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優秀な若手官僚がメモ打ち要員で疲弊…「寝てない自慢やめない?」ママ官僚が憂う残業過多
2018年09月16日 09時54分

「官僚」とひと口に言っても、事務系・技術系など役回りは多種多様。なかでも、来年度予算の概算要求や秋の臨時国会に提出する法案を抱える部隊は、特に忙しい夏を過ごした。

政府は「働き方改革」を掲げ、長時間労働が常態化する官僚たちの働き方にも問題意識を持っているが、現場で働く官僚は多忙な日々をどう乗り越え、業務に臨んでいるのか。

今回取り上げる官僚は、ある経済官庁に入省し10年以上が経った現役の女性官僚で、課長補佐級。政策や法令の企画立案を下支えする、欠かせない立場だ。この官僚をもって、全体を語ったり、官僚が悪だとか民間企業より偉いとか指摘するつもりはない。ただ、ひとりの官僚が抱える問題意識に触れてほしい。

「官僚」とひと口に言っても、事務系・技術系など役回りは多種多様。なかでも、来年度予算の概算要求や秋の臨時国会に提出する法案を抱える部隊は、特に忙しい夏を過ごした。

政府は「働き方改革」を掲げ、長時間労働が常態化する官僚たちの働き方にも問題意識を持っているが、現場で働く官僚は多忙な日々をどう乗り越え、業務に臨んでいるのか。

今回取り上げる官僚は、ある経済官庁に入省し10年以上が経った現役の女性官僚で、課長補佐級。政策や法令の企画立案を下支えする、欠かせない立場だ。この官僚をもって、全体を語ったり、官僚が悪だとか民間企業より偉いとか指摘するつもりはない。ただ、ひとりの官僚が抱える問題意識に触れてほしい。

●「激詰め」と「ちゃぶ台返し」が業務量を何倍にも

ーー「働き方改革」は浸透していますか

「10年以上前の入った頃に比べればマシですが、旧態依然とした働き方は続いていて、どうにかならないものかと思っています。夏休みは、何とか3日間取りました。平日は終電帰りとタクシー帰りばかり。そうそう、昨日もタクシー帰りでしたね。平日は朝の出勤前にしか子どもと話せません」

ーーどんなところが旧態依然としているのでしょうか

「まず、国会や官邸が絡む話は、こちら側がどうこう言って調整できる話ではないので、他律的業務として割り切っています。省庁同士とか省内で基本的に完結する話では、仕事の進め方を工夫したり、上の人間が早く帰るよう呼びかけたりすれば、だいぶ変わるはずなのですが、そこがほとんどできていないですね」

ーー残業するのが当たり前だということですか

「はい。残業ありきで、みんな仕事をしています。あるテーマがあって、部下が上司に説明して承認をとる。『クリアをとる』という言い方をしますが、その際、上司によっては、とにかく100%と言えるレベルまで詰めて、さらに次の上司へと説明させようとします。

当然、上司のスタンスによっては、テーマの立て方や資料の作り方は変わりえます。激しく詰められて、ようやくクリアをした先に別の偉い上司が変更を命じることがあるわけです。そんな『ちゃぶ台返し』があると、その部下の業務量は何倍にもなってしまいます。

最初から、8割くらいの詰め方で上司のクリアを取っていけば、まだ方針転換する際も楽なのですが。最後の2割を詰めて論点を網羅的に洗い出していく作業が大変なんです。何にしても『詰めて、詰めて、その先をしぼり出せ』というようなマインドが多くの人にあるのが残念です」

●若手職員、忙しすぎて「政策考える時間なし」

ーー会議や資料作成の業務で合理化できそうな要素があれば教えてください

「何かと多くの人を集めて、何時間も打ち合わせをするのは無駄だと思います。特に、幹部の前で発言しにくい係員や係長といった若手を参加させても、単にメモ打ち要員になってしまうだけで、彼らがさばくべき大量の事務作業がストップしてしまいます。議題に関係の薄い人たちでも、「念のため」に召集したりします。

不必要に人を集めず、真に必要な担当者だけ呼んで打ち合わせをする。その間、係員や係長が本来する事務作業をすることができれば、係員や係長の業務負担が減り、彼らは有意義に時間を使えるはずです。全体的に、『〇〇時までに仕事を終わらせる』というような、時間に対する意識が低いんですよね。

それから、アナログな事務作業が実はすごく多い。一定の作業は、ソフトウェアを使って効率化すれば、残業短縮につながると思います」

ーー日常的に政策を考える余裕は若手にはないのが実態でしょうか

「多くの人にとってはそうだと思います。特に、若手のうちは大量の資料作成と事務作業を次々にこなさなければいけないので、落ち着いて政策について考える時間はほとんどありません。

国を良くしたいというモチベーションで、試験と面接を突破してきた優秀な若者たちが、頭脳を入省後数年間は十分使い切れないというのは不合理だし、もったいないと感じます。すぐに改善すべきです」

ーー課題だと認識されていても、昔から厳しい勤務実態は抜本的に変わらないように見えます

「そこは本当に残念です。しかも、みんなとは言いませんが、『俺、寝てないんだよね』とか忙しい自慢がまだ依然として残っています。

いま上司でいる人たちは、もっとひどい長時間労働を強いられていたので、逆に労働時間に対する意識が低い方もいます。やりがいがある仕事だとは思いますが、早く直さないと、いずれ就職先として選ばれなくなってしまうのではないかと心配です」

●暗くなってから気合入る上司も

ーー上司も早く帰ってプライベートな時間を増やそうという気にはならないのでしょうか

「そこは上司によりけりですが、暗くなってから気合が入るという上司は少なくないですよね。コンビニで夕食を買ってきて、デスクで食べて、『さぁここから!』という感じです。全体を見たわけではないですが、印象としては、『子育ては家にいる奥さんがやり、旦那である僕は遅くまで働きます』というタイプが多いのではないでしょうか」

ーー子育てとの両立はしにくいでしょうか

「いまは実家の支援を得ながら子どもを育てています。ありがたいことに、両親ともに元気なので助かっていますが、将来、たとえば親の介護の必要性が生じたりして子どもの面倒を見てもらえなくなったら、いま絶妙なバランスの上に成り立っている生活が崩れてしまいそうで心配です」

ーー今後、課長級以上になるとして、働き方に不安を感じることはありませんか

「普通に考えれば、キャリアアップの過程で、今よりもさらに忙しいポストを経験するのだろうと思います。なので、その時が近づいてきたらもっと深刻に悩むことになりそうです。定時帰りができるポストにしてもらうこともできますが、そうしたポストだけだと経験が限られてしまい、後々のキャリアアップに響く不安もあります」

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)

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