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悪質ホスト問題「カルト宗教と同じ手法」「自己責任の範疇を超えている」 親の支援団体が海外メディアに訴え
2023年12月19日 17時23分
#悪質ホスト

女性に高額な売掛(借金)を背負わせる「悪質ホスト」が社会問題となる中、被害者の支援団体が12月19日、東京・丸の内の外国特派員協会で記者会見を開いた。

ホストクラブという営業形態は、日本独自に発展したとされる。集まった記者からは「男性でも同じことが起きているのか」「自己責任という考え方については」「成人年齢の18歳への引き下げが関連しているのか」などの質問が出た。(ジャーナリスト・富岡悠希)

女性に高額な売掛(借金)を背負わせる「悪質ホスト」が社会問題となる中、被害者の支援団体が12月19日、東京・丸の内の外国特派員協会で記者会見を開いた。

ホストクラブという営業形態は、日本独自に発展したとされる。集まった記者からは「男性でも同じことが起きているのか」「自己責任という考え方については」「成人年齢の18歳への引き下げが関連しているのか」などの質問が出た。(ジャーナリスト・富岡悠希)

●「コロナ禍明けに相談が急増した」

新宿・歌舞伎町を拠点に親らを支援している一般社団法人「青少年を守る父母の連絡協議会」(略称:青母連/せいぼれん)代表の玄秀盛さんと、事務局長の田中芳秀さんが登壇した。

冒頭、田中さんが経緯と現況を説明。「事務所がある歌舞伎町の目の前の大久保公園は、売春地帯。コロナ禍明けに、若い女性が急激に増えた」「それと並行して、『娘がホストにはまっている。どうすればいいだろう』という相談が急激に増えた」などと話した。

続いて玄さんが、ホストクラブの営業形態や被害女性の状況などを語った。

ホストは「恋愛詐欺商法を使い、『この娘ならあそこに売れる』『このぐらいまで稼げそう』という想定まで立てて、国内や海外の風俗へ行かせている」と指摘。「女性たちをマインドコントロールしている。カルト宗教の霊感商法とまったく同じ手法だ」と厳しい口調で訴えた。

画像タイトル 記者会見の冒頭で報告する田中さん(左/2023月12月19日/富岡悠希撮影)

●ホストは「心の中に入り込んでいる」

オンラインで寄せられた質問を含め、参加した記者からは、1時間の会見時間ギリギリまで質問が出た。

「男性でも同じことが起きているのか」という質問に対して、玄さんは「男性でそういう(体を売る)ふうにホステスにはまったという話はない」。「金がある男性が銀座とかの夜の社交場に行くが、歌舞伎町のホストには金のない(女の)子が誘われる。それで体でもって、2、3千万円の代償を払う」と回答した。

「自己責任論」に関する見解を聞かれた際には、玄さんは「まったく自己責任の範疇を超えている」と明言。「心の中に入り込んでいるから、家族がいかに説き伏せようが、(ホストから逃れることが)不可能になっている」と問題解決の難しさを説明した。

成人年齢の18歳への引き下げとの関連についても、「その通り」だとし、次のように警鐘を鳴らした。

「ペテン師のように口がうまく、格好良いホストが、『運命の出逢い』『アイ・ラブ・ユー』と耳元でささやいたら、(男性経験の少ない若年女性は)一気に落ちる」

画像タイトル 記者会見ではフランス人記者(右端)が司会を務めた(2023月12月19日/富岡悠希撮影)

●フランス人記者「日本は治安が良いが・・・」

記者会見後、司会をつとめたフランス人記者の西村カリンさんに感想を聞いた。

「思ったよりも深刻な問題。ホストにハマっている状況が、カルトみたいだともわかった」とした西村さんは「もっともっと取材したい」として、仏紙への執筆意欲を語った。

また「フランスの場合は、ここは危ない、治安が悪いというのは目の前にあるのでわかる」一方、「日本は治安が良いが、裏側で見えない汚いことが起きている」と分析。その分、「女性たちが簡単に巻き込まれてしまう」との見方を示した。

●ホストクラブの自主ルールができようとしている

批判を受けている歌舞伎町のホストクラブの代表者らは今月5日と13日、新宿区役所で吉住健一区長らと会見。同町のホストクラブ約300軒のうち9割ほどが参加見込みの業界団体を来年4月をめどに正式に立ち上げるとした。売掛の仕組みそのものを、同時期までになくす方針も示した。

また来年1月以降、18、19歳の新規入店を禁止。「匿名・流動型犯罪グループ」(トクリュウ)との関係を断絶すると誓った。

こうしたホストクラブの自主ルールについて、吉住区長は「想定よりも厳しい」と一定の評価を示すが、実効性の担保について指摘する報道も出ている。

(2025年5月19日追記) 田中芳秀氏は、コカインを所持したとして麻薬取締法違反の疑いで警視庁に逮捕されたと2025年5月19日に報じられました。

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