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「産経新聞前ソウル支局長の無罪は当然だった」韓国の新聞記者が「判決」の背景を解説
2015年12月20日 10時37分

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を傷つけたとして在宅起訴された産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長に対し、韓国のソウル中央裁判所は12月17日、「大統領を誹謗する目的はなかった」として、無罪判決を言い渡した。

加藤前支局長は、2014年8月に産経新聞のウェブサイトで執筆したコラムの内容が、インターネットを使って朴大統領の名誉を毀損したとして、「情報通信網法」違反で在宅起訴されていた。

問題となったコラムは、昨年4月に起きた韓国の旅客船沈没事故の当日、朴大統領が一時、行方がわからなくなっていたと報じた「朝鮮日報」の記事を引用し、朴大統領が元秘書の男性と一緒にいた可能性を示唆していた。しかし、記者が書いたコラムが大統領個人への名誉毀損にあたるとして刑事処分の対象にすることの是非をめぐり、波紋をよんでいた。

今回の無罪判決を韓国メディアはどうみているのか。韓国の全国紙「京郷新聞」の前東京支局長で、現在は経済部長を務める徐義東さんに話を聞いた。

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を傷つけたとして在宅起訴された産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長に対し、韓国のソウル中央裁判所は12月17日、「大統領を誹謗する目的はなかった」として、無罪判決を言い渡した。

加藤前支局長は、2014年8月に産経新聞のウェブサイトで執筆したコラムの内容が、インターネットを使って朴大統領の名誉を毀損したとして、「情報通信網法」違反で在宅起訴されていた。

問題となったコラムは、昨年4月に起きた韓国の旅客船沈没事故の当日、朴大統領が一時、行方がわからなくなっていたと報じた「朝鮮日報」の記事を引用し、朴大統領が元秘書の男性と一緒にいた可能性を示唆していた。しかし、記者が書いたコラムが大統領個人への名誉毀損にあたるとして刑事処分の対象にすることの是非をめぐり、波紋をよんでいた。

今回の無罪判決を韓国メディアはどうみているのか。韓国の全国紙「京郷新聞」の前東京支局長で、現在は経済部長を務める徐義東さんに話を聞いた。

●「起訴はやりすぎだという批判がメディアで強まった」

今回の無罪判決は、当たり前の結論でした。そもそも、起訴をしたこと自体に無理があったと考えるからです。

「京郷新聞」では、「言論の自由は守られるべき」という考えのもと、起訴に対して当初から批判的に報じてきました。加藤さんは、事実関係が全く異なる記事を掲載したのではなく、ただの「噂」をインターネット上(産経新聞のウェブサイト)に書いただけだからです。

いっぽうで、政権寄りの朝鮮日報や中央日報は起訴当初、加藤さんのコラムは「大統領の名誉を毀損している」と、起訴には賛成の立場を示していました。

私はもし、コラムを書いていたのが朝日新聞であったならば、メディアの反応は異なったかもしれないと考えています。

韓国国内では、朝日新聞は韓国に友好的な立場をとっていて、産経新聞は韓国叩きをしていると捉えられています。こうした見方がある中で、「あの産経新聞の記者が書いたコラムだから、けしからん」との反発を招き、コラムを問題視する声が強まったのでしょう。

そのため中道的なメディアも、起訴を批判的に取り上げたら、結果的に産経新聞をかばうことになるのではないかと考え、起訴当初は曖昧な態度を示していたように見えます。しかし徐々に、メディアも「起訴までするのはやりすぎだ」と批判的な論調で報じるようになっていきました。

メディアが批判的になった背景には、国民世論として、逮捕・起訴はやり過ぎだという冷静な見方があったことも要因です。現在、朴大統領は支持率が40%と、韓国の大統領としては高い数字です。それでも、コラムの内容に問題があったとしても、起訴するほどのものなのかと国民も冷静に見ていたように思います。

韓国の名門大学法学部の教授は、判決後「もし有罪になったら、韓国は国際的に人権侵害の国として注目を浴びてしまっただろう。無罪になってよかった」と京郷新聞の取材に話しています。コラムの内容に問題を感じた人であっても、このように「無罪になってよかった」というのが、国民の率直な思いではないかと思います。

メディアも同様です。判決の翌日、ほとんどの主要紙は1面、総合面で記事を掲載しています。そのほとんどが、「検察の起訴は無理があった」(東亜日報)、「検察の無理な起訴は日韓関係にも悪影響を与えた」(ハンギョレ新聞)など、そもそもの起訴を問題視する論調で報じていました。

今後、検察が控訴する可能性はゼロではありません。

ただし、(韓国)外務省は、判決にあたって裁判所に「日韓関係のために善処を求める」と文書を出しています。これ以上、この問題を韓日関係の足枷にしたくないという政権の意向があったと考えられ、これに検察が逆らう可能性はほぼないと考えています。

(弁護士ドットコムニュース)

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