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ヤフー「新卒一括採用」廃止…「企業の考え方の多様化、学生にとってはチャンス」
2016年10月24日 10時07分

IT大手のヤフーが10月3日、新卒の一括採用を廃止し、通年で経歴にかかわらず採用する「ポテンシャル採用」をはじめることを発表した。

新卒・既卒、第二新卒などの経歴にかかわらず、30歳以下であれば応募できる。制度を始めた狙いについて、リリースでは次のように説明している。

「これまでの『新卒採用』と就業経験を重視する『中途採用』では、第二新卒や既卒などの方に対して平等な採用選考機会を提供できないことに加え、昨今、海外留学生や博士号取得者など就職活動の時期が多様化し、従来よりも柔軟な採用の枠組みが必要となってきました」

「先進的な取り組み」「日本型雇用を破壊する」などさまざまな声があがっているが、ヤフーの取り組みを人事の問題に精通した弁護士はどうみているのか。神内伸浩弁護士に聞いた。

IT大手のヤフーが10月3日、新卒の一括採用を廃止し、通年で経歴にかかわらず採用する「ポテンシャル採用」をはじめることを発表した。

新卒・既卒、第二新卒などの経歴にかかわらず、30歳以下であれば応募できる。制度を始めた狙いについて、リリースでは次のように説明している。

「これまでの『新卒採用』と就業経験を重視する『中途採用』では、第二新卒や既卒などの方に対して平等な採用選考機会を提供できないことに加え、昨今、海外留学生や博士号取得者など就職活動の時期が多様化し、従来よりも柔軟な採用の枠組みが必要となってきました」

「先進的な取り組み」「日本型雇用を破壊する」などさまざまな声があがっているが、ヤフーの取り組みを人事の問題に精通した弁護士はどうみているのか。神内伸浩弁護士に聞いた。

●一括採用のメリット「組織の老化防止」、「横のつながり確保」

そもそも「新卒一括採用」という採用形式は、企業側にとってどのようなメリットがあるのか。神内弁護士は4つの点を指摘する。

「新卒一括採用を行う企業側のメリットは、いわゆる終身雇用制を前提とした場合、(1)定期的な若年層の補充、(2)採用事務の効率化、(3)『同期入社』という横のつながりの確保、(4)幹部候補の発掘・育成、といったことが挙げられます。順に見ていきましょう。

まず、どんな人も必ず毎年1歳ずつ年をとりますので、人の入れ替えがなければいずれ組織は高齢化してしまいます。そこで定年制を設けるとともに新卒一括採用を行うことで、半ば強制的に人を入れ替え、組織の老化を防止することができます。

次に、採用を定期に一括で行うことで、会社説明会や面接、筆記試験等の実施を効率化することができ、入社後の教育や研修についても開催時期や内容等を定型化できるというメリットもあります。

さらに、社内の人間関係においても『同期入社』という横のつながりができることで醸成される一体感や、各年代による企業文化の継承といった効果が期待できます。さらには、そのような小集団の中からその年毎に幹部候補を発掘し、育成していくということも企業にとっては重要な要素となります」

●「最初の就職活動に失敗してもやり直しが可能になった」

現代においても、こうしたメリットはあてはまるのか。

「このような新卒一括採用は、学生側からしてみれば、やり直しのきかない『一発勝負』であるとも言えます。

しかし、終身雇用制への期待も薄らぎ、大学卒業者のおよそ3人に1人が大学卒業後3年以内に離職しているという昨今の現状に鑑みれば、企業側も必ずしも新卒にこだわる必要はないのかもしれません」

今回のヤフーの取り組みはどう評価できるのか。

「新卒一括採用を廃止し、通年採用とすれば、これまで受験資格のなかった第二新卒にも枠が広がり、優秀でやる気のある人材をより広く募ることが可能となります。

さきほど述べた(1)~(4)のメリットは失われることとなりますが、これらに重きを置かない企業であれば、門戸を広くすることで、これまで得られなかった人材を得られる可能性は高まると言えるでしょう。

学生の中には、『新卒』ブランドの価値がなくなると危惧する声もあるようですが、新卒一括採用には上記のメリットがありますので、すべての企業が新卒一括採用を廃止するということにはならないでしょう。

企業側の考え方が多様化してきたことは、学生側にとってもむしろチャンスではないかと思います。その分、自分に合った企業を探す機会が増えた、たとえ最初の就職に失敗してもやり直しが可能になった、とポジティブに考えることができたら良いですね」

(弁護士ドットコムニュース)

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