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初の日本版「司法取引」で会社は不起訴、元役員らは有罪 弁護士はどうみる?
2019年09月24日 10時15分

司法取引制度が初めて適用された贈賄事件で、東京地裁は9月13日、不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)の罪に問われた三菱日立パワーシステムズの元取締役常務執行役員に懲役1年6月、執行猶予3年を言い渡した。この事件では、ほかに元執行役員と元部長の有罪判決が言い渡されている。

司法取引制度は、2018年6月施行の改正刑事訴訟法で導入された。日産の元会長、カルロス・ゴーン氏の事件でも使われた制度だ。

しかし、この事件をめぐっては、会社の責任を免責し、個人の責任を問う運用に批判の声もあがっている。弁護士は今回の判決をどのように見ているか。大森景一弁護士に聞いた。

司法取引制度が初めて適用された贈賄事件で、東京地裁は9月13日、不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)の罪に問われた三菱日立パワーシステムズの元取締役常務執行役員に懲役1年6月、執行猶予3年を言い渡した。この事件では、ほかに元執行役員と元部長の有罪判決が言い渡されている。

司法取引制度は、2018年6月施行の改正刑事訴訟法で導入された。日産の元会長、カルロス・ゴーン氏の事件でも使われた制度だ。

しかし、この事件をめぐっては、会社の責任を免責し、個人の責任を問う運用に批判の声もあがっている。弁護士は今回の判決をどのように見ているか。大森景一弁護士に聞いた。

●「判決には、協議・合意制度は直接的には影響していない」

「今回の判決は、我が国で協議・合意制度(日本版司法取引制度)が利用された第1号事件として注目されました。しかし、実は、今回の判決には、協議・合意制度は直接的には影響していません。

今回、判決があった元常務執行役員は公訴事実を争っていましたが、その争点は、共犯者とされた元執行役員及び元担当部長との会議の場で、元常務執行役員が贈賄を了承したか否か、という点でした。

そのため、司法取引をしていない元執行役員及び元担当部長の証言の信用性が争われたものの、司法取引をした会社が検察側に提供した資料の信用性が大きく争われたわけではありませんでした。

別の観点からいうと、今回の事案は、司法取引によって得られた証拠が公判における決定的な証拠となった事案ではありませんでした。

しかも、今回の事案では、協議・合意制度が施行される2年以上前から、会社は東京地方検察庁に報告し、捜査に協力していました。そうだとすると、協議・合意制度の存在によって事案が発覚したわけでもありませんでした」

●「捜査に協力すれば、悪いようにはしない」というメッセージ

今回の事件では、会社は起訴されておらず、「トカゲの尻尾切り」との批判もあります。

「起訴された3名の裁判にはあまり影響しなかったものの、確かに、会社が起訴されなかったのは、協議・合意制度の存在が大きかったと思います。

結局のところ、今回の事案で協議・合意制度が利用されたのは、『積極的に捜査に協力するのであれば、悪いようにはしない』という、企業に対する検察のメッセージの意味合いが強かったのではないかと考えています。そういう意味で、今後も、会社の責任を免責し、個人の責任を問う運用がなされていく可能性は高いでしょう」

今回の判決をどう見ていますか。

「今回の事件で、起訴された3名は、いずれも検察側の求刑は懲役1年6月でした。これに対し、判決では、贈賄を指示して進めていった元担当部長と元執行役員については、部下である元担当部長が1年4月、上司である元執行役員は1年6月(いずれも執行猶予3年)でした。

他方、今回判決のあった元常務執行役員については、公判の中で、贈賄ではない他の手段を検討するように指示するなど贈賄を回避しようと努めており、明確な贈賄の指示もしていないなど、関与の度合いが他の2名のような積極的な関与ではなかったことが明らかとなったにもかかわらず、1年6月(執行猶予3年)の判決でした。

このことは、組織内での地位が量刑判断において重要視されていることを示しています。つまり、地位の高い者は、些細な言動であっても刑事事件に巻き込まれるリスクがあり、それだけ違法行為に注意しなければならないことが改めて明らかになったといえます」

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