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亡き父のクレカ「ポイント」を商品券に交換してしまった…これって「相続した」ことになる?
2025年11月09日 09時26分
#相続 #遺産 #マイレージ

亡き父のクレジットカードのポイントを商品券に交換してしまった──。この行為が「相続」の対象になるのか、不安だという相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者によると、父親の死後に多額の借金が見つかり、相続放棄の手続きを進めていました。

その途中、父親名義のクレジットカードを解約しようとした際、数十万円分の高額ポイントが残っていることが判明。相続放棄を考えているため対応に困っていると伝えたところ、オペレーターから「商品券に交換しては」と提案され、そのまま商品券に交換し、受け取ってしまったといいます。

故人の財産を一部でも処分すると、「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるのが原則です。今回の場合、ポイントを商品券に換えた行為は「相続財産の処分」にあたるのでしょうか。

クレジットカードのポイントだけでなく、航空会社のマイレージなどは、相続の対象になるのでしょうか。相続の問題にくわしい関根翔弁護士に聞きました。

亡き父のクレジットカードのポイントを商品券に交換してしまった──。この行為が「相続」の対象になるのか、不安だという相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者によると、父親の死後に多額の借金が見つかり、相続放棄の手続きを進めていました。

その途中、父親名義のクレジットカードを解約しようとした際、数十万円分の高額ポイントが残っていることが判明。相続放棄を考えているため対応に困っていると伝えたところ、オペレーターから「商品券に交換しては」と提案され、そのまま商品券に交換し、受け取ってしまったといいます。

故人の財産を一部でも処分すると、「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるのが原則です。今回の場合、ポイントを商品券に換えた行為は「相続財産の処分」にあたるのでしょうか。

クレジットカードのポイントだけでなく、航空会社のマイレージなどは、相続の対象になるのでしょうか。相続の問題にくわしい関根翔弁護士に聞きました。

●ポイントやマイレージは相続財産?

──クレジットカードのポイントや航空会社のマイレージは、法的に相続財産に含まれるのでしょうか。

クレジットカードのポイントが相続財産に含まれるか否かは、クレジットカードの規約において、会員が死亡した場合にポイントがどう取り扱われるかを確認する必要があります。

ポイントが相続財産として相続人に承継される場合、ポイントが相続とは別に一定の者に承継される場合、ポイントが会員の死亡により当然に失効し誰にも承継されない場合などが考えられますが、一般的に、クレジットカードのポイントは会員が亡くなると自動的に失効する規約になっていることが多いようです。

そのため、多くの場合では、クレジットカードのポイントは、相続財産に含まれないものと思われます。

航空会社のマイレージについても、相続財産に含まれるか否かは、各社の規約に基づき判断されるでしょう。JALは、マイレージの相続を認めているようです。ANAでは、会員が死亡した6カ月以内に相続人が手続きをおこなった場合に限定して承継を認めているようです。

●オペレーターの提案で「商品券」に交換

──故人のクレジットカードのポイントを商品券に交換し、受け取る行為は、法的に「相続財産の処分」にあたるのでしょうか。この行為によって、借金も含むすべての財産を相続する「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるのでしょうか。

相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、単純承認をしたものとみなされ、相続放棄ができなくなるのが原則です(民法921条1号本文、同920条)。

今回のケースでは、オペレーターに会員が死亡していることや相続放棄を予定していることを伝えたところ、亡くなった会員のポイントを商品券に交換することを提案されたとのことです。

先ほど述べた通り、多くの場合、クレジットカードのポイントは会員の死亡により当然に失効することとなります。

そうした場合を前提とすると、事業者は、遺族からの相談を受け、亡くなった会員のポイントが失効していることを知りながら、商品券を遺族に交付したことになります。

そのような対応は、事業者が遺族に商品券を任意に贈与したと評価されるのではないかと思います。

●「贈与した」と評価された場合はどうなる?

──「贈与した」と評価された場合、相続へはどう影響しますか。

事業者が亡くなった会員の遺族に商品券を贈与したと評価されるのであれば、遺族は相続財産を処分したものではないと評価されるでしょうから、単純承認とはみなされず、相続放棄をすることができると思われます。

一方、クレジットカードのポイントが規約上相続の対象となる旨定められている場合は、ポイントを商品券に換えて受領することは、相続財産を処分したと評価されるのが原則と思われます。

ただし、クレジットカードのポイントは有効期限があるでしょうから、換えた商品券を使用せずに、他の相続人または相続財産管理人に引き渡すまで管理し続けるのであれば、有効期限によりポイントが失効することを避ける保存行為と評価され、単純承認とはみなされず、なお相続放棄が認められる可能性もあるかと思います。

●生前に備えておくことは?

──今回の相談事例のように、故人がためていたポイントの扱いで相続人がトラブルになったり、悩んだりするケースがあります。遺族がスムーズに手続きを行えるよう、生前にやっておくべきことや、遺言書などで明記しておくべきことはありますか。

今回のケースでは、オペレーターに会員が死亡している旨及び相続放棄を予定している旨を伝えたところ、亡くなった会員のポイントを商品券に交換することを提案されたとのことでした。

しかし、仮に事業者に会員が死亡していることを伝えずにポイントを商品券に換えた場合、刑事上の詐欺罪が成立する可能性がありますので、決してそのような行為はしないよう留意する必要があります。

ポイントが相続の対象とならない場合でも、会員の生前にポイントを使用し商品に換えておけば、その商品は相続の対象となります。多額のポイントがあるような場合は、生前に商品に換えておくと良いでしょう。

ポイントが相続の対象となる場合は、遺言書において誰が相続するのか記載しておくのがよろしいでしょう。

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