8778.jpg
「いまの交通取締はちょっと・・・」国家公安委員長の「苦言」 弁護士はどう見る?
2013年06月20日 12時00分

「歩行者が出てくる危険もない直線道路で、制限速度の20キロ超過を取り締まるのは、ちょっとどうかと思う」。古屋圭司国家公安委員長が警察の交通取り締まりについて述べた発言が報道され、波紋を呼んでいる。

交通取り締まりについて、警察庁を管理する国家公安委員会の大臣が「取り締まりのための取り締まりになっている傾向がある」と発言した重みは大きい。古屋大臣の発言に対し、ネットでは「良く言ってくれた」という共感の声も多く見られる。「不公平だ」と感じている人が、それだけ多くいるということかもしれない。

事故を減らすという目的からすれば、取り締まりは不可欠のはずだが、多くの人がその正当性を疑うような現状は大問題だろう。「ドライバーが納得できる取り締まりが必要だ」とする古屋大臣発言をどう捉えればいいのか。「歩行者不在」の直線道路が比較的多い北海道で開業する足立敬太弁護士に聞いた。

●大臣発言には「うなずける」点がある

「『取り締まりのための取り締まり』という発言で、古屋大臣が念頭に置いているのは、『交通違反が特に危険な』場所よりも、『警察が検挙しやすい』場所で、優先的に取り締まりが行われているように見える点を指しているのだと思います。

覆面パトカー・ねずみ取り・オービスなどの取り締まりが、物陰に隠れやすく運転者に見つかりにくい場所や、どちらかというと危険性が低く、運転者がスピードを出しがちな場所でばかり行われているとすれば、検挙された人はどう感じるでしょう」

納得はできない。

「そうですね。自らの違反を反省するどころか、『だまし討ちにあった気分だ』『他の運転者もやっているのになぜ自分だけ?』という反感や不公平感を抱くようになります。

つまり運転する人の意識が『今後違反をしないようにしよう』ではなく、『今後違反は見つからないようにやろう』になってしまい、取り締まりの目的からすれば逆効果です。そういう意味で古屋大臣発言にはうなずける点があります」

ただ、そうはいっても、そもそも交通違反をすれば事故を起こす確率は高まる。その点にまで、反論がある人は少ないだろう。

「そうですね。特に速度超過は、運転ミスを誘う・重大な結果を招くなど危険な側面があります。

たとえば北海道では、凍結した雪道を走行する冬季の事故死者数よりも、走りやすい夏季の事故死者数のほうが多いという統計があります。これは速度超過が一因と言われています」

なるほど、一見、より安全に思えても、「実は危険」というケースもあるということだ。そうであれば、警察はきちんとしたデータを公表して、なぜその時、その場所で取り締まりが行われたのかをきちんと示すことで、運転者に不公平感を抱かせないよう配慮をしていく必要があるのではないか。

足立弁護士も「道路交通の安全確保という趣旨に立ち返り、取り締まりのあり方を見直す時期に来ていると思います」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

「歩行者が出てくる危険もない直線道路で、制限速度の20キロ超過を取り締まるのは、ちょっとどうかと思う」。古屋圭司国家公安委員長が警察の交通取り締まりについて述べた発言が報道され、波紋を呼んでいる。

交通取り締まりについて、警察庁を管理する国家公安委員会の大臣が「取り締まりのための取り締まりになっている傾向がある」と発言した重みは大きい。古屋大臣の発言に対し、ネットでは「良く言ってくれた」という共感の声も多く見られる。「不公平だ」と感じている人が、それだけ多くいるということかもしれない。

事故を減らすという目的からすれば、取り締まりは不可欠のはずだが、多くの人がその正当性を疑うような現状は大問題だろう。「ドライバーが納得できる取り締まりが必要だ」とする古屋大臣発言をどう捉えればいいのか。「歩行者不在」の直線道路が比較的多い北海道で開業する足立敬太弁護士に聞いた。

●大臣発言には「うなずける」点がある

「『取り締まりのための取り締まり』という発言で、古屋大臣が念頭に置いているのは、『交通違反が特に危険な』場所よりも、『警察が検挙しやすい』場所で、優先的に取り締まりが行われているように見える点を指しているのだと思います。

覆面パトカー・ねずみ取り・オービスなどの取り締まりが、物陰に隠れやすく運転者に見つかりにくい場所や、どちらかというと危険性が低く、運転者がスピードを出しがちな場所でばかり行われているとすれば、検挙された人はどう感じるでしょう」

納得はできない。

「そうですね。自らの違反を反省するどころか、『だまし討ちにあった気分だ』『他の運転者もやっているのになぜ自分だけ?』という反感や不公平感を抱くようになります。

つまり運転する人の意識が『今後違反をしないようにしよう』ではなく、『今後違反は見つからないようにやろう』になってしまい、取り締まりの目的からすれば逆効果です。そういう意味で古屋大臣発言にはうなずける点があります」

ただ、そうはいっても、そもそも交通違反をすれば事故を起こす確率は高まる。その点にまで、反論がある人は少ないだろう。

「そうですね。特に速度超過は、運転ミスを誘う・重大な結果を招くなど危険な側面があります。

たとえば北海道では、凍結した雪道を走行する冬季の事故死者数よりも、走りやすい夏季の事故死者数のほうが多いという統計があります。これは速度超過が一因と言われています」

なるほど、一見、より安全に思えても、「実は危険」というケースもあるということだ。そうであれば、警察はきちんとしたデータを公表して、なぜその時、その場所で取り締まりが行われたのかをきちんと示すことで、運転者に不公平感を抱かせないよう配慮をしていく必要があるのではないか。

足立弁護士も「道路交通の安全確保という趣旨に立ち返り、取り締まりのあり方を見直す時期に来ていると思います」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る