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セクハラヤジは「人格権」侵害!? 塩村都議はヤジった「男性議員」を訴えられるか?
2014年06月20日 15時33分

「結婚したほうがいいんじゃないの?」「(子どもを)産めないのか」――。東京都議会でそんなセクハラヤジを浴びたみんなの党の塩村文夏(あやか)都議(35)が6月20日、発言した人物を特定し、処分するよう求める「要求書」を都議会議長に提出した。

今回のセクハラヤジに対しては、ネットでも多くの怒りの声があがっており、中には「(ヤジを飛ばした議員を)訴えて欲しいくらい」といった声もある。

今回、塩村議員が求めている「処分」とは、いったいどんなものなのだろうか。また、塩村議員は、訴訟をおこして発言者の「法的な責任」を追及することも可能なのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。

「結婚したほうがいいんじゃないの?」「(子どもを)産めないのか」――。東京都議会でそんなセクハラヤジを浴びたみんなの党の塩村文夏(あやか)都議(35)が6月20日、発言した人物を特定し、処分するよう求める「要求書」を都議会議長に提出した。

今回のセクハラヤジに対しては、ネットでも多くの怒りの声があがっており、中には「(ヤジを飛ばした議員を)訴えて欲しいくらい」といった声もある。

今回、塩村議員が求めている「処分」とは、いったいどんなものなのだろうか。また、塩村議員は、訴訟をおこして発言者の「法的な責任」を追及することも可能なのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。

●議会での「処分」とは?

「今回のヤジは、『議会の秩序を乱し議員を侮辱するもの』として、議会による懲罰の対象になると思います」

秋山弁護士はこう切り出した。議会の「懲罰」とは、どんなもので、どんなときに行われるのだろうか?

「地方自治法で、議員は、議会において、無礼の言葉を使用し、または他人の私生活にわたる言論をしてはならないとされています(132条)。そして、議会で侮辱を受けた議員は、議会に訴えて、発言者の処分を求めることができるとされています(133条)」

下される処分の内容は、どんなものだろうか?

「同法に違反した議員に対し、議会は議決によって、『公開の議場における戒告・陳謝、一定期間の出席停止、除名の懲罰』を科することができます(134条、135条)」

●今回のヤジは「人格権の侵害」

もうひとつ気になるのが、今回のような発言をした人を訴えて、民事裁判で「責任」を問うことができるのかという点だ。

秋山弁護士は「今回のヤジは、報道されているとおりの内容であれば、女性都議の人格権を侵害するものとして、民法上の『不法行為』になる可能性があると思います」と述べる。

人格権の侵害というのは、どういう意味だろうか。

「結婚するかしないかは個人の自由な選択に任せられるべき問題であり、結婚していないことを揶揄する発言は侮辱的です。

また、女性の妊娠・出産をめぐる支援について問題意識をもっている都議に対し、『(子どもを)産めないのか』という発言は、あたかも女性都議が個人的に不妊に悩んでいるかのように問題をすりかえて揶揄するものであり、女性都議の人格そのものに対する攻撃といえます。

このような発言が、多くの人の前でされれば、『人格権の侵害があった』と判断される可能性が高いでしょう」

●裁判に「なじむ」問題なのか?

それでは、今回のヤジを飛ばした人を、裁判で訴えることもできるのだろうか?

「今回については、発言がなされた場所が都議会なので、裁判所での審理の対象となるかどうか、すなわち裁判所法3条の『法律上の争訟』にあたるか、という問題があります」

これは「議会の自治」をどう考えるかという問題だ。裁判所はその点について、どう考えているのだろうか?

「たとえば、村議会が下した『出席停止』処分が有効かどうかが争われた裁判では、こうした議論は地方議会の内部規律の問題として自治的措置に任せるべきで、裁判所での審理の対象にならない、という判断が下されました(最高裁昭和35年10月19日判決)。

ただし、この判例でも、除名処分のような懲罰の場合には、内部規律の問題にとどまらない、一般市民法秩序に関わる問題として、裁判所での審理の対象になる、とされています」

●裁判での責任追及も「できるだろう」

つまり、議会内で起きたことでも、「裁判の対象になりうる」ものがあるわけだ。この判例を踏まえて、今回の件を考えた場合、どうなるだろうか?

「たとえば、議会がヤジを述べた議員に懲罰動議を可決し、その議員がその懲罰動議の有効性を争ったような場合なら、内部規律の問題とされるでしょう。つまり、裁判所での審理の対象にならない(訴え却下)と思われます。

しかし、女性都議が、ヤジを述べた議員に対し、人格権侵害を理由に損害賠償請求をすることは、議会の内部規律の問題とは異なる問題です。こうしたケースなら、一般市民法秩序に関わる問題として、裁判所での審理の対象になる、と考えます。

つまり、ヤジを述べた議員の責任を、訴訟によって追及することも可能ではないか、ということですね」

このように秋山弁護士は結論付けていた。事態がどのように展開するのかはまだわからない状況だが、「民事訴訟」も、責任を追及するための選択肢の一つになり得るということだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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