5272.jpg
発見されたニシキヘビの飼い主は「軽犯罪法違反」に問われる? 過去には「トラ脱走」で有罪判決も
2021年05月24日 16時07分

横浜市のアパートで飼育中だったアミメニシキヘビが、逃げ出してから17日目の5月22日、飼い主の部屋の屋根裏で見つかって、捕獲された。

幸いにも、ケガ人などは出なかったが、近隣住民を不安にさせた。猛獣が逃げ出した過去の騒動では、飼い主に軽犯罪法違反が適用されたケースもある。

横浜市のアパートで飼育中だったアミメニシキヘビが、逃げ出してから17日目の5月22日、飼い主の部屋の屋根裏で見つかって、捕獲された。

幸いにも、ケガ人などは出なかったが、近隣住民を不安にさせた。猛獣が逃げ出した過去の騒動では、飼い主に軽犯罪法違反が適用されたケースもある。

●住職の「トラ」が逃走した

今回の騒動に関連して、過去の「有名事件」として、メディアで紹介されたのが、1979年8月、千葉県君津市の寺で飼育されていたトラが逃げ出した事件だ。

毎日新聞(1992年9月19日)によると、寺の住職が飼っていたトラ3頭がオリから脱走、一頭はすぐに戻ったが残り2頭が逃げ続け、射殺まで27日間かかったという。

この事件をめぐっては、「オリのカギをかけ忘れた」として、管理責任を問われた寺の住職が、軽犯罪法違反(1条12号・危険動物解放等の罪)で起訴された。

その後、最高裁は1988年、拘留20日を言い渡した2審・東京高裁の判決を支持、寺の住職の上告を棄却する決定を下して、有罪が確定した。

●軽犯罪法違反にあたる?

はたして、今回のアミメニシキヘビもこの軽犯罪法違反にあたるのだろうか。上記の軽犯罪法1条12号では、次のように定められている。

「人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠つてこれを逃がした者」

この者は、拘留(1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置する刑)または科料(1000円以上1万未満を徴収される刑)となる。

屋根裏にいたわけだから、「逃した」とまでは言えないのではないだろうか。

『実務のための軽犯罪法解説』(東京法令)によると、「『監守を怠ってこれを逃した』とは、監守義務者の過失によって、その支配下にあった動物がその支配を脱したということであり、檻(オリ)の扉を締め忘れたり、鎖をきちんとつけなかったりすることがこれに当たる」という。

また、「動物が支配を脱すれば十分であり、遠方まで逃走する必要はなく、人に危害を及ぼしたことも不要である」ということだ。

●ネット上では「誠実な飼い主」という評価も

横浜市のケースでは、NHKなどによると、逃げ出す直前のアミメニシキヘビは、横浜市から許可を受けたものとは違う簡易的な鍵がついた木製のケージで飼育されていた。「ヘビが成長したため」という。

この事実がどのように評価されるかわからない。宮崎県延岡市でも1980年4月、移動動物園からコブラ3匹が逃げ出して、責任者が軽犯罪法違反に問われた事件が起きている。

今回のケースでも、もし「過失」が認められると、軽犯罪法違反となる可能性がある。ただ、ネット上では「誠実な飼い主」と評されており、少し気の毒な気もする。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る