13882.jpg
長時間労働抑制で「持ち帰り残業」増加に懸念の声…どんな問題があるのか?
2016年11月27日 09時12分

広告代理店「電通」の女性社員が過労自殺したことが明らかになって以降、長時間労働抑制への社会的な機運が高まっている。政府の働き方改革実現会議でも、労働基準法の改正により、労使協定が結ばれた場合には、青天井の時間外勤務が可能となる「36協定」を見直そうとする動きもある。

一方で、ツイッター上では、時間外労働が禁止されることで、「自宅持ち帰り残業」せざるをえないのではないかと警戒する声も出ている。「時間を単純に規制したところで仕事量とか効率化は図られないんでしょ? 持ち帰り残業やらされるだけでしょ?」「はよ帰らせてくれようとするんは嬉しいけど そんなんお家で持ち帰り残業が増えるだけやわ!」といったネガティブな反応だ。

長時間労働を見直すといっても、業務量を減らすことがなければ、持ち帰り残業で対応せざるを得ない人たちもいるだろう。しかし、自宅での持ち帰り残業には、どのような法的な問題があるのだろうか。松村龍一弁護士に話を聞いた。

広告代理店「電通」の女性社員が過労自殺したことが明らかになって以降、長時間労働抑制への社会的な機運が高まっている。政府の働き方改革実現会議でも、労働基準法の改正により、労使協定が結ばれた場合には、青天井の時間外勤務が可能となる「36協定」を見直そうとする動きもある。

一方で、ツイッター上では、時間外労働が禁止されることで、「自宅持ち帰り残業」せざるをえないのではないかと警戒する声も出ている。「時間を単純に規制したところで仕事量とか効率化は図られないんでしょ? 持ち帰り残業やらされるだけでしょ?」「はよ帰らせてくれようとするんは嬉しいけど そんなんお家で持ち帰り残業が増えるだけやわ!」といったネガティブな反応だ。

長時間労働を見直すといっても、業務量を減らすことがなければ、持ち帰り残業で対応せざるを得ない人たちもいるだろう。しかし、自宅での持ち帰り残業には、どのような法的な問題があるのだろうか。松村龍一弁護士に話を聞いた。

●「持ち帰り残業」の法的な位置づけは?

「法律上の労働時間とは、原則として、ある場所に拘束されながら、具体的な指揮命令を受けている時間のことです。

そのため、いわゆる『自宅持ち帰り残業』の場合には、この定義にはあてはまりません。場所的拘束を受けておらず、また、テレビを見ながら仕事をするなど自由に仕事が出来ることから職務専念義務も負っていないと考えられるからです。

そのため、法律を形式的に適用する裁判所では、法律上の労働時間とは評価されず給料が発生しないと判断されることもあります。さらに、持ち帰り残業は、従業員が自主的に仕事を持ち帰っただけだとして、会社側が持ち帰りの指示したことを否定し、トラブルになるような事案も後を絶ちません」

会社が自宅持ち帰り残業を明確に指示した場合はどうなのか。

「会社が『自宅持ち帰り残業』を指示しているにもかかわらず、給料が出ないというのは通常の社会常識では到底受け入れられません。そこで、自宅に持ち帰る仕事は、労働契約とは別個に一種の業務委託契約が生じたと解釈し、その仕事分の報酬を給料とは別に支払うべきであると考えられます」

●法的に「いわゆるグレーゾーン状態」にある「持ち帰り残業」

長時間労働を抑制しようと社会的な機運が高まる中、持ち帰り残業を増やして対処させようとするブラック企業もあるかもしれない。

「『自宅持ち帰り残業』は、現在の法律ではその対応が明確に定まっていません。そのため、いわゆるグレーゾーンな状態にあり、違法な見せかけの残業時間削減に用いられる危険性が高いため、安易な導入は控えるべきです」

松村弁護士は最後に、次のように警告する。

「自宅持ち帰り残業制度を導入するのであれば、実際の運用について労働者の不利益にならないようにする必要があります。持ち帰る仕事の量、その仕事に対する対価を明確にするとともに、労働者側に自宅に持ち帰るか否かの選択権を与えるような制度でなければ、労働時間削減という根本的な問題解決にはならないでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る