14785.jpg
袴田さん再審無罪、法学研究者346人が「控訴断念」求める声明「検察の汚点になる」「有罪可能性は限りなくゼロ」
2024年10月04日 17時43分
#袴田事件 #再審法 #ねつ造

1966年に発生した静岡県一家4人殺害事件で死刑が確定した袴田巌さんに再審無罪判決が言い渡されたことを受け、全国の有志の法学研究者が10月4日、検察は控訴をすべきでないとする声明を発表した。

刑事法の研究者のほか、大学教授や弁護士など、発起人や呼びかけ人を含めて計346人が声明に参加。無罪判決言い渡し後の9月27日から賛同者を募っていた。

声明では、無罪判決について、「袴田巌氏の雪冤が果たされたことを歓迎し、再審請求に尽力された関係者ならびにこれに応えた裁判所に対し、深く敬意を表する」と評価し、「無罪判決を早期に確定させるべく、控訴手続を取らないことを求める」としている。

声明を発表した日に都内で開かれた記者会見で、発起人代表をつとめる一橋大の村井敏邦名誉教授は「(再審公判で)検察が有罪立証し、いたずらに時間を費やしたことに、大変に失望し憤りを感じた。しかし、袴田さんや関係者の方々は憤りでは済まない。検察は国民を愚弄したと言ってもいい」と検察側の対応を痛烈に批判した。

1966年に発生した静岡県一家4人殺害事件で死刑が確定した袴田巌さんに再審無罪判決が言い渡されたことを受け、全国の有志の法学研究者が10月4日、検察は控訴をすべきでないとする声明を発表した。

刑事法の研究者のほか、大学教授や弁護士など、発起人や呼びかけ人を含めて計346人が声明に参加。無罪判決言い渡し後の9月27日から賛同者を募っていた。

声明では、無罪判決について、「袴田巌氏の雪冤が果たされたことを歓迎し、再審請求に尽力された関係者ならびにこれに応えた裁判所に対し、深く敬意を表する」と評価し、「無罪判決を早期に確定させるべく、控訴手続を取らないことを求める」としている。

声明を発表した日に都内で開かれた記者会見で、発起人代表をつとめる一橋大の村井敏邦名誉教授は「(再審公判で)検察が有罪立証し、いたずらに時間を費やしたことに、大変に失望し憤りを感じた。しかし、袴田さんや関係者の方々は憤りでは済まない。検察は国民を愚弄したと言ってもいい」と検察側の対応を痛烈に批判した。

●控訴すれば「検察の歴史や名声に汚点を残す」

「袴田事件再審判決を受けての法学研究者声明」では、再審無罪判決の速やかな確定と再審法改正の実現を求めている。

声明は、袴田事件については「捜査のあり方ならびに袴田巌氏が犯人であることについて確定一審の段階から深刻な疑問が抱かれてきた」と指摘。これらの疑問点を改めて指摘した再審判決について、「捜査手続の問題性ならびに『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判の鉄則を意識しての判断」したものとして評価する。

事件発生から長期間経過していることで、「袴田巌氏ならびに第2次再審の請求人である姉・袴田ひで子氏は、60年近くも事件に翻弄され、巌氏はその結果、精神を病むという状態に追い込まれている」ことを強く懸念。

仮に控訴されてこの状態が一層長期化すれば、「迅速な裁判を受ける被告人の権利(憲法37条1項)を侵害するのみならず、法理を超えた人道問題であるとすらいえる。検察官控訴は、検察の歴史や名声に汚点を残すこと以外の何物でもない」ことから、「検察官は控訴権を行使すべきでない」としている。

また、起訴前の長期の身体拘束、執拗な追及による虚偽自白の獲得、検察官による被告人に有利な証拠の不開示、違法・不当な捜査に対する裁判所のチェックの弱さなど、「刑事手続の問題は、現在も残存しており、誤判を生みだす要因となっている」とし、「問題点の改革と無実の者を迅速に救済する再審制度の確立」すべく、現行の再審法を改正すべきだとうったえている。

●「控訴して有罪判決を獲得する可能性は限りなくゼロ」

事件発生から1年2カ月後に工場の味噌タンクの底から発見され、犯行着衣とされてきた「5点の衣類」は、重要な証拠として継続して争点となっていたが、再審無罪判決で捜査機関によるねつ造と認定された。

声明の呼びかけ人をつとめる青山学院大の葛野尋之教授は会見で、ねつ造認定されたことなどを踏まえ、「検察が控訴して有罪判決を獲得する可能性は限りなくゼロに近い。にもかかわらず、控訴するのであれば、権限の濫用にほかならない」と指摘した。

同じく呼びかけ人で一橋大の高平奇恵准教授も「これまで長年かけておこなわれてきたことを控訴でまた繰り返すのか」とし、「控訴は、袴田さんの苦しみをいたずらに長引かせるだけ。58年もの間、袴田さんを苦しめ続けていた理由、原因を見つめ、解析することが検察官に求められる役割ではないか」と注文をつけた。

村井名誉教授は、検察が証拠を改ざんした郵便不正・厚生労働省元局長事件を挙げて、「あの事件で反省したはずの検察が、ねつ造認定される証拠等で有罪立証した。このようなことを許してはいけない」と述べ、再審法を改正し、たとえ被告人に有利な証拠であっても検察が収集した証拠は全部提出するなどの制度を整備すべきとうったえた。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る