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大人が夏休みに読んでおきたい法廷ミステリ、図書館のプロが選んだ10冊はこれだ!
2018年08月19日 09時47分

法廷ミステリをこよなく愛する工学院大学附属中学校・高等学校司書教諭の有山裕美子さん。「大人が夏休みに読んでおきたい10冊」を選んでいただきました。有山さんは法廷ミステリを愛読する理由をこう語ります。

「それはそこに様々な人がいて、それぞれの生き様があるからだと思います。法廷ミステリの多くは、人の弱さ、逆に強さが描かれ、常に真実とは何か、正義とは何かという問いかけがあるように思います。人が人を裁くということは本当に難しい。これからも、色々な作品に出会う中で、私自身の真実とは何か、正義とは何かを問うていきたいと思います」

では、有山さんが悩みながら選んだ10冊とは?

法廷ミステリをこよなく愛する工学院大学附属中学校・高等学校司書教諭の有山裕美子さん。「大人が夏休みに読んでおきたい10冊」を選んでいただきました。有山さんは法廷ミステリを愛読する理由をこう語ります。

「それはそこに様々な人がいて、それぞれの生き様があるからだと思います。法廷ミステリの多くは、人の弱さ、逆に強さが描かれ、常に真実とは何か、正義とは何かという問いかけがあるように思います。人が人を裁くということは本当に難しい。これからも、色々な作品に出会う中で、私自身の真実とは何か、正義とは何かを問うていきたいと思います」

では、有山さんが悩みながら選んだ10冊とは?

●まずはこの2冊、法廷シーンを丁寧に描いた入門の書

・『事件』大岡昇平著(1980年)

片田舎で起こった、19歳の少年による恋人の姉殺害事件を、判事、検事、弁護士をはじめ登場する人物それぞれの立場に立ちながら、圧倒的な筆致で描かれる法廷ミステリ。ノンフィクションかと見紛うその丁寧な解説や描写は、読者をその世界に容赦なく引きずりこむ。何度も映画化やドラマ化がされた。法廷ミステリを読むならまずこの1冊から。

・『ソロモンの偽証』宮部みゆき著(2012年)

『事件』に感銘を受けた作者による法廷ミステリ。中学生が自らの学校で起きた事件を自ら解決しようと、学校内で裁判を始める。次から次へと起こる事件、マスコミや保護者も巻き込み、様々な憶測や混乱が飛び交うなか、彼らの裁判はどうなっていくのか。中学生とは思えないリアルな法廷シーンは圧巻。長編三部作で、映画化やドラマ化もされている。

●裁判官だって悩んでいる…人を裁く重責を描いて問題提起

・『量刑』夏樹静子著(2001年)

弁護士や検事を主人公に描かれた作品は数多くあるが、これは量刑を決める裁判官をテーマに、「人を裁く」というその重責と苦悩が描かれた物語。リアルな描写は臨場感があり、ぐいぐいと裁判に引き込まれていく。「合議」や「自由心象主義」などを通し、裁判の客観性について改めて問題提起した作品でもある。

●法廷ミステリの花形はやっぱり弁護士! その舞台裏の物語

・『覚悟』小杉健治著(2012年)

無実だと主張しながら死刑判決を受けた被告は、控訴を拒否し、これも天命だという。被告の無罪を信じる弁護人は、翻意させようと被告の故郷に出かけていく。生い立ちに秘められた悲しい過去、巧妙に仕組まれたもう一つの事件。間違った罪で人を裁くことがあってはならないことを改めて思う物語。

●正義の側にいるはずの検事はどこへ行く?  今夏には映画化も

・『検察側の罪人』雫井修介著(2013年)

裁判は真実を明らかにする場所でなければならない、ということを問いかける作品をもう一つ。老夫婦殺人事件で上がってきた容疑者の一人は、すでに時効となった殺人事件の重要参考人だった。一人の検事が、抱えた正義は歪んだ方向に動いていく。果たして真実は明らかになるのか。木村拓哉主演で映画化、8月24日に封切りとなる。

●老刑務官が主役、死刑制度の是非を考えさせられる作品

・『13階段』高野和明著(2001年)

老刑務官と仮釈放された青年が、死刑宣告を受けた被告の冤罪を晴らそうと動き出す。加害者家族、そして被害者家族の置かれた状況や思いも複雑に絡み、物語は二転三転、その結末は最後まで読めない。死刑制度の是非や人を更生させるという意味について問いかける1冊。

●もしも私が裁判員になったなら…? 読み手が追体験

・『裁判員法廷』芦辺拓著(2008年)

「あなた」という二人称で、読み手自身が裁判員として裁判に参加するという設定で進行する3つのストーリー。作品自体は制度がスタートする前に描かれているが、読み手が裁判員という立場を追体験できる。自分ならどうするか、裁判制度や人を裁くことの難しさを再認識する物語。

●現行の裁判員制度では反映されない被害者家族の思い

・『最後の証人』柚月裕子著(2010年)

ヤメ検の佐方の元に舞い込んだ殺人事件の依頼。法廷での敏腕検事とのやり取りの中で、徐々に明らかになっていく真実。それはあまりに悲しい真実だった。裁判の中には決して反映されることのない被害者家族の思い。現行の裁判制度のあり方に一石を投じる一冊ではないだろうか。

●家族が冤罪かもしれないとしたら?  正義とは何かと問う

・『真実の檻』下村敦史著(2016年)

母親の遺品から、自分にはもう一人本当の父がいて、その実父は殺人の疑いで逮捕され、死刑判決を受けていることを知った主人公は、父親が冤罪かもしれないという一縷の望みを抱き動き出す。真実を歪めてまで守ろうとする大切なものはあるのか。冤罪が生まれていく過程と、それに翻弄される人生が切ない法廷ミステリ。

●警察小説と法廷ミステリを両方の視点から楽しめる1冊

・『沈黙法廷』佐々木護著(2016年)

一人暮らしの裕福な老人が殺害され、家事代行の女が殺人を疑われる。被告は、果たして有罪なのか無罪なのか、そしてタイトルが意味する「沈黙」とは。物語の前半は犯罪の捜査、後半は法廷での場面と、刑事、被告人、弁護士、検事など様々な視点で描かれる物語は、警察小説、法廷ミステリの両側面で楽しめる。

【有山裕美子さんプロフィール】

小学校教諭、公共図書館勤務を経て、現在は東京都八王子市にある工学院大学附属中学・高等学校で国語科教諭兼司書教諭を務める。法廷ミステリは、心を揺さぶられるものが多く、本も映画も大好き。

(弁護士ドットコムニュース)

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