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メーカー、マイナンバー情報入りPC「修理NG」…弁護士「過剰反応の必要ない」
2016年06月12日 09時54分

マイナンバー(個人番号)が記憶されたデータがあるパソコンは、修理を受け付けないーー。複数のPCメーカーが、こうした趣旨の文言をパソコンの修理規定に盛り込んでいることが話題になっている。

富士通は2016年1月から、マイナンバーを記録したパソコンは修理の対象外とする修理規定を設けている。富士通パーソナルコンピュータ修理規定の11条(2)には次のように定められている。

「(2)  対象機器の記憶装置(ハードディスク等)にマイナンバー(個人番号)が記憶されたデータがある場合には、修理をお受けできません。お客様は、修理をご依頼される前に、お客様の責任においてマイナンバー(個人番号)を消去していただくものとします。なお、修理および診断作業の過程で記憶装置(ハードディスク等)にマイナンバー(個人番号)が記憶されたデータが確認された場合には、修理を実施せずに、お預かりした対象機器をお客様に返却いたします」

こうした規定を定めているメーカーは他にもあり、「実質的にパソコンの修理が受けられない事態が起きるのでは」と不安の声も上がっている。パソコンメーカーがマイナンバー情報が記憶されたパソコンを預かって修理することは、法的にリスクがあることなのか。マイナンバー制度に詳しい水町雅子弁護士に聞いた。

マイナンバー(個人番号)が記憶されたデータがあるパソコンは、修理を受け付けないーー。複数のPCメーカーが、こうした趣旨の文言をパソコンの修理規定に盛り込んでいることが話題になっている。

富士通は2016年1月から、マイナンバーを記録したパソコンは修理の対象外とする修理規定を設けている。富士通パーソナルコンピュータ修理規定の11条(2)には次のように定められている。

「(2)  対象機器の記憶装置(ハードディスク等)にマイナンバー(個人番号)が記憶されたデータがある場合には、修理をお受けできません。お客様は、修理をご依頼される前に、お客様の責任においてマイナンバー(個人番号)を消去していただくものとします。なお、修理および診断作業の過程で記憶装置(ハードディスク等)にマイナンバー(個人番号)が記憶されたデータが確認された場合には、修理を実施せずに、お預かりした対象機器をお客様に返却いたします」

こうした規定を定めているメーカーは他にもあり、「実質的にパソコンの修理が受けられない事態が起きるのでは」と不安の声も上がっている。パソコンメーカーがマイナンバー情報が記憶されたパソコンを預かって修理することは、法的にリスクがあることなのか。マイナンバー制度に詳しい水町雅子弁護士に聞いた。

●罰則は強化されているが、悪質な行為を罰する趣旨

「『マイナンバー(個人番号利用事務等)の委託に当たると大変』『逮捕されるかも』と感じている方もいるかもしれませんが、それは誤解です。

たしかに、マイナンバー制度では罰則が強化されています。しかし、これは悪質な行為を罰するという趣旨のものです。

たとえば、これまでは個人データを大量に売却したり、悪意を持ってネット上にばらまいたとしても、既存の個人情報保護法で立件することが困難でした。そこで、マイナンバー法では罰則が強化されたのです。

しかし、一般人がやってしまいそうなことを罰則化するというのは、法制上困難です。マイナンバーにしろそれ以外にしろ、罰則というのは、『罰するに値する行為』を厳密に限定したうえで、対象にするものだからです。

そして、法律上特に何も書かれていない場合は、故意犯(わざとした行為)の処罰が原則です。うっかりやってしまった過失犯は、過失犯の規定が設けられていないかぎり、処罰されることは原則としてありません。そして、マイナンバー法には、過失犯処罰規定はありません。

したがって、マイナンバーをうっかり漏えいしてしまったとしても、必ず罰則が適用になるというわけではありません」

●「他の重要情報、プライバシー情報と同じように考えた方がよい」

マイナンバー情報を記憶されたパソコンをメーカーが預かって修理することは、法的に問題となるのだろうか。

「源泉徴収票作成等のためにはマイナンバーを使う必要があり、サーバやクラウド等ではなく、パソコン自体にマイナンバーを記録する場合も想定されます。

修理メーカーが、マイナンバーが記録されたパソコンを受け取ることは、マイナンバー法でも認められます。

ただし、修理メーカーは、修理以外の目的にマイナンバーを転用したり、適当な扱いでマイナンバーを外部に流したりといったことをしてはならないと、マイナンバー法で規制されています」

こうした規制があることをメーカー側が警戒しているのではないのか。

「マイナンバー以外の個人データや、企業情報と比較して考えてみるとわかりやすいかと思います。

パソコンには、マイナンバーのほかにも、従業員の給与額一覧、取引先ごとの割引率、個人的な日記、画像、ネット閲覧履歴、ダウンロード履歴、ネット検索履歴、ネット上の書き込み内容のメモ等、さまざまな重要情報やプライバシー情報が記録されている可能性があります。

修理メーカーが仮に、情報漏えいした場合の法的リスクは、マイナンバーも、個人データも、企業情報の場合もあまり変わりはありません。

マイナンバーと個人データの場合は、民事訴訟を提起されるリスクの他に、行政から勧告等を受ける可能性がありますが、企業情報を漏えいした場合の方が、民事訴訟の賠償額が高額になる可能性もあります。

マイナンバーは大事に取り扱わなければなりませんが、過剰に反応してしまうと、パソコンの修理ができず、使い捨てといった事態にもなりかねません。基本的には、他の重要情報やプライバシー情報と同じように考えた方がよいと思います」

水町弁護士はこのように述べていた。より詳しい内容は水町弁護士のブログに記載されている。

http://d.hatena.ne.jp/cyberlawissues/20160603/1464913703

(弁護士ドットコムニュース)

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