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「松ちゃんファイナンス」後輩芸人に100万円無利子で貸付、貸金業にあたる?
2020年05月07日 10時19分

ダウンタウンの松本人志さんが、新型コロナウイルスの影響で困窮する後輩芸人に対し、1人上限100万円を無利子無担保で貸し付けると報道されました。

スポニチアネックス(5月4日)によると、松本さんは後輩芸人にメールで呼びかけ。返済期間5年間でお金を貸すといい、貸し付けは1000人ほどまで広がる可能性もあるといいます。

ネットでは「私人なのに行動してる時点で凄い」、「後輩思いに感動」と思い切った行動に賛美の声が寄せられる一方、「貸金業とかにはあたらんの?」という声もあります。

果たして今回の松本さんの行動は、貸金業登録が必要なのでしょうか。髙橋裕樹弁護士に聞きました。

ダウンタウンの松本人志さんが、新型コロナウイルスの影響で困窮する後輩芸人に対し、1人上限100万円を無利子無担保で貸し付けると報道されました。

スポニチアネックス(5月4日)によると、松本さんは後輩芸人にメールで呼びかけ。返済期間5年間でお金を貸すといい、貸し付けは1000人ほどまで広がる可能性もあるといいます。

ネットでは「私人なのに行動してる時点で凄い」、「後輩思いに感動」と思い切った行動に賛美の声が寄せられる一方、「貸金業とかにはあたらんの?」という声もあります。

果たして今回の松本さんの行動は、貸金業登録が必要なのでしょうか。髙橋裕樹弁護士に聞きました。

●やり方を工夫しないと「貸金業法違反」の可能性も

ーー松本さんの行動に、「太っ腹」「感動した」と感嘆の声が上がっています

国民皆が自粛生活を送っている中、芸人のみなさんが届ける笑いで本当に多くの方々が救われているのではないかと思います。そして、劇場の閉鎖やテレビ番組ロケ等の激減によって、困窮している後輩芸人を救うために、松本さんが善意で金銭支援をしようとされていることも、本当に素晴らしいと思います。

ですので松本さんの支援のお気持ちを、是非とも後輩芸人のみなさんに届けてもらいたいと思います。

しかし、今回の「松ちゃんファイナンス」に関しては、少しやり方を工夫していただかないと「貸金業法違反」という味噌をつける事態になってしまうかもしれません。

ーー何故なのでしょうか?

まずヤミ金排除、貸金総量規制(過剰貸付禁止)、金利の適正化といった借主保護等の観点から、貸金業法は「貸金業」を登録制にしています(貸金業法3条)。

そして、個人間融資であっても、無登録で「貸金業」を営んでしまうと、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金となってしまいます(同法47条2)。

ーー知り合いの後輩芸人に無利息無担保で善意で貸すだけなのに、「貸金業」となるのですか

「貸金業」とは金銭の貸付けを「業として」行うものをいいます。

「業として」というのは、反復継続の意思をもって貸金をすればよく、必ずしも貸付相手が不特定多数である必要はありませんし、必ずしも報酬または利益を得る意思もしくはこれを得た事実は必要ないと解されています。(最高裁昭和28年2月3日、最高裁昭和29年11月24日、最高裁昭和30年7月22日)

つまり、反復継続の意思をもって、要は複数回・複数人に対してお金を貸す意思で貸付をすれば、善意で限られた範囲の人にお金を貸したのだとしても、「業として」お金を貸付けたとされてしまう可能性があります。

ーー1回限りであっても「業として」と判断されるのでしょうか

たとえ、それぞれに対しては1回限りの貸付だとしても、複数の後輩芸人さんに貸付を行う以上、繰り返し貸付を行ったということにもなってしまうでしょう。

なお先程の最高裁の判決の中には、人助けのためにお金を貸しただけなのに有罪判決を受けてしまった件も含まれています。

ですので、今回松本さんが営利目的なく、無利息無担保で後輩芸人1人につき1回きり貸付けるのだとしても無登録営業として貸金業法違反だと判断されてしまうリスクがあるのです。

新型コロナウィルス蔓延による窮状を救う目的で行われる貸付ですので、実際警察が動く可能性は低いように思いますが、松本さん自身が後輩芸人のみなさんに直接貸付けるかたちは無登録営業と指摘されるリスクがあります。ですので、松本さんの善意をかたちにする工夫が必要です。

例えば、松本さんが吉本興業の関連会社である「吉本ファイナンス」や貸金業登録をしているお知り合いの方に出資をして、貸金業者から無利息で緊急融資を行うかたちは一つの手だと思います。

また、本当に困窮している後輩芸人の方にだけ、100万円を贈与する(110万円以下の贈与は贈与税非課税)などの方法をご検討いただけたらと思います。

松本さんの善意が後輩芸人のみなさんに届くことを切に望みます。

●金融庁の見解は

金融庁に貸金業登録について尋ねたところ、一般論とした上で、以下の回答があった。

「金銭の貸付または貸借の媒介をを業として行う場合は貸金業に当たる。このうち業として行うというのは、『反復継続し、社会通念上事業の遂行とみることができる程度のもの』と解されている。

反復継続しているかはどうかは、実態に即して判断される。さらに、反復継続した行為が、社会通念上事業の遂行とみることができる程度のものかどうかについては、行為の主体に即して具体的に判断していくことになる」

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