義務があると考えられますので、注意してください。

現在ペットを飼われている方で、「自分が亡くなったら誰にペットの世話をしてもらおうか…」とお悩みの場合は、元気なうちに、相続人である親族とよく相談しておくか、自分の死後、誰にペットの面倒をみてもらいたいか、遺言書を作って明記しておくことをお勧めします。相続に詳しい弁護士に相談してみてください。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る