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「発達障害を理由とした退職勧奨をうけた」女性保育士が保育園を提訴
2021年11月09日 10時14分

発達障害を理由に退職勧奨をうけ、仕事をやめたとして、40代の女性保育士が、運営元の一般社団法人(福岡市)と、その代表理事をつとめる園長に慰謝料など約250万円の損害賠償をもとめて、福岡地裁に提訴した(9月24日付)。

11月10日に第一回期日が予定されている。

女性は、子のために「完璧な」保育士をもとめる親の気持ちが理解できるとしながらも、「発達障害への差別・偏見を払拭したい」としている。

発達障害を理由に退職勧奨をうけ、仕事をやめたとして、40代の女性保育士が、運営元の一般社団法人(福岡市)と、その代表理事をつとめる園長に慰謝料など約250万円の損害賠償をもとめて、福岡地裁に提訴した(9月24日付)。

11月10日に第一回期日が予定されている。

女性は、子のために「完璧な」保育士をもとめる親の気持ちが理解できるとしながらも、「発達障害への差別・偏見を払拭したい」としている。

●女性は自閉症スペクトラム障害と学習障害と診断された

訴状や本人によれば、原告は2020年6月30日までの約2年間、福岡市内の小規模認可園に勤めていた。福岡市では小規模保育園A型とされる規模のものだ。

女性が発達障害(自閉症スペクトラム障害=ASD、学習障害=LD)と診断されたのは、2019年10月のこと。小学校低学年の子どもの受診をきっかけとして、自身の障害も判明した。

「私は小学1年から学習についていけなかったり、数字が頭に残らず、暗算が苦手だったりするので、仕事では計算機を使ったりするなどして対応してきました」(女性)

診断によって、自身の特性を理解してからは、さらに工夫することで、以前とくらべて生活や仕事に支障を感じなくなってきたことを実感したそうだ。

同年6月26日、自身が発達障害であり、服薬していることを園長の女性に初めて伝えたところ、「内緒にしていたことがルール違反」、「(仕事を続けるのは)危険だ」などと言われ、給与の下がる非常勤での働きかたをすすめられたという。

翌27日にも、園長と改めて話し合うなかで、退職をすすめられ、必要とされていないと感じたことから、一度は同月30日付けの退職に同意した。

しかし、少し落ち着きを取り戻すと、ミスをしていないのに辞めることや、発達障害を理由に退職勧奨されるのはおかしいと問い合わせたが、園長からは発達障害を理由として辞めるのではないと返答があったという。

女性はその後、精神的ショックで家から出られなくなり、7月30日にうつ病と診断された。

障害者雇用促進法は、障害者であることを理由に、事業主が労働者に差別的な取り扱いをすることを禁じている。障害者差別禁止指針では「退職勧奨」も差別的な取り扱いに該当する。

そこで、不当な退職勧奨によって精神的苦痛を受けたとして、慰謝料のほか、得られるはずだった夏季賞与を含めた賃金をもとめて提訴するに至った。

福岡地裁(グーグルストリートビュー) 福岡地裁(グーグルストリートビュー)

女性の代理人をつとめる西野裕貴弁護士は「女性が発達障害を打ち明けるまで、この保育園で仕事を続けることはできないと指摘されたことはありません。能力や努力への適切な評価をせずに、発達障害への偏ったイメージだけで退職勧奨がされるようなことがあってはなりません」と話す。

●「完璧な先生」に見てもらいたいという気持ちもわかるが、差別偏見を払拭したい

女性は、自身も子を持つ立場から、「みなさん、自分の子どものことになると、完璧な先生に見てもらいたいと思うはずです。その考えは理解できます」と話す。一方で、「私の子も発達障害の当事者です。いずれ、就職したときに、私のような思いをさせたくありません」とし、発達障害への差別や偏見を払拭したいと考えている。

弁護士ドットコムニュースは、園長に、発達障害を理由とした退職勧奨の事実の確認とともに、退職の経緯の説明を繰り返しもとめたが、コメントはなかった。

(2024年5月2日追記:原告側によれば、2023年3月29日に原告の請求を棄却する判決が言い渡され、そのまま確定した)

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