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シャープも画策した「中小企業」の税制優遇基準「資本金1億円以下」なぜ見直すのか?
2015年06月28日 10時26分

税制優遇の対象となる中小企業の基準について、政府が見直しの検討に入ることが、日本経済新聞で報じられた。現状では、「資本金1億円以下」の企業が軽減税率などの対象になっている。だが、資本金1億円以下でも、売上高が非常に大きいケースもあり、新たな基準を検討する。

記憶に新しいのは、経営危機にあえぐシャープが、約1200億円の資本金を「1億円」に減資することを検討していると報じられたケースだ。結局は批判が集まったため、5億円の減資にとどまった。

そんななか、中小企業の判断基準の見直しでは、資本金に比べて操作しにくい「売上高」や「所得」を新たな指標にする案が出ているという。これまでは中小企業かどうか区別するのに「資本金」を基準にしてきたが、それはなぜだろうか。なぜ、見直すことになったのだろうか。大和弘幸弁護士に聞いた。

税制優遇の対象となる中小企業の基準について、政府が見直しの検討に入ることが、日本経済新聞で報じられた。現状では、「資本金1億円以下」の企業が軽減税率などの対象になっている。だが、資本金1億円以下でも、売上高が非常に大きいケースもあり、新たな基準を検討する。

記憶に新しいのは、経営危機にあえぐシャープが、約1200億円の資本金を「1億円」に減資することを検討していると報じられたケースだ。結局は批判が集まったため、5億円の減資にとどまった。

そんななか、中小企業の判断基準の見直しでは、資本金に比べて操作しにくい「売上高」や「所得」を新たな指標にする案が出ているという。これまでは中小企業かどうか区別するのに「資本金」を基準にしてきたが、それはなぜだろうか。なぜ、見直すことになったのだろうか。大和弘幸弁護士に聞いた。

●シャープのせいというわけではない

「資本金1億円以下の中小企業については、軽減税率や中小企業投資促進税制などが適用されるほか、欠損金繰越控除や繰戻還付、法人事業税の外形標準課税の適用除外など、多くの制度で大企業と異なる措置が認められています」

なぜ、資本金で区別することになったのだろうか。

「法人税に軽減税率を適用する対象が資本金1億円以下の法人に限られるようになったのは、昭和41年3月の法人税法改正からです。このとき以降、税制が関係する中小企業の定義として、資本金1億円基準が多く用いられることになったと推測されます。

資本金というのは、画一的、一義的に把握できるので、基準として明確であると考えられたのではないでしょうか」

では、なぜ、シャープのように資本金を減らそうとすると批判が出るのだろうか。

「資本金は、会社の設立や増資の際に、株主が会社に払い込んだ金額のことですが、株主の払込金全額を資本金に計上する必要はありません。また、会社の業績がいかに良くても、増資などをしない限り資本金の額は増えません。逆に、一定の手続をとれば、資本金の額を減少することもできます。

つまり、資本金の額は、会社の業績等と直接連動せず、変動も少ないため、これを中小企業の定義に用いることは望ましくないのではないかということで、批判が出ているのでしょう。

今回、シャープの事例が注目されましたが、以前からも問題点は指摘されていたところですので、今回の基準の見直しは、決してシャープのせいというわけではありません」

●売上高や従業員数が基準になる可能性も

以前は、どのような議論になっていたのだろうか。

「たとえば、2010年の決算検査報告において、会計検査院は、『大企業の平均所得金額を超えるなど多額の所得を得ていて財務状況がぜい弱とは認められない中小企業者が、中小企業者に適用される租税特別措置の適用を受けている事態が見受けられた』と指摘しています。

与党の2015年度税制改正大綱でも、『中小法人の実態は、大法人並みの多額の所得を得ている法人から個人事業主に近い法人まで区々であることから、そうした実態を丁寧に検証しつつ、資本金1億円以下を中小法人として一律に扱い、同一の制度を適用していることの妥当性について、検討を行う』と指摘しています。

今後の基準が、これまでの資本金基準に替わるものなのか、新たな基準を追加するものなのか、どのような基準が採用されるかは、今後議論されると思いますが、報道されているような『売上高』、あるいは『従業員数』などが考慮されるかもしれません。

2016年度の税制改正では、基準の改正が盛り込まれる可能性がありますので、その動向を注目しておいたほうがいいでしょう」

大和弁護士はこのように話していた。

【取材協力弁護士】

大和 弘幸(やまと・ひろゆき)弁護士

やまと法律会計事務所 所長

事務所名:やまと法律会計事務所

事務所URL:http://yamato-law-accounting.com

(弁護士ドットコムニュース)

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