7089.jpg
「反省文」はパワハラなのか? 営業成績未達の社員、上司の命令に不満
2024年07月13日 09時17分
#パワハラ #反省文

仕事で失敗した従業員に「反省文」を書かせるのは、パワーハラスメント(パワハラ)にあたるのだろうか。

「営業成績が未達成の場合に反省文の提出を求められている」という会社員から弁護士ドットコムに相談が寄せられている。

あるサービスの会員数を増やすように会社から指示されたが、実績がまだゼロ件のため、「今月末までに取れなかった場合、反省文を書くように」と他の社員の前で言われたという。

会員獲得によるインセンティブは一切発生せず「未達成による反省文という処罰は適切なのか」「パワハラに抵触しないものなのか」と疑問に感じている。

反省文をめぐっては、体重が増加したことに対する罰として、陸上自衛隊の隊員に上司が1万字の「反省文書」を書かせたことなどをパワハラと認定して国に150万円の支払いを命じた判決(東京地裁・2024年3月14日)も注目された。

今回のケースも法的に問題はないのだろうか。大野薫弁護士に聞いた。

仕事で失敗した従業員に「反省文」を書かせるのは、パワーハラスメント(パワハラ)にあたるのだろうか。

「営業成績が未達成の場合に反省文の提出を求められている」という会社員から弁護士ドットコムに相談が寄せられている。

あるサービスの会員数を増やすように会社から指示されたが、実績がまだゼロ件のため、「今月末までに取れなかった場合、反省文を書くように」と他の社員の前で言われたという。

会員獲得によるインセンティブは一切発生せず「未達成による反省文という処罰は適切なのか」「パワハラに抵触しないものなのか」と疑問に感じている。

反省文をめぐっては、体重が増加したことに対する罰として、陸上自衛隊の隊員に上司が1万字の「反省文書」を書かせたことなどをパワハラと認定して国に150万円の支払いを命じた判決(東京地裁・2024年3月14日)も注目された。

今回のケースも法的に問題はないのだろうか。大野薫弁護士に聞いた。

●反省文が「パワハラ」と判断されるケース

——従業員に反省文を書かせることは「パワハラ」にあたるのでしょうか

パワハラとは、職場においておこなわれる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるもの――とされています。

これらすべてが認められて初めてパワハラとなりますが、このうち(1)と(3)は比較的わかりやすいので問題になることは少なく、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたかどうかが主たる争点となります。

これを踏まえて、反省文を書かせることがパワハラにあたるか検討します。通常、反省文を書かせることは、会社の業績向上を妨げる行為や、業務上のトラブルによる悪影響を二度と起こさないために課される「業務上必要」な作業だと思われます。

そうすると、従業員の行為によって問題が生じた場合に「相当な範囲」であれば、原則として、パワハラにはあたりません。

ただし、そもそも問題行動がない場合に反省文を書かせれば、「業務上必要」ではないのでパワハラにあたりえます。「業務上必要」であっても、要求される反省文の程度が度を超えている場合には「相当な範囲を超えた」ものですから、パワハラにあたるでしょう。

●「1万字の反省文」がパワハラと認定された判決も

——今回のケースではどうでしょうか

今回のケースでは、パワハラにあたる場面は限定されると考えられます。

前提として、新規会員獲得が嫌がらせのような無理難題でない場合、その命令を受けながらも、達成できなかった従業員に反省文を命じることは、その従業員を業務に真剣に取り組ませる効果があると思います。

それゆえ、業務上の必要があると言え、さらに相当といえる範囲の反省文であれば、パワハラにあたらないと判断されると考えられます。

このように、強い指導や叱責と思われる行為であっても、会社の存続・発展のために必要となるものも少なくないため、従業員側がいわゆる「パワハラ」と考える行為であっても、パワハラと判断されないものもあります。

陸上自衛隊をめぐる裁判で、被害者の体重が増加したことを理由に、上司らが自衛隊法の文言を繰り返し1万字に至るまで書かせたことがパワハラと認定されたのは、例外的なケースと考えられます。

体重増それ自体が業務上の問題となることは少ないと思いますし、自衛隊法の文言を書かせても業務が改善することはありません。また、そもそも、反省させるために無意味な行為をさせるという罰を与えただけであり、自衛隊法の文言を書かせるのは一般的な「反省文」ではありません。そのため、業務上必要かつ相当な範囲を超えたと認められたのだと思われます。

また、今回の自衛隊の裁判で150万円を認めたのは、反省文だけでなく、他のパワハラと合わせて認められたものです。パワハラは、パワハラによってうつ病に罹患したり、自殺に追い込まれた場合には多額に上ることもありますが、多くは数十万円程度しか認められません。反省文を書かされたことだけで150万円もの慰謝料の支払いを命じられることは想定しがたいですから、注意が必要です。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る