14513.jpg
タクシー強盗犯、運転手から説教+食事おごられて改心、自首…刑罰は軽くなる?
2017年03月30日 10時07分

乗車したタクシーで金を奪おうとしたものの、運転手に説教されて、その後に自首した20代男性が3月20日、強盗未遂の疑いで兵庫県警に逮捕された。

報道によると、男性は3月19日、兵庫県姫路市の路上に停車したタクシー内で、60代の男性運転手の髪の毛をつかみ、鋭利な金属を突きつけて「金を出せ」と脅迫し、金を奪おうとした疑いが持たれている。

だが、男性は運転手から「若いんやから、こんなことしたらあかん」と戒められたうえ、近くのファミレスで食事をおごってもらった。男性は改心して、姫路市内の交番に自首したという。今回のような自首は、刑罰にどんな影響をあたえるのだろうか。坂野真一弁護士に聞いた。

乗車したタクシーで金を奪おうとしたものの、運転手に説教されて、その後に自首した20代男性が3月20日、強盗未遂の疑いで兵庫県警に逮捕された。

報道によると、男性は3月19日、兵庫県姫路市の路上に停車したタクシー内で、60代の男性運転手の髪の毛をつかみ、鋭利な金属を突きつけて「金を出せ」と脅迫し、金を奪おうとした疑いが持たれている。

だが、男性は運転手から「若いんやから、こんなことしたらあかん」と戒められたうえ、近くのファミレスで食事をおごってもらった。男性は改心して、姫路市内の交番に自首したという。今回のような自首は、刑罰にどんな影響をあたえるのだろうか。坂野真一弁護士に聞いた。

●「刑を軽くしてもよい」という効果を持つ

「ひどい目に遭いながらも、強盗犯を説得し、自首にまで導いたタクシードライバーの方は、きっと真剣に若者を思いやってあげたのでしょう。だからこそ、若者も、その気持ちに応えて改心し、自首する気持ちになったのだと思います。

仮に、この若者が起訴されて、刑罰を受けたとしても、もう二度と同じことはしないだろうと私は思います。若者は、タクシードライバーの方に未来を救ってもらったのだと思います」

坂野弁護士はこう切り出した。自首には、どんな影響があるのだろうか。

「まず、自首とは、捜査機関に犯罪が発覚する前に、罪を犯した人が、自発的に犯罪事実を申告して、訴追を含む処分を求めることをいいます。

自首の効果については、特に刑の免除が定められている刑法80条(内乱予備・陰謀、幇助等)、刑法93条但書(私戦予備・陰謀)などを除いて、『任意的な刑の減軽事由』とされています(刑法42条1項)。なお、刑事訴訟法上の定めでは、自首は、捜査のきっかけに過ぎません(刑事訴訟法245条)。

『任意的な刑の減軽事由』とは、簡単にいえば、裁判官が自首した人に刑罰を科すとき、その刑を軽くしてもよいという効果を持つことです。もちろん軽くしなくてはならない、というわけではないので、裁判官が判決で刑を軽くしなくてもまったく構いません」

●自首した場合のほうが起訴猶予を受ける可能性が高い

自首をすれば、なぜ刑を軽くしてもよいのだろうか。

「(1)犯人が反省して強く非難する必要性が減少すること、(2)犯罪捜査がやりやすくなることなどの政策的な理由が挙げられますが、現行法上、自首の要件として犯人の悔悟・反省が規定されていないことから、主な理由は(2)であると考えられています。

とはいえ、自分で犯した犯罪がばれていないのに、警察に自ら処罰してほしいと出頭するわけですから、自首は、犯人の情状面の評価にはもちろん影響を与えうる行為です。

そして、検察官には、起訴するかどうかの裁量権があります。犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の情況によって、訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができます(刑事訴訟法248条)。

まだ犯罪が発覚しておらず、逃げ切れるかもしれないのに自ら犯罪をしたことを認めて処罰してほしいと出頭してくるわけですから、自首は、少なくとも、性格面、情状面、犯罪後の情況には当然影響を与えうる行為です。

したがって、ほかの条件が同じ場合、自首した場合と自首せずに捕まった場合を比較すれば、自首した場合のほうが当然、起訴猶予を受ける可能性が高くなると思われます。

●裁判結果(量刑)にも有利になる可能性

また、裁判官から見ても、処断すべき刑の範囲内で、具体的に宣告刑を決定する際には、犯人の年齢、性格、経歴および環境、犯罪の動機、方法、結果および社会的影響、犯罪後における犯人の態度その他の事情を考慮するとされています。自首の事実は、前述の通り法定減軽の任意的減軽事由であるほか、少なくとも、犯人の性格、犯罪後における犯人の態度その他の事情にも、影響する事実と考えてよいでしょう。

したがって、自首は、法文上、任意的減免と規定されているのですが、ほかの条件が同じ場合、自首した場合のほうが当然、量刑面で有利である(軽くなる可能性が高い)と考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る