お笑いコンビ「アインシュタイン」稲田直樹さんのインスタグラムアカウントを乗っ取ったとして、男性(32)が不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕されました。
報道によると、容疑者は2024年7月、稲田さんの生年月日やアカウント名からパスワードを推測し、インスタグラムのアカウントに16回にわたって不正アクセスした疑いが持たれています。乗っ取ったアカウントを悪用して「番組の企画」と偽り、ダイレクトメッセージで女性たちに性的な画像を要求していたといいます。
稲田さんは当時「セキュリティ管理が甘く不正ログインされた」とコメントを発表し、警察に相談していました。しかし、稲田さんの言い分を信じずに「アカウント乗っ取られました、で果たして何処まで逃げられるか見もの」など稲田さんを悪人のように決めつける人も多数いました。逮捕後、SNSでは「乗っ取りのやつ本当だったんだ」などと、疑ってしまったことを詫びる投稿をする人たちもいました。
このような他人のSNSアカウントへの不正アクセスは、どのような法的問題があるのでしょうか。
●不正アクセス禁止法違反になる行為とは?
今回の事件の容疑は「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(不正アクセス禁止法)違反です。
不正アクセス禁止法は、他人の識別符号(IDやパスワード)を悪用するパスワード盗用型と、コンピュータのセキュリティホールを突く攻撃型の2つの類型を禁止しています。今回のケースは前者に該当し、電気通信回線を通じて他人の識別符号を不正に入力し、アクセス制御機能を持つコンピュータを利用可能にした行為として処罰されます。
不正アクセス行為に用いた識別符号(IDやパスワード)の入手方法は問われません。推測によって取得した場合も、盗み見や詐取した場合と同様に不正アクセス行為に該当します。生年月日やアカウント名から推測したパスワードであっても、それを使用してアクセスすれば犯罪となるのです。
なお、不正アクセス行為の用に供する目的で、他人の識別符号を不正に取得する行為も処罰対象となります。
●不正アクセス行為の他、IDやパスワードの取得・保管も処罰対象となりうる
不正アクセス行為自体について、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます(不正アクセス禁止法11条、3条)。
また、不正アクセス行為の用に供する目的で他人の識別符号(IDとパスワードなど)を不正に取得・保管する行為や、業務その他正当な理由なく他人の識別符号を第三者に提供する行為には、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。
● 民事上の損害賠償請求の対象にもなる
不正アクセスの被害を受けた場合、刑事告発のほかに民事上の損害賠償請求も可能です。
不正アクセス行為は民法709条の不法行為に該当するため、被害者は加害者に対して精神的苦痛に対する慰謝料や、アカウント復旧にかかった費用、風評被害による損失などを請求できます。
特に芸能人の場合、なりすましによる名誉毀損やプライバシー侵害の損害は深刻になりがちです。
このような場合に考えられる対応策としては、まず警察への被害届提出、SNS運営会社への報告とアカウント復旧手続き、被害状況の記録保全、そして必要に応じて民事訴訟の検討が挙げられます。