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就職活動でもらう「内々定」と「内定」 法的な違いはどこにあるか?
2013年04月22日 12時38分

来春卒業の大学生にとって、いまは「就職活動シーズン」真っ只中だろう。経団連の「採用選考に関する企業の倫理憲章」にもとづいて、4月1日から面接選考をスタートさせた企業も多いが、なかにはすでに「内々定」をもらった学生もいる。あるいは、志望企業から不採用を告げる「お祈りメール」が届くのではないかと不安で、「夜も眠れない」という学生もいるかもしれない。

大手企業などでよくあるのは、夏休み前に「内々定」を出し、その後、秋になると「内定」を通知するというパターンだ。このような方式がとられているのは、経団連の倫理憲章で、「正式な内定日は、卒業・修了学年の10月1日以降とする」と定められていて、9月以前には「内定」を出せないという建前になっているためだ。

では、9月以前の「内々定」と10月以降の「内定」は、法律的にも違う意味を持つのだろうか。それとも、名前は違うが、同じ性質なのだろうか。労働問題に詳しい山田長正弁護士に聞いた。

● 「内々定」と「内定」では法的性質が異なる

山田弁護士によると、「『内々定』と『内定』では、『労働契約』を締結しているか否かで異なる」と指摘しつつ、次の様に説明する。

「『内々定』とは、『労働契約が締結される以前の段階』を指し、労働契約による拘束関係は発生しません。

他方、『内定』とは、採用内定通知書等に記載された取消事由(たとえば3月に大学を卒業できない場合)が発生した場合、企業により労働契約を解約できる権利が認められた『労働契約』を意味します。

よって、両者は『労働契約』を締結しているか否かという点で異なっており、契約関係に基づく拘束力の有無が異なります」

ともすると、「内々定」と「内定」では、9月以前と10月以降という、時期の違いに目を奪われがちだが、実は、労働契約の締結という法的性質において、違いがみられるということだ。

●「内々定」が取り消されても、損害賠償は原則として認められない

では、両者は法的性質が異なるとして、企業と学生との間で何か問題が生じた場合、具体的な違いが生じることはあるのだろうか。

山田弁護士は、「よく問題になるのは、企業が『内定』や『内々定』を取り消すケースです」と指摘しつつ、次の様に説明する。

「例えば『内々定』の場合には、労働契約が成立していません。このため、企業がたとえ恣意的に内々定を取り消しても、原則的に問題にならず、応募者からの損害賠償請求も原則として認められません。

他方、『内定』の場合、これまでの裁判例は、概して企業に厳しい態度を取る傾向にあります。このため、内定取消が認められるのは、会社が採用内定当時には知ることができなかったか、知ることが期待できなかった事実が判明し、内定取消を行うことが『社会通念上相当』と認められる場合だけに限られます。

よって、『内定』の場合、企業の恣意的な内定取消については、労働者からの損害賠償請求が認められますので、企業としては特に留意が必要です」

このように、企業の取り消しの場面においても、「内々定」と「内定」では差があるというわけだ。「内々定」の場合は、企業が取り消しても、原則として損害賠償請求が認められないということなので、学生の側も「内々定」をもらっただけは安心できないといえるだろう。しかし、取り消された学生にとっては死活問題なので、企業が恣意的な取り消しを安易に行わないことを期待したい。

(弁護士ドットコムニュース)

来春卒業の大学生にとって、いまは「就職活動シーズン」真っ只中だろう。経団連の「採用選考に関する企業の倫理憲章」にもとづいて、4月1日から面接選考をスタートさせた企業も多いが、なかにはすでに「内々定」をもらった学生もいる。あるいは、志望企業から不採用を告げる「お祈りメール」が届くのではないかと不安で、「夜も眠れない」という学生もいるかもしれない。

大手企業などでよくあるのは、夏休み前に「内々定」を出し、その後、秋になると「内定」を通知するというパターンだ。このような方式がとられているのは、経団連の倫理憲章で、「正式な内定日は、卒業・修了学年の10月1日以降とする」と定められていて、9月以前には「内定」を出せないという建前になっているためだ。

では、9月以前の「内々定」と10月以降の「内定」は、法律的にも違う意味を持つのだろうか。それとも、名前は違うが、同じ性質なのだろうか。労働問題に詳しい山田長正弁護士に聞いた。

● 「内々定」と「内定」では法的性質が異なる

山田弁護士によると、「『内々定』と『内定』では、『労働契約』を締結しているか否かで異なる」と指摘しつつ、次の様に説明する。

「『内々定』とは、『労働契約が締結される以前の段階』を指し、労働契約による拘束関係は発生しません。

他方、『内定』とは、採用内定通知書等に記載された取消事由(たとえば3月に大学を卒業できない場合)が発生した場合、企業により労働契約を解約できる権利が認められた『労働契約』を意味します。

よって、両者は『労働契約』を締結しているか否かという点で異なっており、契約関係に基づく拘束力の有無が異なります」

ともすると、「内々定」と「内定」では、9月以前と10月以降という、時期の違いに目を奪われがちだが、実は、労働契約の締結という法的性質において、違いがみられるということだ。

●「内々定」が取り消されても、損害賠償は原則として認められない

では、両者は法的性質が異なるとして、企業と学生との間で何か問題が生じた場合、具体的な違いが生じることはあるのだろうか。

山田弁護士は、「よく問題になるのは、企業が『内定』や『内々定』を取り消すケースです」と指摘しつつ、次の様に説明する。

「例えば『内々定』の場合には、労働契約が成立していません。このため、企業がたとえ恣意的に内々定を取り消しても、原則的に問題にならず、応募者からの損害賠償請求も原則として認められません。

他方、『内定』の場合、これまでの裁判例は、概して企業に厳しい態度を取る傾向にあります。このため、内定取消が認められるのは、会社が採用内定当時には知ることができなかったか、知ることが期待できなかった事実が判明し、内定取消を行うことが『社会通念上相当』と認められる場合だけに限られます。

よって、『内定』の場合、企業の恣意的な内定取消については、労働者からの損害賠償請求が認められますので、企業としては特に留意が必要です」

このように、企業の取り消しの場面においても、「内々定」と「内定」では差があるというわけだ。「内々定」の場合は、企業が取り消しても、原則として損害賠償請求が認められないということなので、学生の側も「内々定」をもらっただけは安心できないといえるだろう。しかし、取り消された学生にとっては死活問題なので、企業が恣意的な取り消しを安易に行わないことを期待したい。

(弁護士ドットコムニュース)

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