16276.jpg
判決延期2回で裁判官「もう待てない」と有罪判決…延期が認められる条件とは?
2016年09月21日 09時58分

「もう十分だと思います。もう待てません」。詐欺罪に問われた被告人が、判決の「再々延期」を求めたことに対して、青森地裁の裁判官はこう切り捨てた。

読売新聞によると、この被告人はネットオークションで、高級車などの架空出品をおこなって、4人の落札者から計約730万円を騙し取った罪に問われていた。被告人は保釈されて、当初は、7月19日が判決予定だった。

しかし、被告人が「弁済する見通しがついた」と主張したため、8月31日に延期された。だが、被告人は台風の影響で出廷できなかった。青森地裁の鎌倉正和裁判官は、判決の「再延期」を認めて、その期日までに弁済手続きを終えるように指示していた。

ところが、被告人は再延期された9月9日当日までに70万円ほどしか用意できなかった。被告人が「この先も入金の予定がある」と再々延期を求めたところ、鎌倉裁判官は懲役3年の判決を言い渡したというわけだ。

今回のケースでは、判決の言い渡しまで紆余曲折があったが、こうした判決延期はどんなときに認められるのだろうか。刑事事件にくわしい清水伸賢弁護士に聞いた。

「もう十分だと思います。もう待てません」。詐欺罪に問われた被告人が、判決の「再々延期」を求めたことに対して、青森地裁の裁判官はこう切り捨てた。

読売新聞によると、この被告人はネットオークションで、高級車などの架空出品をおこなって、4人の落札者から計約730万円を騙し取った罪に問われていた。被告人は保釈されて、当初は、7月19日が判決予定だった。

しかし、被告人が「弁済する見通しがついた」と主張したため、8月31日に延期された。だが、被告人は台風の影響で出廷できなかった。青森地裁の鎌倉正和裁判官は、判決の「再延期」を認めて、その期日までに弁済手続きを終えるように指示していた。

ところが、被告人は再延期された9月9日当日までに70万円ほどしか用意できなかった。被告人が「この先も入金の予定がある」と再々延期を求めたところ、鎌倉裁判官は懲役3年の判決を言い渡したというわけだ。

今回のケースでは、判決の言い渡しまで紆余曲折があったが、こうした判決延期はどんなときに認められるのだろうか。刑事事件にくわしい清水伸賢弁護士に聞いた。

●「被害弁償の有無は、量刑に関わる重要な情状事項」

「刑事裁判の判決では、有罪・無罪だけでなく、有罪の場合に被告人をどのような刑に処すべきか、執行猶予をつけるべきか、という量刑まで判断されます。

そのため、証拠調べでは、どのような罪を犯したか(罪体)に関する証拠を調べるだけでなく、被害弁償や本人の家庭環境、生活状況などといった情状に関する証拠も調べます。

被害者がいる事件では、被害弁償があったかどうかは、量刑に関わる重要な情状事項です」

具体的にはどのような場合だろうか。

「とくに、被害者との間で示談が成立して、被害者に被告人を許す意思がある場合や、被害金額を全額返還したような場合、量刑上、有利に判断する事情となります。

そのため、近日中に被害弁償がおこなわれる見込みがある場合、裁判所は、判決期日の指定を調整したり、また交渉状況などに応じて延期したりすることがあります。

また、被告人自身が薬物の依存症である場合や、精神的疾患を理由として、罪を犯してしまった場合などには、1審中に保釈されて治療行為や更生プログラムを受ける場合があります。

そのような場合にも、裁判所は判決期日を数カ月程度先としたり、延期したりすることがあります。判決期日の指定は、裁判所の裁量でおこなわれるものであり、何度でも延ばしてくれるというわけではないですが、当事者の立証活動に応じてこうした指定がされることは多いです」

●被告人の更生にとっても役立つ面がある

判決延期のメリットはどういうものがあるのか。

「刑事裁判では、1審で、すべての証拠調べをおこなうことが原則とされています。1審判決後に被害弁償をしたり、治療行為をしたりしても、かならずしも控訴審(2審)で考慮されるとは限りません。

また、被害弁償の交渉や、更生プログラムの受講は、時間がかかることも多いため、近日中に被告人に有利な情状事実の証拠が出るなら、それを踏まえて1審判決の量刑を検討することが妥当といえます。

さらに、このような裁判所の措置は、被告人の更生にとっても役立つ面がある、といえるでしょう」

清水弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る