12924.jpg
遺骨をこなごなにする「粉骨」 故人が望んでいたのなら「違法」じゃない?
2014年06月03日 15時31分

遺骨を海にまく「散骨」といえば、人気小説を映画化した『世界の中心で、愛をさけぶ』のワンシーンを思い浮かべる人もいるかもしれない。少し前にも、亡くなった芸能人の遺骨が海にまかれたというニュースがあったが、散骨は故人の要望もあり、葬送方法の一つとして広まりつつあるようだ。

だが、こうした散骨をはっきりと認めた法律があるわけではない。法務省が「節度を持って行われる限り、違法ではない」という非公式な見解を示しているにすぎない。散骨は海上などで行われるが、そのためには遺骨を粉状に砕く「粉骨」をする必要があるという。遺族の中には、自分の手で「粉骨」を行う人もいるそうだ。

だが、遺骨を砕くのは、法的に問題ないのだろうか。刑法には「死体損壊罪」という罪があるが、遺骨を破壊すると、犯罪になってしまうのではないか。田村勇人弁護士に聞いた。

遺骨を海にまく「散骨」といえば、人気小説を映画化した『世界の中心で、愛をさけぶ』のワンシーンを思い浮かべる人もいるかもしれない。少し前にも、亡くなった芸能人の遺骨が海にまかれたというニュースがあったが、散骨は故人の要望もあり、葬送方法の一つとして広まりつつあるようだ。

だが、こうした散骨をはっきりと認めた法律があるわけではない。法務省が「節度を持って行われる限り、違法ではない」という非公式な見解を示しているにすぎない。散骨は海上などで行われるが、そのためには遺骨を粉状に砕く「粉骨」をする必要があるという。遺族の中には、自分の手で「粉骨」を行う人もいるそうだ。

だが、遺骨を砕くのは、法的に問題ないのだろうか。刑法には「死体損壊罪」という罪があるが、遺骨を破壊すると、犯罪になってしまうのではないか。田村勇人弁護士に聞いた。

●散骨に必要な範囲ならば「粉骨」も問題なし

「散骨のためとはいえ、遺骨を破壊することは、形式的には、死体損壊罪(刑法190条)に該当します。しかし、散骨に必要な範囲の行為であれば、違法行為にはなりません」

こう田村弁護士は説明する。なぜ違法行為にならないのだろうか。

「法務省は非公式ながら、『節度を持って散骨が行われる限り、違法ではない』という見解を示しています。『節度を持って』とは、『遺骨とわからないように』という意味で使っています。つまり、散骨の際には、細かいパウダー状にしたり、布で包んで散骨するといった行為を、法務省自体が求めているのです」

法務省が「粉骨」を認めているのなら、大丈夫そうだ。

「はい。散骨するのが目的の場合、形式的に死体損壊罪に該当しても、『適法な散骨に不可欠の行為』といえます。ですから、違法性はなく、処罰されません。法律上は、正当行為(刑法35条)にあたるか、または可罰的な違法性がないとされるでしょう」

●正当化されるのは「散骨目的」に限られる

「しかし、あくまで正当化されるのは、『散骨の目的』で『散骨に適した形』にするための範囲の行為です。そこから逸脱した内容の粉骨は、違法とされる可能性があるので、注意が必要です」

どんな場合に違法となりそうだろうか。

「たとえば、人前で粉骨するような場合ですね。それから、あまり細かく粉骨せず、他人から人体を想像させるような大きさのまま、散骨するような場合などでしょうか。こうした場合は、違法とされる可能性があるので、注意してください」

粉骨を計画している人は、故人の尊厳を守るためにも、敬虔な気持ちを持ってのぞみたいものだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る