「キッチンカーで唐揚げを買ったら生だった」。こんな投稿がXで話題です。投稿に添えられた写真には、しっかりと火が通っていないためか、内側が赤い唐揚げが映っています。
投稿者によると、お子さんが唐揚げを食べていたそうです。念のため病院に連れていったところ、医者に「お腹がごろごろなっているので近々下痢するかも」と言われたといいます。
唐揚げを販売したキッチンカーの法的責任はどうなるのでしょうか。大橋賢也弁護士に聞きました。
●被害者は損害賠償請求が可能
——医者に「近々下痢をするかも」と言われたそうですが、キッチンカー側に治療費や慰謝料などを請求することは可能でしょうか。
キッチンカーで販売されている唐揚げを食べたことが原因でお腹を壊した場合、損害賠償を請求することができます。
ただし、不法行為に基づいて損害賠償を請求する場合は、請求者側が、製造業者の「故意」または「過失」を立証しなければなりません。
このような立証責任の負担を軽くし、被害者救済を図った法律として「製造物責任法」があります。
製造物責任法は、製造物の欠陥により人の生命、身体または財産に損害を生じさせた場合の製造業者の損害賠償責任を認めた法律です。
この法律に基づいて損害賠償を請求する場合、被害者は、製造物に「欠陥」があることを立証すれば足ります(製造者の「過失」を立証する必要がありません)。
投稿された写真を見てみると、明らかに生と思われる部分が残っているように見えます。つまり、キッチンカーで製造された唐揚げが、通常有すべき安全性を欠いているといえ、「欠陥」が認められると思います。
そして、そのような唐揚げを食べたことで下痢などの体調不良になったのであれば、「欠陥」と「損害」との間の因果関係も認められると考えて良いでしょう。
したがって、製造業者が免責事由(製造物責任法4条)を証明しない限り、その責任が認められることになります。
●キッチンカーの設置を許可した側に責任は問えるか?
——キッチンカー側の責任はどのように問われるのでしょうか。
まず、民事上の責任ですが、被害者は製造業者に対して、実際に負担した治療費、慰謝料などを請求することができます。
次に、食品衛生法6条4号は「不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがある」食品等の販売等を禁止しています。また、6条の規定に違反した者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処する旨の罰則規定も設けられています(食品衛生法81条1項1号)。
——どこにあったキッチンカーかは明記されていませんが、たとえば、オフィスビルやイベント会場などに設置されたキッチンカーであった場合、それを許可した管理者側の責任はどのように問われるのでしょうか。
オフィスビルやイベント主催者側は、場所を提供しているだけであり、その事実上の指揮監督の下、キッチンカーを仕事に従事させているわけではないので、民法の使用者責任(民法715条)を問うことはできないでしょう。キッチンカーの設置を許可した側の責任を問うことは難しいと考えます。