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元受刑者が語る陰部検査、全裸「カンカン踊り」の屈辱…下半身「壮絶イジメ」にトラウマ
2021年02月10日 09時51分

受刑者を全裸にさせる身体検査のほか、定期的に陰部を調べる検査をおこなっているーー。大阪刑務所の受刑者が2018年に人権救済を申し立てたが、大阪だけでなく、全国の刑務所でかつてこうした検査が行われていたようだ。

受刑者や出所者の支援をおこなうNPOマザーハウス理事長の五十嵐弘志さんによれば、身体検査が「つらかった」という相談が寄せられたこともあるそうだ。

刑務所出所後にマザーハウスにつながり、実際に全裸検査や陰部検査などを受けたことがあるという男性たちに話を聞くことができた。

受刑者を全裸にさせる身体検査のほか、定期的に陰部を調べる検査をおこなっているーー。大阪刑務所の受刑者が2018年に人権救済を申し立てたが、大阪だけでなく、全国の刑務所でかつてこうした検査が行われていたようだ。

受刑者や出所者の支援をおこなうNPOマザーハウス理事長の五十嵐弘志さんによれば、身体検査が「つらかった」という相談が寄せられたこともあるそうだ。

刑務所出所後にマザーハウスにつながり、実際に全裸検査や陰部検査などを受けたことがあるという男性たちに話を聞くことができた。

●全裸検査の実態、通称「カンカン踊り」

2006年に旧監獄法が「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」に改正されてからは、全裸での検査ではなく、徐々にパンツを着用しての検査がおこなわれるようになっていったという。

実際に全裸検査を受けたことがあるという男性2人によると、検査は、全裸のまま両手をあげ、足も片方ずつあげながら、口を開けて舌を出すというものだったそうだ。この検査は「カンカン踊り」とよばれており、身体に危険物を持っていないかを確認するためにおこなわれていた。現在の法律が施行された後の2011年ごろに全裸検査を受けたという人もいた。

全国にある複数の刑務所で服役し、実際に検査を受けたミヤハラさん(仮名・40代)は「やらないと懲罰の対象になるので、仕方なくやっていました」と語った。

ただ、中には禁止されている物品を持ち込むなど、ルールを守れない人がいるのも事実のようだ。実際に、ナカムラさん(仮名・50代)が4年ほど前に服役していた刑務所では、禁止されているにもかかわらず、勝手に洗剤を持ち込み、自分の分だけ洗濯をした人たちがいたという。

ナカムラさんは「そのときは刑務官に、全員『もう1回全裸検査するぞ』と言われました。やる人がいるんですよね、だからこういう検査があるのかなと」。

大阪刑務所では、少なくとも2016年9月27日までは、工場作業をするすべての受刑者を対象に、作業の前後、更衣室に複数の受刑者を全裸で並ばせ、全裸のままミラーカーペットと呼ばれる鏡の絨毯のようなものの上を歩きわたらせるという態様の身体検査がおこなわれていたとされる。

●陰部検査「イヤでした」、「仕方ない」と割り切る人も

陰部検査は「玉入れ検査」ともよばれ、陰部に異物を挿入しているかどうかを確認するためにおこなわれている。実際に、受刑中に自分で「玉入れ」をおこなう人もいるという。歯ブラシなどの先端を何度もこすって球体にした玉を陰部に入れるのだそうだ。

もちろん、全員が「玉入れ」をおこなっているわけではない。そのため、一律に検査することに疑問を抱く人もいる。実際に、検査を受けて屈辱を感じたり、不快な思いをしたりした人たちもいる。

マザーハウス理事長の五十嵐弘志さんは、自身にも3回の服役経験があり、約20年を刑務所の中で過ごした。

「職員の前で表裏全部見せるのはイヤでしたよ。本当に必要なのかと疑問に思いました。若い女性が刑務所に視察に来たときに検査したこともありましたが、そのときは、なんのためにやるのかと思いましたね。X線検査などほかの方法も考えられるのではと思います」(五十嵐さん)

ほかにも、「仲のいい担当が(検査に)きた時はイヤだった」「『出せ』みたいに言われると恥ずかしい」などの声も上がった。

一方で、「仕方ない」と割り切っている人もいた。2017年前後に服役していたというアオキさん(仮名・50代)は「そういう決まりだと受け入れてやらざるを得なかったので、特に何も感じませんでした」と淡々と話した。

また、キクチさん(仮名・40代)は「自分で(玉を)入れる人もいますが、中には、無理やり他の人の陰部に玉を入れる人もいるんです。エグいイジメもあるんですよ」と語った。マザーハウスにつながった人の中には、実際に、受刑中に他の受刑者から玉を入れられるなどのイジメを受けた人がいたという。2010年前後のことだそうだ。

●女性からも「検査がつらかった」との声

身体検査に限らず、屈辱的な思いをしたという人もいる。2016年ごろに服役していたというオガワさん(仮名・30代)は、痔になってしまったときの体験について、次のように語った。

「なんの断りもなく、いきなり指を入れられたんです。思わず『わぁ、痛い!』と悲鳴を上げてしまい、僕の声は廊下まで響いていたようです。ほかの部屋の人たちにも聞こえたと思います。とてもイヤでしたね」

不快な思いをしているのは、男性受刑者だけではない。

マザーハウス には、2019年に女子刑務所を出所した女性から「検査がつらかった」という内容の相談がきたこともあるという。この女性がいた刑務所では、膣の中に異物が入っていないかを確認するための検査があり、足元に鏡が置かれた状態でおこなわれていたそうだ。

刑務所内で何が起きているのかは外からは分からない。ただ、検査によって屈辱的な思いをしている人たちがいるのは事実だ。

大阪刑務所の受刑者が2018年に人権救済を申し立てた事件について、日本弁護士連合会(日弁連:荒中会長)は1月、定期的に陰部を目視する身体検査などをおこなうことは「受刑者の人格権を侵害し、個人の尊厳を損なう」などとして、一律に検査をおこなわないよう求める勧告書を公表した。勧告は1月5日付。

日弁連が1月6日に開いた会見で、川上詩朗弁護士(日弁連人権擁護委員会委員長)は「他のところでも同種のことがおこなわれているかもしれない」と語っている。大阪刑務所と同じようなことが刑務所内で今でも起きている可能性は否定できない。

日弁連は弁護士ドットコムの取材に対し、「今後も改善課題として引き続き調査をおこなっていく予定」としている。

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