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「刑法犯」が戦後3番目に少ない121万件、 日本の「治安」は良くなったのか?
2015年02月01日 12時15分

2014年に全国の警察が認知した刑法犯の件数が、警察庁のまとめで戦後3番目に少ない121万2240件(速報値)だったことが報じられた。前年比7.8%減で、12年連続で減少している。

認知件数は、1996年から2002年までは連続して戦後最多を更新していた。しかし、2003年から減少に転じ、以来12年連続で減っている。ピークだった2002年は369万3928件。それと比べると、2014年は約3分の1になった計算だ。

殺人などの凶悪犯罪のニュースは毎日のように見かけるが、この数値から「治安が良くなった」と言うことはできるのだろうか。元警察官僚・警視庁刑事という経歴をもち、刑事政策にくわしい澤井康生弁護士に聞いた。

2014年に全国の警察が認知した刑法犯の件数が、警察庁のまとめで戦後3番目に少ない121万2240件(速報値)だったことが報じられた。前年比7.8%減で、12年連続で減少している。

認知件数は、1996年から2002年までは連続して戦後最多を更新していた。しかし、2003年から減少に転じ、以来12年連続で減っている。ピークだった2002年は369万3928件。それと比べると、2014年は約3分の1になった計算だ。

殺人などの凶悪犯罪のニュースは毎日のように見かけるが、この数値から「治安が良くなった」と言うことはできるのだろうか。元警察官僚・警視庁刑事という経歴をもち、刑事政策にくわしい澤井康生弁護士に聞いた。

●大幅に減っているのは法定刑の軽い「窃盗犯」

「これらの数値から、ただちに『治安が良くなった』と一概にいえないと思います」

澤井弁護士はこのように述べる。数値上は犯罪が減っているが、なぜ、そう考えるのだろうか。

「2013年と比較して減少した件数(10万1900件)の8割以上を占めているのは窃盗犯です。

窃盗犯には大きく分けて

(1)空き巣や金庫破りなどの『侵入盗』

(2)自転車やバイクなどを盗む『乗り物盗』

(3)ひったくり、すり、万引きなどの『非侵入盗』

があります。

たしかに、これらの窃盗犯は、ほぼすべての類型において認知件数が減少してます」

それでは、やはり犯罪は減って、治安がよくなっていると言えるのではないか。

「窃盗犯は、刑法犯の中では相対的に法定刑も軽く、詐欺などと比べると被害金額も少ないです。どちらかというと軽微な犯罪といえるでしょう。

これに対して、暴行や傷害などの粗暴犯、強姦・強制わいせつの件数は、ほぼ横ばい状態です。振り込め詐欺などの知能犯事件は、8%以上も増加しています。殺人事件や放火事件も微増しています。

法定刑の高い生命・身体に対する犯罪類型は微増か横ばい状態で、減少はしていません。また、窃盗よりも被害金額が高く、悪質な詐欺類型はかえって大幅に増加している状態です」

つまり、全体として見ると、治安が良くなったわけではないということか。

「全体的に見れば、犯罪認知件数自体は減少しているものの、実際に減少しているのは、被害金額も少なく法定刑の軽い窃盗類型にすぎません。

それ以外の法定刑の重たい犯罪類型は、ほぼ横ばい状態です。被害金額の大きい詐欺や殺人にいたっては、かえって増加となっています。

ですので、今回の統計データからただちに治安が良くなったと一概にはいえないでしょう」

澤井弁護士はこのように分析していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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