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高校3年生に届いた「自衛官募集」通知――自治体の「個人情報」提供は問題ないか?
2014年10月09日 11時54分

自衛官募集のダイレクトメール(DM)を発送するため、防衛省が「住民基本台帳」を閲覧・利用していたとして、物議をかもしている。

政府が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定した7月1日、全国の高校3年生の自宅に自衛官募集のDMが一斉に届いた。ツイッターには、高校3年生たちから「自衛隊から徴兵命令きたw」などといった書き込みとともに、募集通知の写真が数多く投稿された。中には、どうやって防衛省が「名簿」を手に入れたのか、いぶかしむ声があった。

10月6日付の東京新聞によると、防衛省は「住民基本台帳」を利用していたという。防衛省が、自衛官募集の条件に合う人の「名前・生年月日・性別・住所」を提供するよう全国の自治体に求め、全体の約71%にあたる1229市町村・特別区が、積極的に情報提供をしていた。中には「適齢期」にあたる人の名簿を、印刷して提供した自治体もあったようだ。防衛省から資料を入手した阿部知子衆議院議員への取材で、明らかになったという。

住民基本台帳が、今回のような形で利用されるのは、問題ないのだろうか。個人情報の問題にくわしい石井邦尚弁護士に聞いた。

自衛官募集のダイレクトメール(DM)を発送するため、防衛省が「住民基本台帳」を閲覧・利用していたとして、物議をかもしている。

政府が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定した7月1日、全国の高校3年生の自宅に自衛官募集のDMが一斉に届いた。ツイッターには、高校3年生たちから「自衛隊から徴兵命令きたw」などといった書き込みとともに、募集通知の写真が数多く投稿された。中には、どうやって防衛省が「名簿」を手に入れたのか、いぶかしむ声があった。

10月6日付の東京新聞によると、防衛省は「住民基本台帳」を利用していたという。防衛省が、自衛官募集の条件に合う人の「名前・生年月日・性別・住所」を提供するよう全国の自治体に求め、全体の約71%にあたる1229市町村・特別区が、積極的に情報提供をしていた。中には「適齢期」にあたる人の名簿を、印刷して提供した自治体もあったようだ。防衛省から資料を入手した阿部知子衆議院議員への取材で、明らかになったという。

住民基本台帳が、今回のような形で利用されるのは、問題ないのだろうか。個人情報の問題にくわしい石井邦尚弁護士に聞いた。

●自衛官募集のための閲覧は「認められる」

「住民基本台帳法では、国、地方公共団体の機関が、『法令で定める事務の遂行のために必要である場合』に、住民基本台帳を閲覧することを認めています(同法11条1項)

自衛隊法によると、自衛隊員の募集は自衛隊の地方協力本部の事務ですが、さらに都道府県知事および市町村長も、その『事務の一部を行う』とされています(同法29条、97条)。

したがって、自衛官の募集は(2)『法令で定める事務』にあたります。住民基本台帳法に基づいて、台帳の閲覧が認められるでしょう」

防衛省に対し、住民基本台帳の「写し」を提供していた自治体もあったようだが、それは「閲覧」とは違うのではないだろうか。

「自衛隊法施行令120条では、『防衛大臣は、自衛官または自衛官候補生の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事または市町村長に対し、必要な報告または資料の提出を求めることができる』とされています。この条文が、根拠法令になり得ると思います。

実は、住民基本台帳がどんな人に閲覧されたかは、公表されています。多くの自治体がウェブサイトで閲覧状況を公表しているため、私もいくつか確認してみました。すると、やはり自衛隊の地方協力本部が、さまざまな自治体で住民基本台帳を閲覧していることがわかりました」

●「それでよいか」は議論が必要

すると今回、防衛省が行っていたことは、どうやら「合法」と言えそうだ。

「もっとも、現行の法律上は合法であるとしても、それでよいかは議論すべきでしょう。

特に今回は高校3年生という未成年者の情報が利用されています。高校3年生の7月1日ということは、18歳未満も相当数含まれているはずです。

未成年者の情報を利用することについては、成人の場合よりも慎重な配慮が必要だと私は思います」

ひとくちに「募集のために利用」といっても、どのような使われ方がされるのかまでは不透明なところもある。利用の範囲や、利用後の情報の取り扱いなどについては、しっかりと検証する必要があるかもしれない。

「共通番号(マイナンバー)制度の導入にあたっても、個人情報保護の観点から懸念を示す声が根強くあります。

安易に『合法だから良い』という態度を、行政機関が取ってしまえば、共通番号(マイナンバー)の用途拡大や、行政機関がもつ個人情報の活用についての議論にも影響しかねないと思います」

このように、石井弁護士は警鐘を鳴らしていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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