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「私を見かけてもSNSに書かないで」アンジュルム・川村文乃さんが懸念、引退した芸能人のプライバシー権は?
2024年11月30日 08時24分
#アンジュルム #川村文乃 #芸能人 #プライバシー権

ハロー!プロジェクトに所属する女性アイドルグループ「アンジュルム」のメンバー、川村文乃さんが11月28日をもって芸能界を引退した。

これに先立って、川村さんは11月26日、自身のブログで「もし私を見かけたとしてもどこどこで見た!とかSNSに書かないでください」とつづった。

芸能人を目撃して「どこどこで見た!」などとSNSに投稿する人は少なくない。11月29日以降、芸能界を引退する川村さんは懸念しているわけだ。

引退した芸能人を「どこどこで見た!」という投稿は法的に問題あるのだろうか。芸能問題にくわしい河西邦剛弁護士に聞いた。

ハロー!プロジェクトに所属する女性アイドルグループ「アンジュルム」のメンバー、川村文乃さんが11月28日をもって芸能界を引退した。

これに先立って、川村さんは11月26日、自身のブログで「もし私を見かけたとしてもどこどこで見た!とかSNSに書かないでください」とつづった。

芸能人を目撃して「どこどこで見た!」などとSNSに投稿する人は少なくない。11月29日以降、芸能界を引退する川村さんは懸念しているわけだ。

引退した芸能人を「どこどこで見た!」という投稿は法的に問題あるのだろうか。芸能問題にくわしい河西邦剛弁護士に聞いた。

●居住地や職場が特定されれば被害も生じる

結論から言えば、芸能人を「どこどこで見た!」という投稿は、プライバシー権侵害になる可能性が高いです。

プライバシー権は、法律によって明確に保障されている権利ではなく、裁判例の蓄積により保護されている権利なので、侵害の線引きについて明確な基準がありません。

これまでの裁判例では、事実を公表されない法的利益と、公表する理由を比較して、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立するとされています。

これを現役芸能人のプライバシー権侵害が問題となった過去の裁判例を踏まえて検討すると、プライバシー権侵害については、投稿された内容と芸能活動との結びつきの程度、被害の程度、公表の必要性等を比較し判断するとしています。

現役の芸能人を対象とした裁判例ではありますが、アイドルを卒業し芸能活動も引退していれば、芸能活動との結びつきも公表の必要性も一層ないと思われます。

不用意なSNS投稿によって居住地や職場が特定されれば被害も生じます。プライバシー権侵害として、損害賠償責任が生じる可能性もあるでしょう。

●「違うことは違うといえる手段」がなくなる

たとえば、メンバーも芸能界を引退し、同時にグループが解散するというケースであれば、時間の経過とともに世の中からの注目度はおのずと下がっていきます。

一方、元メンバーは芸能界引退したけど、グループは存続するというケースでは、グループとしては世の中の注目を集め続けるとともに、現在のグループの活動に関連して元メンバーの過去の映像・音声についても残り続けます。

そして、グループの活動が続く間はSNS上でもグループについての投稿がファンから日々活発になされ、それに伴い引退した元メンバーの過去の活動内容についても投稿されることは避けられません。

そうすると、元メンバーの引退後であっても、過去の活動が現在の活動に紐づいて残り続けることなりますが、同時に、元メンバーは芸能界とは無縁の日常生活を送っているという状態になります。

しかも、川村さんも指摘しているように、芸能界引退後は「違うことは違うといえる手段」がなくなります。

社会的背景としてもアイドル人口が増えている昨今、アイドルを引退して一般の企業に就職したり、結婚したり、一般の生活を送るという人も増えています。

元アイドルなので、プライバシー権侵害はされやすい一方、本人に対抗手段がないという状態であれば、芸能界を完全に引退したアイドルに対するプライバシー保護はより一層必要になってくるでしょう。

●「今の生活を保護される権利」を考えるべき時期だ

また、裁判所による法的保護だけではなく、芸能事務所側の配慮も重要になると思われます。

芸能事務所とアイドルのマネジメント契約上は、芸能事務所側が、活動期間中の著作権法上の権利や肖像等の利用権を保有し続けることになります。なので、芸能事務所は、過去の映像等についての権利使用は自由ではあります。

しかし、過去の映像であっても使い方によっては、まるで今も活動しているかのように受け取られる可能性があります。したがって、元メンバーごとに現在の生活環境に応じた対応が重要だと思います。

インターネットをめぐっては、過去の逮捕歴などの削除を求める「忘れられる権利」が指摘されることがあります。ですが、元アイドルの場合は「忘れられる権利」と異なり、過去の活動記録は残しながらも引退後の「今の生活を保護される権利」を考えるべき時期だと思います。

ここについての裁判例は、私が知る限りは存在していませんし、元アイドル人口が増える一方で、法的な議論や保護も追いついていません。現状は、ファン、事務所、世の中の配慮によって保護が実現される権利だといえるでしょう。

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