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早く動物園に戻りたい――不本意な「異動」命じられた動物飼育員、運営団体に「勝訴」
2015年03月25日 21時13分

東京都江戸川区にある「自然動物園」で飼育員をしていた女性2人が、自らが受けた「配置転換命令」は違法・無効だと訴えていた裁判の控訴審で、東京高裁(大竹たかし裁判長)は3月25日、控訴棄却の判決を下した。1審に引き続き、動物園を運営する公益財団法人「えどがわ環境財団」が出した配置転換命令は、違法で無効だと判断された。記者会見した原告の女性は「また動物園に戻って、本来の仕事を全うできるようにがんばりたい」と、今後の希望を述べた。

東京都江戸川区にある「自然動物園」で飼育員をしていた女性2人が、自らが受けた「配置転換命令」は違法・無効だと訴えていた裁判の控訴審で、東京高裁(大竹たかし裁判長)は3月25日、控訴棄却の判決を下した。1審に引き続き、動物園を運営する公益財団法人「えどがわ環境財団」が出した配置転換命令は、違法で無効だと判断された。記者会見した原告の女性は「また動物園に戻って、本来の仕事を全うできるようにがんばりたい」と、今後の希望を述べた。

●動物飼育と関係ない部署に突然、異動させられた

判決によると、原告の1人である河村早苗さんは1990年に「動物飼育係」として正規雇用され、ずっと自然動物園で飼育業務を担当していた。異動直前は、動物の飼育管理と教育普及事業を兼務していた。

もう1人の原告・初山瞳さんは、2008年に臨時職員として採用され、2011年からは契約期間5年の「一般契約職員」として飼育業務を担当し、レッサーパンダの繁殖改善にも取り組んでいた。2人とも、獣医科大卒だという。

ところが、2011年10月、2人が同じ職場のベテラン職員の勤務態度などについて批判的な指摘をしたところ、園長は逆に2人の異動をほのめかした。さらに、2人が2012年2月に労働組合に加入すると、4月1日付けで河村さんは動物飼育と関係ない環境整備部門に、初山さんは篠崎ポニーランドという乗馬施設に、それぞれ異動させられたのだ。

●「動物飼育は一人前になるまで時間がかかる」

原告の2人によると、自然動物園の飼育係は10人程度の小さな職場で、こうした異動は前例がほとんどなかったようだ。2人は突然の異動に戸惑ったという。

判決の後に記者会見した河村さんは「動物園の職場環境をよくしようと思って動いていたのに、配置転換させられて、全く関係ない事務の仕事を3年続けてきている。私たちは動物園の飼育職として採用され、野生動物のことを広く伝えていくことを最大の目的としてやってきたのに・・・」と悔しさをにじませていた。

今回の判決を受けて、河村さんは「異動の動機や目的も含めて『配転権の濫用』だと認めてもらえて、心強い結果となった。また、動物園に戻って、本来の仕事を全うできるようにがんばりたい」と語っていた。

同じく、会見した初山さんは「いま、職場にいる組合員5人のうち、4人が私と同じ『一般契約職』として働いている。5年の契約期限は来年度で切れるため、『雇い止め』の問題が、すぐ目の前に迫っている。動物飼育職は一人前になるまでに時間がかかり、継続的に続けなければいけない専門性の高い職業だ。財団幹部や区民のみなさんにも、そのことを知ってもらいたい」と話していた。

●「2人を早く元の職場に戻すべき」

河村さんと初山さんの代理人である青龍美和子弁護士は記者会見で、次のように強調した。

「1審の東京地裁判決は、『業務上の必要がない命令だ』という理由で、配置転換命令を違法・無効だとしていた。

今回、東京高裁判決はそこから一歩進んで、『配置転換命令に不当な動機があった』ということも認定している。原告の2人は、労働組合の分会長と副分会長を務めていた。異動が、労働組合の組織力を損ない、活動を妨げることが目的だったと認定されたのだ。

配転命令の違法性については、労働委員会でも争われているが、えどがわ環境財団側の判断が誤りだったことは、今回の判決からも明らかだ。早く2人を元の職場に戻すべきだ」

(弁護士ドットコムニュース)

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