裁判員裁判で、亡くなった被害者の遺体や傷などの写真といった「刺激証拠」が、裁判員の心理的負担を軽減するためにイラストに置き換えられる運用が広がっている。
こうした裁判のあり方に問題があるとして、この運用に反対する弁護士や医師らが11月15日、東京都内でシンポジウムを開く。
●「ちゃんとした証拠を見たかった」
主催するのは、犯罪被害者支援弁護士フォーラム(VSフォーラム)と、解剖を担当する医師らが所属する日本法医病理学会。
VSフォーラムの上谷さくら弁護士は、多くの裁判員裁判で「裁判員の心理的負担」を理由に、傷跡や血溜まりなどの写真がイラスト化されてきたと指摘する。
イラスト化された裁判を経験した裁判員や被害者遺族から「ちゃんとした証拠を見たかった」「現実を見ていない」といった意見が寄せられているという。
「背景には、裁判官による裁判員への過剰すぎる配慮があると考える。"接待"に近いものになっているとすら感じている」(上谷弁護士)
●「ある意味で証拠の改ざんに近い」
10月8日にVSフォーラムが開いた記者会見で、日本法医理学会の近藤稔和理事長(医師)も「科学的な証拠のイラスト化は、ある意味で証拠の改ざんに近い」と懸念を示した。
主催団体は、こうした運用が事実認定や量刑に疑問を抱かせ、被害者側だけでなく、罪に問われる被告人にとっても不利益を生じる可能性があるとしている。
シンポジウムは11月15日午後1時から、東京都港区のドイツ文化会館で開催予定。実際に裁判員裁判を経験した被害者遺族や元検察官による講演、ディスカッションがおこなわれる。