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歴代総理を「美少女」にしたゲーム「政剣マニフェスティア」 勝手にやっても大丈夫?
2016年02月09日 09時11分

総理となって、美少女化した「政霊」たちを操り、選挙で「政剣」を狙う「ヤトー」を倒す。こんなハチャメチャなエピソードのブラウザゲーム「政剣マニフェスティア」(http://www.dmm.com/netgame_s/seiken/)(DMM)がリリースされ、話題になっている。

ゲームの冒頭には「このゲームはフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。ホントに一切関係ありません。ただの美少女が戦うファンタジーです」と書かれているものの、「アリシア・ヤマータ」(山県有朋)や、「マーシャ・マツカタ」(松方正義)など、歴代総理の名前をもとにしたとみられる美少女キャラが「政霊」として多数登場する。

「実在の人物、団体とは関係ありません」としているものの、過去に実在した政治家の名前をもじった美少女キャラを登場させても問題ないのだろうか。松本常広弁護士に聞いた。

総理となって、美少女化した「政霊」たちを操り、選挙で「政剣」を狙う「ヤトー」を倒す。こんなハチャメチャなエピソードのブラウザゲーム「政剣マニフェスティア」(http://www.dmm.com/netgame_s/seiken/)(DMM)がリリースされ、話題になっている。

ゲームの冒頭には「このゲームはフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。ホントに一切関係ありません。ただの美少女が戦うファンタジーです」と書かれているものの、「アリシア・ヤマータ」(山県有朋)や、「マーシャ・マツカタ」(松方正義)など、歴代総理の名前をもとにしたとみられる美少女キャラが「政霊」として多数登場する。

「実在の人物、団体とは関係ありません」としているものの、過去に実在した政治家の名前をもじった美少女キャラを登場させても問題ないのだろうか。松本常広弁護士に聞いた。

●歴代総理の社会的評価は下がらない

「名誉毀損との関係では、過去の弁護士ドットコムニュースの記事【戦国BASARAで『千利休』が『二重人格の茶人サイキッカー』に 名誉毀損では?】(https://www.bengo4.com/c_1009/n_2613/)が参考になると思います。

今回のゲームも、キャラクターの名前や設定こそ歴代総理をイメージさせるものの、『美少女化』『政霊』という創作が施されていて、ストーリーが架空のものであることは明らかです。

各キャラクターの行動を実在の歴代総理がとった行動だと認識するプレイヤーはまずいないでしょう。そうすると歴代総理の社会的評価は下がらず、そもそも名誉毀損にはあたらないと考えられます」

しかし、先祖の名前を勝手に使われるのは、子孫からすれば不愉快ではないか。

「確かに、そのとおりでしょう。今回のゲームのキャラクターは大日本帝国時代の総理を中心にしているため見落としがちですが、ゲームに出てくるキャラクター『ニコラコポーロゥ・ヒガシクニ』の名前の由来になったとみられる東久邇宮稔彦王が逝去されたのは1990年(平成2年)。遺族からすれば、まだ『歴史上の人物』とはいえず、名前を使ってほしくないと考えるのも自然です。

もっとも、訴訟となると、法的構成を考える必要があります。そこで、もう少し具体的に考えてみましょう。

私法上、人格権という権利が認められています。これは個人の人格に不可欠な生命、身体、健康、精神等に関する利益の総体と考えられていて、名誉やプライバシーもこの中に含まれています。先祖の氏名を勝手に使わせたくないという利益をこの人格権として構成することは不可能ではないかもしれません。

実際、靖国神社に合祀された戦没者の遺族が、合祀は遺族の敬愛追慕の情を基軸とした人格権を侵害するとして、霊璽簿からの氏名抹消を求めた訴訟が提起されています。

また、人格権に含めるかどうかは学説上争いがあるものの、パブリシティ権というものがあります。これは、人の氏名や肖像に備わっている、商品の販売等を促進する顧客吸引力を排他的に利用する権利で、たとえばアイドルの名前が入ったお菓子を勝手に売った場合などに問題となります。

このパブリシティ権に基づいて、著名な詩人の遺族が、詩人の名前を付けた標識はパブリシティ権侵害だ、と使用の差止めを求めた訴訟もあります。

上記の訴訟はいずれも棄却されていて、今回のゲームについても遺族が氏名の使用禁止を求めることは難しいと考えられます。しかし、裁判でどのような権利が認められるかは時代に応じて変化します。死者の氏名に対する認識が変わっていけば、将来的には裁判官の考えも変わるかもしれません」

●存命の人物をモデルにする場合は注意が必要

今回のゲームでも強調されている「実在の人物、団体とは関係ありません」という記載は有効なのか。

「そこは注意が必要です。著名な判決は、たとえフィクション小説であっても『不特定多数の読者が小説中の登場人物とモデルとを同定することができ、小説中の登場人物についての記述において、モデルが現実に体験したのと同じ事実が摘示されており、かつ、読者にとって、右の記述が、モデルに関わる現実の事実であるか、作者が創作した虚構の事実であるかを截然と区別することができない場合』には、名誉毀損が認められうるとしています。

また、実在の政治家をモデルにしたアダルトDVDについて、創作であることは明らかなので名誉毀損には該当しないが、名誉『感情』は侵害するとして損害賠償を認めた裁判もあります。

モデル本人が亡くなっている今回のゲームでは問題にはなりにくいですが、存命中の実在の人物をモチーフにする際は注意が必要です。

ところで、昨今ゲームやアニメでよく行われている擬人化、女体化について、日本の恥だといった批判がなされることがあります。しかし、擬人化、女体化文化は今に始まったことではありません。

たとえば、『南総里見八犬伝』でお馴染みの滝沢馬琴が『水滸伝』の登場人物を女体化させ(正確には登場人物の性別を入れ替え)、その作品が好評を博したことは有名です。擬人化についてはアニミズムとの関係が指摘されるところですが、江戸時代に女体化がヒットした理由としては、江戸の高い男性比率が関係しているのではないかと私は考えています。つまり、女性との交流の機会が希薄な男性陣の抑圧されたリビ…」

松本弁護士はその後も小一時間語り続けた。

(弁護士ドットコムニュース)

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