17353.jpg
交通費不正受給、京都に転居したのに、奈良から通勤と14年間ウソ…法的問題は?
2023年03月06日 10時07分

京都大学は2月22日、通勤手当を不正に受給し続けた大学院理学研究科の男性准教授(50代)を停職4カ月の懲戒処分にしたとホームページ上で発表した。

准教授は、2003年12月に奈良県内から京都市内に転居したにもかかわらず、奈良県内から通勤しているように装い、2004年1月から2018年9月まで総額約906万円を不正に受給していたという。大学側は、就業規則に掲げた禁止事項にあたるとして処分をおこなった。

一般論として、通勤手当を不正に受給した場合、どのような法的問題があるのだろうか。

京都大学は2月22日、通勤手当を不正に受給し続けた大学院理学研究科の男性准教授(50代)を停職4カ月の懲戒処分にしたとホームページ上で発表した。

准教授は、2003年12月に奈良県内から京都市内に転居したにもかかわらず、奈良県内から通勤しているように装い、2004年1月から2018年9月まで総額約906万円を不正に受給していたという。大学側は、就業規則に掲げた禁止事項にあたるとして処分をおこなった。

一般論として、通勤手当を不正に受給した場合、どのような法的問題があるのだろうか。

●通勤手当の不正受給「詐欺罪に問われる可能性も」

徳田隆裕弁護士は「通勤手当の不正受給は、懲戒処分の対象になることがある」と語る。企業秩序を乱すおそれがあるためだ。ただし、懲戒解雇については、次のような事情を考慮して、無効になることもあるという。

(1)不正受給の金額の大きさ(会社に与えた損害額)
(2)不正受給していた期間の長さ
(3)不正受給について、労働者がわざとしていたのか、会社に報告するのを忘れていただけか
(4)会社が通勤手当の支給について、厳格に管理・運用していたのか
(5)労働者の過去の懲戒処分歴
(6)反省の態度を示しているか(不正受給した金額の返金を申し出ているか)

「たとえば、(1)不正受給の金額が小さく、(2)不正受給の期間が短く、(3)労働者が通勤について会社に報告するのを忘れていただけであり、(4)会社が通勤手当の支給について、厳格に管理・運用しておらず、(5)労働者に懲戒処分歴がなく、(6)労働者が不正受給について、反省している場合には、通勤手当の不正受給を理由とする懲戒解雇は、懲戒処分として重すぎるとして、無効になる場合があります」

転居後にうっかり会社に伝えるのを忘れていたとしても、会社が転居先の報告を求めていたり、不正受給の金額が大きかったりするなどの事情があれば、懲戒解雇される可能性があるということだ。

さらに、徳田弁護士は、通勤手当の不正受給は「刑法の詐欺罪に問われる可能性もある」と指摘する。わざと不正に受給し続ければ、犯罪にあたりうるため、注意が必要だ。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る