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元海佐の特定秘密漏えい、不起訴 立証のハードルとなったのは「手法と情報の行き先」
2023年03月16日 10時34分

海上自衛隊OBに安全保障に関する特定秘密を漏らしたとして特定秘密保護法違反などの疑いで書類送検された元1等海佐について、検察当局は2023年3月14日、嫌疑不十分で不起訴にした。2014年の同法施行後、初の摘発となり、話題となった事件だ。

元警察官僚の澤井康生弁護士は、口頭での説明だったことから立証が困難であることに加えて、漏洩相手が外国ではなくOBであり現金の授受もなかったことから悪質性がそれほど高くないことなども考慮して判断したのではないかと説明する。

報道によると、1等海佐は、OBから複数の隊員を通じて依頼され、懲戒免職となった。3等陸佐の階級を有する予備自衛官でもある澤井弁護士は「かつての上司からの圧力で機密情報が漏洩した不幸な事件です。退職したOBは外部の人間。現職の自衛隊員は、機密情報を知らせることはただちに守秘義務違反となることを肝に銘じるべきです」とする。

防衛省はHPで、退職したOBや自衛隊員に対し、守秘義務に違反する情報提供を求めることのないよう注意喚起をしている。

「現職自衛官がOBから情報提供を求められた場合は自分のみで判断せず、組織に報告して組織的に対応すべきです。今後は同じことが起きないよう切に願います」(澤井弁護士)

海上自衛隊OBに安全保障に関する特定秘密を漏らしたとして特定秘密保護法違反などの疑いで書類送検された元1等海佐について、検察当局は2023年3月14日、嫌疑不十分で不起訴にした。2014年の同法施行後、初の摘発となり、話題となった事件だ。

元警察官僚の澤井康生弁護士は、口頭での説明だったことから立証が困難であることに加えて、漏洩相手が外国ではなくOBであり現金の授受もなかったことから悪質性がそれほど高くないことなども考慮して判断したのではないかと説明する。

報道によると、1等海佐は、OBから複数の隊員を通じて依頼され、懲戒免職となった。3等陸佐の階級を有する予備自衛官でもある澤井弁護士は「かつての上司からの圧力で機密情報が漏洩した不幸な事件です。退職したOBは外部の人間。現職の自衛隊員は、機密情報を知らせることはただちに守秘義務違反となることを肝に銘じるべきです」とする。

防衛省はHPで、退職したOBや自衛隊員に対し、守秘義務に違反する情報提供を求めることのないよう注意喚起をしている。

「現職自衛官がOBから情報提供を求められた場合は自分のみで判断せず、組織に報告して組織的に対応すべきです。今後は同じことが起きないよう切に願います」(澤井弁護士)

●2つの法律に違反

報道によると、元1等海佐は情報をつかさどるトップの情報業務群司令だった2020年3月、神奈川県横須賀市の庁舎で、元海将のOBに安全保障環境について口頭で説明。OBは「講演に必要だから」との理由で1対1の面会を求め、漏洩されたのは中国艦艇の動向に関する軍事衛星画像の情報だったとされている。

澤井弁護士は、自衛隊法と特定秘密保護法に違反し、漏洩罪が成立し得ると解説する。

自衛隊法59条1項は『隊員は職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない』と規定し、違反した場合は懲役1年以下の懲役または50万円以下の罰金(118条1項1号)となる。

「判例上で『秘密』とは形式的に秘密と指定されているだけでは足りず、作戦遂行に支障を与えたり、国防上の脅威となりうる性質を有したりするなど実質的にも秘密といえるものとされています(東京地裁昭和46年1月23日判決)。つまり今回は、59条1項違反に該当すると考えられます」

「また特定秘密保護法は防衛事項、外交事項、特定有害活動防止事項、テロ防止事項の4分野について、別表で掲げるものを特定秘密として指定します。漏洩した場合は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(23条)。本件は防衛事項のうち『防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報』に該当します」

●口頭説明、本人が否認したら立証は困難

今回不起訴となったことについて澤井弁護士は「口頭での説明」がポイントだと指摘する。

通常、機密情報を外部に漏らす場合は書面や写真、画像、もしくは情報内容をメールで送るなど物証があることが多い。しかし、口頭での説明では曖昧で、双方に理解力や表現力に差があって全く情報が伝わらなかったり、誤って理解されたりする恐れもあるとする。また、録音をしない限りその場で消えてしまうため、直接の証拠は何もないことになるという。

「もちろん自白がある場合や、OBや周りで聞いた隊員の証言があれば、漏洩を認定することも不可能ではありません。しかしながら、口頭での説明というのは、仮に再現したとしてもどこまで正確に再現できているのかは本人でもわからないでしょう。特に本人が公判廷で漏洩を否定した場合、もともと客観的な物証がない以上、検察側が立証するのは困難となります」

また、漏洩の相手がOBで外国側に流した事実はないなどとされている点を考慮し、1等海佐の罪状としてはそこまで重くないと判断されたとみる。

2001年3月7日の東京地裁判決は、海自幹部が駐ロシア大使館武官から現金を受け取る代わりに、戦術資料をコピーして交付したとして懲役10月の実刑を言い渡している。澤井弁護士は、日本の安全保障上重要な秘密が実際に外国に漏れたという結果を重視して執行猶予なしにしたものと説明する。

「今回の事件は、特定秘密と指定された情報そのものの漏洩ではないため、客観的な物証がないこともあいまって、検察側の有罪立証のハードルは高くなったはずです。また、文書や画像と比べ、口頭での説明では国益侵害の結果はそれほど大きくないとも言えるでしょう。このような事情を考慮して結果として不起訴となるものと思われます」

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