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性暴力被害者のPTSD、早期の治療で「その先の人生を変えられる」小西聖子教授
2019年07月06日 08時53分

犯罪に巻き込まれた被害者をどう支援すべきか。被害者を支援するために、さまざまな法制度が整備されてきた。2008年には重大事件の被害者が被害者参加人として刑事裁判に参加する「被害者参加制度」が始まった。

一方で、こうした被害者支援の対象から外れてしまう人たちがいる。

長年、臨床の現場で犯罪被害者の支援をおこなってきた武蔵野大学の小西聖子教授(精神科医・臨床心理士)は、犯罪被害者支援の枠組みから抜け落ちた「見えない被害者」の存在を指摘する。

犯罪に巻き込まれた被害者をどう支援すべきか。被害者を支援するために、さまざまな法制度が整備されてきた。2008年には重大事件の被害者が被害者参加人として刑事裁判に参加する「被害者参加制度」が始まった。

一方で、こうした被害者支援の対象から外れてしまう人たちがいる。

長年、臨床の現場で犯罪被害者の支援をおこなってきた武蔵野大学の小西聖子教授(精神科医・臨床心理士)は、犯罪被害者支援の枠組みから抜け落ちた「見えない被害者」の存在を指摘する。

●被害者支援のレールに乗り切れない人たち

6月22日に開かれた日本被害者学会の第30回学術大会で講演した小西教授は、「見えない被害者」に陥る2つの典型事例をあげた。

まず一つは、被疑者が自殺などで死亡した事件の遺族だ。5月28日に発生した川崎・登戸で登校途中の児童など計19人が刺された事件でも、被疑者の男性が事件直後に自殺した。

被疑者が死亡した場合には、刑事裁判にかけるための要件がなくなってしまうため、最終的に被疑者死亡により不起訴処分となる。「どうして家族が死ななければならなかったか」。こうした疑問の答えは見つからず、遺族の中には自責感にさいなまれる人も多いという。

「心理的に見ると、被疑者が死亡することは回復を阻害する要因です。被害者参加人にもなれず、被害者としての権利行使の可能性が狭まる。こうした被害者が密かに支援のはざまに落ちていることが見えていない」

もう一つは、性暴力被害者のケースだ。被害にあったことを言えない、被害にあったことを言わない、自分で被害と気づかないーー。時には警察など捜査機関から「受け付けられない」ケースもあり、被害者支援のレールに乗り切れない多くの人がいる。

小西教授は「最初のラインに乗ってもらうには、まず誰かには話してもらわなければいけない」と話すが、そこには大きなハードルがある。一方で、こうした実態に変化も見えつつあるという。

2018年4月〜19年3月に性暴力救援センター「SARC東京」のホットラインに寄せられた子ども197人の性暴力の相談のうち、19歳以下の男性の性被害は17件、うち、被害者本人が相談したケースは9件あった。強制性交等にあたるものは7件だった。

小西教授は「若い人が本人が相談すること自体とても珍しい。SARCのスタッフいわく、若い男性からの相談は今までほとんどなかったことだそうです」と話した。

●「10代で支援できれば、その先の人生が変えられるかもしれない」

また、被害によっては、長期的にPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされる人もいる。小西教授は「PTSDになる率が高い被害体験は、刑事犯罪の重い軽いとは違う」と指摘する。

中でも性暴力被害は、PTSDになる確率が高い。小西教授が診断したケースでは、性暴力被害者68人のうち約6割に当たる41人がPTSDと診断された。さらに、急性ストレス障害などPTSDと近縁の診断も加えると、8割近くが、PTSDの症状を持っているという。

一方で、「私にとってはPTSD治療は手応えがあり、精神科としては珍しくはっきり治るもの」とも言う。PTSDと診断された41人のうち、治療によって三分の一の被害者は症状がなくなる程度まで改善し、あとの三分の一の被害者は症状が軽快したそうだ。

「性暴力被害はPTSDともっとも深い関連をもつ。全国どこでも有効な治療が受けられると、被害者の治療のあり方は変わると思う。(被害にあって間もない)若い人に介入するのは臨床的には難しいですが、効果が高い。10代のうちに支援できれば、その先の人生が変えられるかもしれない」

加えて、犯罪被害者を支援するしくみは「司法だけでも、医療だけでもなく、総合的な支援が必要」と言い、地域レベルで総合的な支援が必要だと訴えた。

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