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アマゾンレビューのコメント、どこまで許される?…「中傷投稿」の発信者情報開示命令
2016年04月21日 14時58分

アマゾンの書評レビューに投稿された「中傷コメント」によって社会的評価が低下したとして、NPO法人が発信者情報の開示を求めた訴訟で、東京地裁は3月下旬、運営会社のアマゾン・ジャパンに対して、投稿したユーザーの氏名や住所、メールアドレスなどの開示を命じる判決を下した。

この判決をめぐっては、ツイッター上で「これで悪質なレビュアーが減ってくれるといいな」「じゃんじゃん(発信者情報を)開示してほしい」などと、高く評価する声が多くあがった。

一方で、「これを端緒に『要請があれば開示』が原則になるとしたら、その方がよほど『表現の自由』の障壁になりそうで怖い」「面白くないものを『面白くない』と書いて訴えられるようになったら言論弾圧だよなぁ」という意見もあった。

たしかに、表現の自由は、憲法上の権利として保障されている。だが、誹謗中傷のコメントがレビューサイトに投稿されていることも事実だ。レビューサイトへの書き込み問題をどう捉えるべきなのか。インターネットの誹謗中傷問題に取り組む最所義一弁護士に聞いた。

アマゾンの書評レビューに投稿された「中傷コメント」によって社会的評価が低下したとして、NPO法人が発信者情報の開示を求めた訴訟で、東京地裁は3月下旬、運営会社のアマゾン・ジャパンに対して、投稿したユーザーの氏名や住所、メールアドレスなどの開示を命じる判決を下した。

この判決をめぐっては、ツイッター上で「これで悪質なレビュアーが減ってくれるといいな」「じゃんじゃん(発信者情報を)開示してほしい」などと、高く評価する声が多くあがった。

一方で、「これを端緒に『要請があれば開示』が原則になるとしたら、その方がよほど『表現の自由』の障壁になりそうで怖い」「面白くないものを『面白くない』と書いて訴えられるようになったら言論弾圧だよなぁ」という意見もあった。

たしかに、表現の自由は、憲法上の権利として保障されている。だが、誹謗中傷のコメントがレビューサイトに投稿されていることも事実だ。レビューサイトへの書き込み問題をどう捉えるべきなのか。インターネットの誹謗中傷問題に取り組む最所義一弁護士に聞いた。

●「建設的な批判を否定するなら、議論をする意味がない」

「人はその立場によって、当然に意見が異なります。その異なる様々な意見の人たちが自分の意見を表明すること、さらにその意見に賛同する意見や批判する意見が表明されることによって、議論が生まれます。

議論がおこなわれるなかで、意見が集約されて、一つの結論へ向かっていく・・・。これが正常な議論であり、民主主義の理想的なかたちです。

このような議論がおこなわれている場合、他者に対する批判は、議論の質を上げていくうえでも、非常に重要です。建設的な批判を否定するなら、議論をする意味がありません」

最所弁護士はこのように述べる。では、レビューサイトの書き込みについてはどう考えるのか。

「誰でも自由に投稿できるインターネット上のレビューやコメントは、個人が自由に意見を表明できる重要な表現空間です。そのような場で建設的な議論がおこなわれることによって、初めて物事の本質が明らかになることがあります。

アマゾンのレビューも、そのような建設的な議論によって、その書籍の本質を明らかにしていくという役割があります。建前かも知れませんが、これが自由にレビューを投稿できるようにしている一つの理由でしょう」

●「ウソ」や「誹謗中傷」の投稿は許されない

だが、今回の判決のように投稿が「社会的信用を低下させる」と判断されることがある。法的に、どのような投稿が許されないのだろうか。

「許されない一例として、内容がウソの投稿があげられます。ウソの投稿をもとにしたのでは、議論の土台となる事実が間違っていることになり、建設的な議論はできません。

また、単なる侮辱的表現に過ぎない投稿(『バカ』『アホ』『間抜け』など)や、批判対象者の身体的特徴を揶揄するような投稿(『チビ』『デブ』『ハゲ』など)も許されません。

ほかにも、差別用語の投稿やいわゆる『ヘイトスピーチ』、または、ことさらにプライバシーを晒す内容の投稿は、読む人を不快にさせるだけでなく、批判的言動をある種の恫喝によって制限しようとするものといえます。建設的な議論をするうえで、有害以外の何ものでもありません。

繰り返しますが、表現の自由が憲法上保障されたのは、正常な議論をおこなうことで、異なる意見を集約し、時間をかけて、一つの結論に導いていくことができるからです。

このような観点から考えると、ある投稿が正常な議論において有益なものかどうか、言いかえれば、議論を制限してしまう投稿かどうか、そういった点から判断すれば、許される批判的投稿か否かについて、おのずと明らかになるのではないでしょうか」

最所弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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