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「心の病」による労災請求最多「長時間労働に規制、労働時間のずさん記録に罰則を」
2016年07月10日 09時05分

厚生労働省が2015年度の「過労死等の労災補償状況」を公表した。過労などが原因で精神障害となり労災請求をした人が1515人で、過去最多を記録した。

報告書によると、2012年度の1257人から3年連続で増加しており、2015年度の1515人のうち、自殺による請求(未遂も含む)は199人を占めている。原因としては、「嫌がらせ」「上司とのトラブル」等の対人関係、「仕事量の変化」「1か月80時間以上の長時間労働」など、過酷な労働環境が原因となっているケースが多かった。

こうしたデータから見えてくる問題は何なのか。ブラック企業対策など、労働問題に取り組む嶋崎量弁護士に聞いた。

厚生労働省が2015年度の「過労死等の労災補償状況」を公表した。過労などが原因で精神障害となり労災請求をした人が1515人で、過去最多を記録した。

報告書によると、2012年度の1257人から3年連続で増加しており、2015年度の1515人のうち、自殺による請求(未遂も含む)は199人を占めている。原因としては、「嫌がらせ」「上司とのトラブル」等の対人関係、「仕事量の変化」「1か月80時間以上の長時間労働」など、過酷な労働環境が原因となっているケースが多かった。

こうしたデータから見えてくる問題は何なのか。ブラック企業対策など、労働問題に取り組む嶋崎量弁護士に聞いた。

●「心の病が原因」は、なぜ増えているのか?

最大の原因は、長時間労働です。年齢・性別・職種を問わず、日本の職場には長時間労働が蔓延しており、脳・心臓疾患、精神疾患を問わず、労災を生み出す最大の原因となっています。

長時間労働の是正が「命や健康の問題」である事は、様々な場面で指摘されるようになり、政府も改善の必要性は認識しています。ですが、実際に働く人の現場では、目に見える形では、長時間労働の是正が進んでいないというのが実感です。

また、長時間労働に加えて原因として指摘しなければならないのは、職場でのイジメです(パワ-ハラスメントなども含む)。職場において、使用者が労働者を退職に追い込むため、組織的に「追い出し部屋」などの悪質な手段で労働者の精神を追い込む行為も、平然とまかり通っています。

職場において、どのような形であっても、「個人の人格を踏みにじってはいけない」という、基本的な人権感覚が麻痺した、様々な嫌がらせが平然とまかり通っています。

●請求しても、実際に「労災」と認定してもらえるのは・・・

現状では、必ずしも労災と認定してもらえるのは容易ではありません。これは、行政レベルで労災認定を認める基準自体がとても厳しいというのが最大の問題です。

それに加えて、実務上苦労するのは、労災申請をしようとしても、実際に就労していた実態(特に労働時間)を証明するのが難しいという問題です。

たとえば、労働時間について、きちんとタイムカードなどで客観的な労働時間記録が正確に残されていれば良いのですが、必ずしもそのような模範的な職場ばかりではありません。

特に、労災が起きる職場では労働法規に対する意識が低い場合が多く、そもそも労働時間の記録をきちんと残していない場合や、労働時間の記録は残っているが、過少申告された記録が残っている場合(特に多いのは使用者の指示による場合)もあります。

こういったケースでは、後から労働時間を証明しようとしても、本当に大変ですし、これができず労災申請が認められなかったり、そもそも労災認定の可能性が低いため申請自体を断念するケースも多いのです。

●求められる対策は?

脳・心臓疾患に関する労災補償状況はここ5年間で横ばいの状態の高止まり傾向にあるといえます。一方で、今回問題になっている精神障害事案の労災申請件数は2015年度は過去最多を記録し、支給決定件数も、過去最多を記録した前年とほぼ同数です。

こういった状況から、現在も過労死・過労自死が全く減っておらず、状況は改善していないといえます。状況を打開するためには、実効性のある対策が求められます。

まずは、長時間労働是正のための法規制。たとえば、労働時間の量的上限規制、勤務間インターバルの規制導入は、極めて有効です。

また、そもそも労働時間記録さえなされていない職場では、長時間労働がある実態が可視化されません。現状は野放しになっているので、使用者に労働者の労働時間の記録を法的義務とし違反した場合の罰則を定めることも重要です。


そして、職場で過労死・過労自死などがあった場合、その事業所名を公表する手続きを設けるべきです。公表によるリスクも負わせることで、使用者に対して本気で長時間労働等による労災を防ぐ努力を引き出させることができます。これは費用もほとんどかからず、大変効果的でしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

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