ママ友とトラブルになった際、相手の夫から「警察行こうか、コラ」と言われた、脅しではないのか?ーーそんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
どのような文脈での発言かは不明ですが、相談者は「怖かったです」と振り返ります。確かに「警察に行こうか」と言われたら、人によっては驚いてしまうかもしれません。また、「コラ」という言葉は威圧的であるようにも思えます。
暴力をほのめかしたり、害を与えたりするようなニュアンスには当たらないかもしれませんが、相談者の言う通り、脅迫になる可能性はあるのでしょうか。
●「警察に行く」という適法な行為も脅迫になり得る?
まず、「警察行こうか、コラ」という発言が、脅迫罪(刑法第222条)にあたるかが問題となります。
脅迫罪は、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」に成立する犯罪で、法定刑は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。ここでいう「脅迫」とは、「害悪の告知」を意味します。
「警察に行く」という行為は、本来、犯罪の捜査を開始するきっかけとなる適法な行為です。しかし、適法な行為であっても、その行為が社会通念上相当ではない態様でなされた場合には、「害悪の告知」として脅迫罪の成立要件を満たす可能性があります。
今回のケースでは、単に「警察に相談します」と伝えるだけでなく、「コラ」という威圧的な言葉遣いが伴っています。この「コラ」という表現は、相手に恐怖心を抱かせるための威嚇(いかく)的な言葉であり、適法な警察への相談の意思表示を超え、相手に義務のないことを行わせたり、恐怖によって委縮させたりする目的があったと評価される可能性があります。
もちろん、「コラ」をつけただけで直ちに脅迫になるわけではありませんが、その時の状況(トラブルの経緯、相手の態度、発言の口調など)次第で、脅迫罪の「害悪の告知」に当たると判断される可能性があります。
●場合によっては強要罪や恐喝罪となる可能性も
さらに、今回の発言が単なる威嚇で終わらず、特定の目的を達成するための手段として用いられた場合には、強要罪や恐喝罪に問われる可能性も出てきます。
1)強要罪にあたるケース(刑法第223条) 脅迫を用いて、「人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者」は強要罪に問われます。法定刑は3年以下の拘禁刑です。
例えば、「警察行こうか、コラ」と言って、相談者に対し、土下座して謝罪しろなどの法的な義務のないことを強制した場合には、強要罪が成立する可能性があります。
2)恐喝罪にあたるケース(刑法第249条) 脅迫を用いて、財物を交付させた場合(例:慰謝料名目で金銭を要求し、支払わせたなど)には、恐喝罪(法定刑は10年以下の拘禁刑)にあたる可能性があります。
このように、ママ友の夫の発言は、その発言が単体で脅迫罪となるだけでなく、その後の行動と結びつくことで、より重い強要罪や恐喝罪となる可能性も考えられます。
●相談者はどうすれば良い?
威圧的な言動を受け、不安を感じている場合、以下のような対応策が考えられます。
発言の記録と証拠の収集: いつ、どこで、誰に、どのような発言をされたか(「警察行こうか、コラ」という発言を含む)を日時や状況を詳しくメモに記録します。可能であれば、発言時の録音も有力な証拠となります。
第三者への相談: 身の危険を感じる場合、すぐに警察(110番)または警察相談窓口(#9110)に相談し、トラブルの状況を伝えます。また、居住地の自治体にある法律相談窓口を利用することも一般的です。
弁護士への相談: 弁護士に相談することで、収集した証拠に基づいて、今回の発言が法的にどのような罪にあたるのか、また、相手方に対してどのような法的措置(内容証明郵便による警告、接近禁止の要求など)を取ることができるかを具体的に判断・検討してもらえます。
感情的なトラブルであっても、威圧的な言動は法的な問題を引き起こすリスクがあります。 正しいと思ってやったことがかえって犯罪と評価され、逮捕や起訴されてしまうこともあることに注意しましょう。